「パソコン」

死神姫:鋭利快翔・木野稜子・速閃竜牙の話




ヘヴンスカイにパソコンが必要になった、というのは竜牙の弁。
喫茶店の経営や、<魔狩人>としてのデータ整理に、手作業はいい加減キツイとの事。
これを聞いた快翔は、じゃあ買いに行きましょう、と提案した。
予算を用意していた竜牙は賛成し、かくしてヘヴンスカイにパソコンを取り入れる事が決定した。

ところが、いざ買い物に行こうとしていた休日、竜牙に急用ができてしまった。
しかも間の悪い事に、電気屋の安売りは今日まで。来週に回すと、予算を考え直す必要が生まれる。
かといって、快翔一人に買い物を任せる訳にはいかない。いくらしっかりしているとはいえ、彼はまだ中学生なのだ。
大金が関わる買い物は、荷が重い。

そこで竜牙は、スマイルハットの稜子にヘルプを求めた。

そんな訳で、午後の電気屋に、二人は訪れている。

「喫茶店や〈<魔狩人>のデータを整理するために使うんですよね」
「うん。僕にはよく分からないけど・・・・・・竜牙さんは、ワードやエクセルの本を読んでるみたいだった」
「では、基本的なソフトは一通り必要ですね」

実の所、ヘヴンスカイでは何のパソコンを買うかは決めていなかった。
よって、そこから決める必要がある。

「インターネットは繋げるんですか?」
「えーっと・・・・・・そうそう、葵ちゃんがすごくやりたがってたから、やるんじゃないかな」
「パソコンを置く場所とか決めてます?」
「裏に置くみたい。コンセントはあるって言ってたけど」
「だったら・・・・・・無線LANカードは不要ですね」

見ていたパソコンから離れつつ、稜子が次の展示品へと近づく。
その途中、彼女はふと振り返った。

「そういえば、葵ちゃんがやりたいって言ってるんですよね」
「うん。それがどうかしたの?」
「いえ・・・・・・インターネットというのは、割と危険が多いですから、大丈夫かなと思っただけです」

その辺は、知識のない快翔も気にはなっていた。だが、

「まあ、気をつければ大丈夫でしょう」

と稜子が言うので、じゃあいいか、と安直に結論を出す。

「でも、誰かが正しい使い方を教えないといけないですね、快翔さん」
「・・・・・・え? 僕?」
「ちゃんと教えてあげてくださいね♪」
「待ってよ。僕もパソコンは全然駄目で―――」
「大丈夫ですよ」

何が大丈夫なんだ、と恨みがましい視線を向ける。
稜子は一つ笑い、次のパソコンへと視線を向けた。

それからいくつか話をしつつ、やがて買うパソコンが決定する。
ここまで電車を使って来た二人は、持ち帰りではなく配達を指定した。
どうやら、明日には届くらしい。

「明日は日曜日ですね。私も手伝いましょう」
「いいの?」
「どうせ暇ですから」

手続きを済ませた二人は、帰路につく。その途中。

「そういえば快翔さん。私、スマイルハットで使う関係上、パソコンの解説書を持ってるんです。割と初心者向けの」
「・・・・・・うん、それで?」

非常に嫌な予感がしたが、快翔は続きを促した。

「頑張って、勉強しましょうね」
「・・・・・・あの、だからなんで僕なの?」
「好きだから」
「!?」

ぽーんと放たれた言葉にー快翔の息が詰まる。
そんな様子にクスクスと笑いながら、稜子は続けた。

「そんな困った顔をさせるのが好きだからです」
「な、なんだ、そういう事・・・・・・って、なんでそうなるの!? 止めてよ!」
「さて、帰りましょうか」
「ちょっ、待って!」

かくして、稜子にあれこれ振り回されながら、快翔はかなり疲れるのだった。



執筆年月:2010/04/29

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