「トンネル」 生徒会波乱物語:生徒会の5人 (「サービスエリア」の続き) 言葉通り、とでも言うべきか。 サービスエリアを出た10分後、車は渋滞に遭遇した。 「・・・・・・参りましたね」 「予測通り、と言ったところですね。・・・・・・ぜんっぜん、嬉しくないっすけど」 げんなりとする俺達。 しかも間の悪い事に、ちょうどトンネルが連続するところでの渋滞だ。 窓を開けて気分転換、という訳にもいかない。 「あーもうイライラするっ! 和樹、なんとかしなさいよ!」 「できるか馬鹿!」 そして当たり前の如く、後部座席の紅葉か、車が止まって数分もしないうちに騒ぎだした。 「ったく。だいたい、何でこんなに渋滞とかしてるのよ。今日って平日でしょ?」 「ゴールデンウイークの初日だから、しかたない・・・・・・だから紅葉、落ち着いて」 「相変わらず桜は大人しいな。本当に姉妹かたまに分からなくなるくらいだ」 「んなっ・・・・・・殴っていい!?」 「わっ、暴れないで〜」 桜と紅葉の間に挟まれ、喧嘩のとばっちりを受けた有希が悲鳴をあげる。 それと同時、車が大きく揺れた。 「いいから落ち着け馬鹿」 「あんたが興奮させてるんでしょうが!」 「事実を言って何が悪い」 「本気で殴るよ!?」 「いいから落ち着いてください、2人共」 ・・・・・・だが、こうして暴れていても、神里さんがそう言った途端にピタリと大人しくなるのだから、人間って不思議だ。 「っと、少しずつ動いているみたいですね。もう少しでトンネルを抜けそうです」 「助かった・・・・・・さっきから暑くて仕方なかったんですよ。神里さん、トンネル抜けたら窓を開けていいっすか?」 「ゆっくり動いている間ならいいですよ」 あくまで前を向いたまま、神里さんはふふっと笑う。それだけで、なんか空気が和らいだ。 「はぁ・・・・・・あたしも疲れたよ」 「私も。もう疲れちゃった」 「私なんて何もしてないけど、すっごく疲れちゃった感じだよ」 「あーごめんごめん有希。苦情は和樹に言っといて」 「何で俺!?」 「もう、だめだよ和樹。紅葉を怒らせちゃ」 「俺が一方的に悪いのか!?」 やがて車は、のろのろと進み、トンネルを抜けた。直後、前と後ろで、窓が開く音が重なる。 俺と紅葉が、同じタイミングでボタンを押したのだ。 「は〜、涼し〜」 「なんか気分が楽になったな」 しかし渋滞が終わった訳じゃない。しかも前を見れば、またすぐ近くにトンネルがある。 「・・・・・・はぁ。さすがにトンネル続きの渋滞となると鬱になりますね」 「んじゃ何か楽しい話でもしようよ。有希、なんかない?」 「うーん、しりとりでもしてみる? 気分を変えるにはピッタリだよ」 「お、たまにはいいね! じゃああたしからで―――」 かくして騒がしい車は、のろのろと、しかしトンネルを1つ1つ越えていく。 |
執筆年月:2010/04/09
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