「リズミカル」

死神姫:鋭利快翔・刈麻葵





「たんたんたんたん、たらららたらたんっ♪」
「葵ちゃん?」
「たんたん・・・・・・あ、はいです」

快翔と葵、二人だけのヘヴンスカイ。
空は珍しく姿さえ見せず、竜牙もどこかに出掛けている。
いつもいない男は今日もいない。
そして店内には客もいない。そういう時間帯なのだ。

「何かありますか?」
「あ、ううん・・・・・・すごく楽しそうだから、何かあったのかな、って」
「特には何もないのです」

そして葵は、鼻歌と共にテーブル拭きを再開する。
一応ウェイターとして佇んでいるが、やることのない快翔。
暇で仕方ないので、愉快な少女の後姿を観察してみる。

「た〜ら〜ら〜、ら〜、た〜らららら〜、たらら〜らららららら、ら〜ら〜ら〜」

葵の口ずさむ曲調が変わった。
今までのような弾むものではなく、どことなくのんびりとした物に。
リズムだけを捉えれば神秘的とも思えるが、声を出しているのが少女特有の高い声なので、やっぱり愉快に聞こえる。
なんだか勿体ないな、とさえ快翔は思った。

そして葵は何かの曲(快翔は聞いていても分からなかった)を口ずさみ終える。
それと同時に彼女はふきんを奥へと持っていく。
そのかわりに今度はモップを持ってきた。

「たらたんっ、たんったんっ、たんったんっ、たんったんっ」

また違う曲だ。やはり快翔は聞いた事がない。
さらに見続けていると、しまいにはお尻をふりふりやりはじめた。いい具合にノリノリである。

快翔は苦笑いしながらも、たまには自分もノリノリで過ごしてみようかな、などと思っていた。





結果。

「たらららたんっ、たらら―――」
「うるさい」
「・・・・・・ごめん」



執筆年月:2010/04/22

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