「参考にならなかった」






――車内――
安部菜々「いやあ、すっごいLIVEでした! おふたりともお疲れ様ですよ!」
北条加蓮「藍子と2人は久しぶりだったけど、すごく楽しかったよ。ありがとね、藍子」
高森藍子「私の方こそ、ありがとうございます。……あの、私、お邪魔になっていませんでしたか……?」
加蓮「これがそんなことを考えている顔に見える?」
藍子「…………あはっ♪」
菜々「ナナも見てて飛び込みたくなりましたよ」
加蓮「菜々さんはちらちら見えたけど、すごくうずうずしてるみたいだった。ふふっ、いつ乱入するかなって身構えてたんだよ」
藍子「そ、そんなことされちゃったら、私、菜々さんには勝てませんっ」
菜々「いやいや、さすがにそこまでは」
加蓮「ウサミン星人なんだからアリでしょ」
菜々「それウサミン星人と関係あります!?」
加蓮「地球乗っとり計画を開始したウサミン星。地球側につこうとする菜々さんだけど母星から洗脳されてしまい――みたいなストーリーとか、どう?」
菜々「どう? じゃありませんよ! ウサミン星はそんなことしませんから!」
藍子「…………(ブルブル)」
菜々「ほらぁ! 藍子ちゃんが青い顔してナナから遠ざかってるじゃないですか!」
加蓮「藍子。冗談だよ、冗談。ほら、菜々さんがそんなことする訳ないじゃん」
藍子「で、ですよね……ほっ」
菜々「加蓮ちゃんは1週間に1度くらい、冗談を言わない日とか決めた方がよさそうですね……」
加蓮「それは菜々さんが自爆したらお尻を叩かれるくらいに無理な話だよ」
菜々「どこの大晦日の番組ですかね!?」
加蓮「藍子は…………ダメだ、思いつかない」
菜々「じゃあ、叩く側でいいんじゃないですか? 藍子ちゃんなら手加減してくれそうですし」
加蓮「藍子のパッションをナメちゃダメだよ。本気になった時には……」
菜々「ほ、本気になった時には?」
加蓮「ゆるふわタイムが発動する」
菜々「な、なんだってー!」
藍子「発動しませんっ。……たぶん」
菜々「って、ゆるふわタイムって何ですか? 例の時間の経過が早くなるっていう?」
加蓮「そこにいる人がみんな幸せになる魔法」
菜々「いいことじゃないですか」
加蓮「そのうち争う気持ちがなくなってしまって、あれ、私たち何やってるんだろうと正気に帰る」
藍子「そんなすごいことはできませんけど、できたら素敵ですね……♪」
加蓮「そして菜々さんは自分の存在が分からなくなってしまってウサミン星へ――」
菜々「根性で地球に戻ってきてアイドルやってみせますからね。ええ絶対に」
加蓮「菜々さんって記憶をなくしてもアイドルやっていそうだよね」
藍子「いつの間にか、忘れちゃったことも思い出していそうです」
菜々「いやはや、アイドルにかける情熱で負けるつもりはありませんからね!」
加蓮「む。それは聞き捨てならないなぁ」
菜々「キャハッ☆ やっぱり加蓮ちゃんはナナのライバルですね!」
藍子「私は、おふたりについていくだけで精一杯です……」
菜々「そういえば加蓮ちゃん。トークタイムの間にPさんから聞いたんですけど」
加蓮「ほお。私と藍子のトークをほっぽり投げて? ほー」
菜々「なんで微妙に悪意ある言い方するんですかねぇ……。ええと、加蓮ちゃん、プロデューサーをやるんですか?」
加蓮「まだ正確な企画じゃないんだけどね。そういうのも面白いかもって提案してみたら、Pさん乗り気でね」
藍子「菜々さんが言っていた、私たちが姉妹みたいだって言葉がヒントになったんです」
菜々「いつの間にそんな話に」
加蓮「ほら、家族の面倒を見るのとアイドルの面倒を見るのって似てるじゃん」
菜々「確かに、加蓮ちゃんは藍子ちゃんのプロデューサーとか似合いそうだなと思ったことはありますね」
藍子「……でも加蓮ちゃん、私じゃなくて別の人のプロデュースをしたいそうです」
加蓮「こらこら、しょんぼりして言わないっ。もう藍子のプロデュースはしてるようなものだからって昨日も言ったでしょ?」
菜々「加蓮ちゃんは空気を読まないだけじゃなくてデリカシーもありませんでしたかー」
加蓮「私は女の子なんだけど?」
藍子「加蓮ちゃんのうわきものー」
加蓮「誰が!?」
藍子「そんな加蓮ちゃんなんて大っ嫌いです」
菜々「あーあ。しょげてますよ、藍子ちゃん」
加蓮「ぐぬぬ……もう、ほら、また明日、新しい振付とか教えてあげるから。ね?」
藍子「ぶー」
菜々「拗ねた妹のご機嫌を取るお姉さんですね! で、誰のプロデュースをしたいって言っちゃったんですか?」
加蓮「うん、それはね――」

