「手袋」

生徒会波乱物語:神野和樹と西山紅葉



「なあ紅葉」
「んー?」
「ふと思ったんだけどさ、お前って手袋とかしないのか?」

ある冬の日。特階生の仕事で外に出ていた俺達は、昼には少し遅い時間に、ファミレスに来ていた。
その時にメニューをつかむ紅葉の手がとても冷たそうだったので、俺は聞いてみた。
紅葉は手をぶらぶらさせながら、あー、と小さく納得したような声をあげて、その手を俺に出した。

「・・・・・・?」
「触ってみる? これでもそんなに冷たくないものよ」
試しに握ってみた。普通に冷たかった。

「・・・・・・冷たいけど?」
「ありゃ。あたしは平気なんだけどね」
「ふうん・・・・・・」

苦笑いで紅葉が言う。
そして、自分の事は分からないものねー、とどこか楽しそうに言う。

「いや、寒いとか暑いとかは分かるだろ」
「そんくらいは」
「じゃあさ、寒いって思わねえの? その手」
「思わない」
まるで質問を予測したかのような即答だった。
紅葉は炎だから、寒暖に強いのかもな、とちらりと思った。

「そんな訳で、あたしは手袋はいいわよ」
「そっか」
「ちなみにマフラーもいらない。だってあれ邪魔じゃん」
「それはなんとなく分かるな」
「身軽でいたいしね」

確かにそりゃお前らしいな、と俺は笑った。
もう少し会話を続けようと思ったけど、そこで紅葉が頼んだカレーうどんが来たので、そこで俺は口を閉じて、自分のメニューを待つ事にした。



執筆年月:2010/02/06

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