「欠伸」

生徒会波乱物語:神野和樹・西山桜・西山紅葉





「ふわぁ・・・・・・」

晩飯後、食器を全部放り込んで一段落した頃、紅葉がおおあくびした。
それにつられてか、近くにちょこんと座り、ぼけーっとテレビを見ていた桜も、小さな欠伸をする。

俺と目が合うなり、照れ臭そうな笑みを向ける。

「・・・・・・うつっちゃった」
「ありゃ、ごめん姉。にしても・・・・・・ふわぁ、ねむ」

再びおおあくびする紅葉。
そしてまたつられる桜。
なんか面白い。

「眠いなら寝ろ」
「いやいや、夜はこれから・・・・・・けどねむ。今日は早くねよっかな。姉はどする?」
「私は・・・・・・大丈夫」
「ちぇー、1人で寝るくらいなら我慢してやる」
「お前は子供かよ」

まるで親がいないと眠れない子供だな、こいつは。

「いや寝れるには寝れるけどさ」
「じゃ1人で寝ればいいだろ」
「姉はほら、抱き心地がすんごくいいのよ。柔らかいからかな」

思わず桜を見た。
顔を赤くしながら、彼女はちょこんと頷く。

「だからあれよ、抱き枕代わりになるってわけ」
「へー。そんなものなのか」
「あんたも試してみる?」
「いや結構」

さっきよりも真っ赤になって首をぶんぶん振る桜を見ると、はいやりたいですとは言えない。

「やってみればいいのに。ホントに気持ちいいよ? ・・・・・・ふわぁ、ねむ」
「抱き枕云々以前に、お前はもう寝ろ。こっちにまであくびがうつりそうだ」
「冷たいなあ。姉、今日は早く寝ない?」
「あ、私は・・・・・・課題があるから」
「そっか。・・・・・・課題に負けるあたしって一体」

なんか紅葉が真剣に悩みだす。桜が困った顔を向けて来たが、俺は何のリアクションも返さなかった。

代わりに、小さくあくびを1つ。

・・・・・・あー、俺にまでうつってるし、あくび・・・・・・



執筆年月:2010/03/25

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