加蓮「……ってことで、私にできるか分かんないけど、最初に思いついたのはそこだったかな」
菜々「なるほど。加蓮ちゃんならきっとできますよ!」
加蓮「ありがと。でもさー……リアル企画になるにしても気持ちだけで終わるにしても、私、あの子のことよく分かってないんだよね」
藍子「そういえばちょっと前にも悩んでいましたよね、加蓮ちゃん」
加蓮「んー……」
藍子「でも加蓮ちゃん、あの子と仲が良いんですよね。大丈夫だと思いますよ」
菜々「ほら、藍子ちゃんも賛成していますよ! ……でも言葉に棘を感じられるのはナナだけなんでしょうか?」
加蓮「安心して菜々さん。私も今、ん? ってなった」
藍子「え? 私、何かおかしなこと言いましたか……?」
加蓮「そういえば私、菜々さんのことどうやって知ったんだっけ」
菜々「どうとは?」
藍子「あ、あれ? 加蓮ちゃん? 菜々さん? 私、何を言ったんですか!?」
加蓮「ん? 私が大っ嫌いだって話」
藍子「それはもう終わったことです!」
加蓮「まーまー」
菜々「どうやって知ったって、それは自分に聞いた方が早くありませんか?」
加蓮「だよねー。そもそも私、菜々さんが17歳じゃないってこと、いつ知ったんだっけ」
菜々「あーっ、またそういうことを! ナナは17歳です!」
加蓮「あーはいはい」
藍子「私に教えてくれたのは、加蓮ちゃんでしたよ」
加蓮「うん、それはよく覚えてるんだけど……気付いたら知ってたってイメージなんだよね。でも2X歳だってこととか、どこで分かったんだろ……」
菜々「さらっとその数字を出すなー!!」
加蓮「確か、免許証を見たんだっけ……」
藍子「あ、それ、私だと思います」
加蓮「藍子?」
藍子「確か、夕美さんが免許証を見つけていたんです。すごく困った顔というか、たくさんはてなマークをつけたような顔をしていたから、よく覚えていますっ」
加蓮「夕美……って、パッショングループの花の人だっけ」
藍子「そうですよ。たまに、フラワーアレジメントをしてもらったり、髪飾りを分けてもらってますっ」
加蓮「ふうん……で、その人が見つけた菜々さんの免許証を、」
菜々「そろそろこの話やめませんかねぇ!? あれ以来、免許証を持ち歩けなくなったんですよナナは!」
加蓮「むしろ17歳を名乗るなら免許証を堂々と持ち歩かないでよ」
藍子「あはは……菜々さんも、気をつけてくださいね?」
菜々「はい……」メソメソ
加蓮「……ダメだ。菜々さんの例は特殊すぎて参考にならない」
菜々「なら話題を出す必要ありませんでしたよねぇ!」
加蓮「ごめんってば。結局、私の方から突っ込んでいくしかないのかな……」
藍子「加蓮ちゃんなら大丈夫ですよ。難しいなら、私もお手伝いしますから」
加蓮「ありがとね。もうちょっとだけ考えてみる。突っ込んでみるにしても、どうしたらいいか分からないし」
菜々「ナナも協力しますからね! ……あっ、車が事務所についたみたいです」
加蓮「だね。じゃ、帰って反省会やろっか、藍子」
藍子「はい。甘いものを用意して、ゆっくりやりましょう♪」



掲載日:2015年6月16日

 

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