「しりとり」

生徒会波乱物語:生徒会の5人
(「トンネル」の続き)




西へ向かう俺達。だが、高速道路で渋滞に巻き込まれ、紅葉が何かしようと喚き出した。
そこで、しりとりをする事に。

「ではまず、『しりとり』からで」
「『りんご』!」
「『ごま』?」
「『マジカル頭○パワー』。うわ懐かしっ」
「いつの番組だよ……ええと、この場合は?」
「『わ』で」
「じゃ『ワニ』」

紅葉がやたらと懐かしい単語を口にしたが、そこまではまあ許容範囲だった。
そして、最初に言った神里さんへと番は戻る。
ゆっくりとアクセルを踏みながら、彼女は笑って言った。

「『にんじ』……『んを食べないと大きくなれないよ♪』」
「待てそこっ! 今『にんじん』って言いかけただろ!」
「えっと、『ヨードチンキ』!」
「続いてる!? しかも変な言葉!?」
「え? 普通だよ?」

にっこり笑って消毒液の名前を口にするのって普通なのだろうか。
まあいい。俺はほえ〜っとしている桜に、続きを促した。

「『きつつき』」
「じゃ、自然の『木』」
「それはありなのか?」
「いいじゃん」
「マジか。えー、『君が代』」
「また渋いですね」

だって最初に思いついたのそれだったから。
そして3週目へ。神里さんが悪戯っぽく笑い、また爆弾を投下した。

「『夜這い』」
「なんでまともな女子高生が最初にそんな事言うんですか!?」
「有希ちゃん、『い』ですよ」

叫ぶ俺を無視して、さっさと先へと進められる。なんか頭痛い。もしかして、この人に回る度、俺はツッコミを入れなければならないのか?

ふと、後ろから服の袖をつままれた。
振り向くと、桜が首を傾けている。

「和樹さん。……夜這いって、なに?」
「それを俺に説明させるなよ……」

……。

「『椅子』っ!」
「『すいか』?」
「『カマドウマ』」
「お前変な単語好きだよな……えー、『マリモ』」
「『桃太郎』」
「『ウミガメ』っ!」
「……『めまい』?」
「『意味不明』」
「お前がな。『意識』」

一部アレだが、しばらくはまともに続いた。
だが、世の中そんなに平和じゃない。また、神里さんがやってくれた。

「『キスしましょう』」
「!?」

その言葉に、一同が動揺した。

「そ……それはなんですか、しりとりとしての言葉ですか?」
「あら、他の意味を想像したんですか?」
「してないっす! な、なぁ?」

慌てているのを悟られないように、俺は後部座席の3人へ同意を求める。が、

「奈々さん……やっぱり、だいたん」
「あ、あはは、えっと……あはは……」
「あたしの目の前でやったら、この車ごと破壊するわよ……」

誰も助けにならなかった。あと紅葉、それやったら俺まで死ぬんだが。

「ほら、次は有希ちゃんですよ」
「……『海』」
「あ、あぅ、『耳』……」

変な空気の中、しりとりは進み。そして、今度は紅葉がやってくれた。

「『みんな殺す』」
「怖いなお前!?」
「まずは神里さんから殺す」
「やめれ! って神里さんも相手して放電しないでください! 車が壊れますから!」
「ふふふ……黙って殺される私ではありませんよ……」
「ああもう! 『水中』! ほら次神里さん!」

険悪になっていくムードを止めるため、俺は強引にしりとりを進行させた。
仕方ないですね、と神里さんは肩を竦め、電気をひっこめる。
まだ怖い笑みを浮かべている紅葉は、後できつく叱っておこう。

俺が短気娘への折檻方法を考えていると、ふと神里さんが、前を見て言った。

「動きましたよ、車」
「……それってしりとりの言葉ですか?」
「違いますよ。前です」
「おっ、渋滞が終わったんだ」

紅葉が嬉しそうに笑う。確かに前では、車の数がだいぶ減っていた。
アクセルへの力を強めながら、神里さんが笑う。

「ね、和樹君。私達がみんないれば、退屈なんてありえないんですよ」
「……ははっ。確かに。紅葉も、これで満足か?」
「へえ、これで満足じゃないって言ったら?」
「折檻は倍だ」

けど、それを考える必要はなかった。紅葉の綺麗な笑みは、何も言わなくても意志を伝えてくれる。
両脇の有希や桜も、楽しかった、という顔をしていた。

さて、車も進みだしたし、この辺で景気づけでもしとくか!

「じゃ、あと少しっ、頑張って行くぞ!」
『おーっ!!』



執筆年月:2010/04/29

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