「間食」

生徒会争乱物語:柏崎澪音・××希・桜坂桃子




柏崎澪音は生徒会室にて、市販のクッキーを口にし、噛みながら茶入れへと手を伸ばした。
緑茶のほろ苦さが、クッキーのほのかな甘味と混じり、口の中にすっきりとしたおいしさが広がる。

「食事には行儀がよいのですね」

生徒会長席に座る××希が、顔も上げずに皮肉めいた言葉を投げかけた。
資料をめくる手も止めない。

(俺を見てねえのになんで分かるのやら……)

「まーな、親がうるさかったし」
「一人称をどうにかしろとは注意されなかったのですか?」
「それは親も諦めてた」

一瞬だけジト目が向けられる。もう1枚、クッキーを口にしながら、ソファに座る体勢を変える。
足を組みながら、緩く息を吐いた。

「会議まであと何分よ」
「10分ほどですね」
「ふーん。会長さんも休めば? さっきから資料いじってばっかじゃん」
「大丈夫です」

顔色一つ変えない希に、そっかいと澪音は心配を放棄した。
簡易冷蔵庫より缶の炭酸飲料を取り出し、一気飲み。音が立たないようにゴミ箱へといれた。

「飲食しすぎると眠くなりますよ」

とんとん、と紙の束を整える希。

「いーよ別に」
「寝ていたら桃子に起こさせますので」
「やめれ、アレにやらせると殺される」
「ひどいことを言うですね、先輩」
「そしてオメーはいつ来たんだ」

いつの間にか部屋の入口に桜坂桃子がいた。なにやら怒っているらしい桃子は、ずんずんと歩きながら鞄を投げ置く。

「師匠の前で居眠りとか、ふざけているのも程があるです」
「そういうオメーは会長さんに挨拶もナシに愚痴だらだらだけどな」
「はっ!」

睡眠開始十分後に叩き起されたかのように驚いた桃子は、ばっと希の方を振り向いた。

「すみません師匠、こんにちわです!」
「ええ……」

頭の痛みを抑えるように、額に手を当てる希。
疲れた目で澪音を一瞥し、パソコンの電源を入れた。

「始めましょうか。澪音、死なないように努力してくださいね」
「死因・間食かよ!」
「むしろ餓死しやがれです」
「黙れそこの師匠コン、テメーが骨になってろ」



執筆年月:2011/06/24

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