「3人と1人」
――事務所の休憩室―― 北条加蓮「マズッ!」 喜多見柚「えっ、えっ。か、加蓮サンには合わなかったかな、ええと」 加蓮「マズいッていうより甘い。ゲロ甘だこれ。私ムリだ本気でムリ」 柚「しまった、加蓮サンは辛党だったっけ! えっと、ゴメンネ?」 加蓮「藍子、これ飲んでみる?」 高森藍子「あ、はいっ。……わぁ、甘くておいしい♪」 柚「うゅー……」 加蓮「ふふっ。加蓮ちゃんは事務所随一の辛党だからね、ちゃーんと覚えておくように」 柚「はーい」 藍子「随一なんですか?」 加蓮「……そこに突っ込んでくるか」 柚「はいはいっ! 実は忍チャンも辛いのすっごい得意なんだ!」 加蓮「勝負しろと」 柚「我慢強さはどっちが強いか、むむ、この柚の目を持ってしても見抜けませんなぁ」 藍子「加蓮ちゃんは、我慢強いっていうより我慢しちゃうタイプですから」 加蓮「じゃあ勝負の時は藍子がドクターストップ係で」 藍子「でも加蓮ちゃん、私が言ってもストップしませんよねどうせ」 加蓮「うん」 藍子「じゃあなんで私を指名するんですか……」 安部菜々「うっさみーん♪ みなさん、なんのお話してますかっ?」 藍子「うっさみーん♪ 加蓮ちゃんが今度、勝負するらしいです」スクッ 菜々「勝負ですか。ならナナは加蓮ちゃんを応援しますよ!」スタッ 加蓮「もし菜々さんとの勝負だったらどうするのさ」 菜々「加蓮ちゃんを応援した上で頑張ります」 藍子「わ、かっこいい……」 菜々「加蓮ちゃんで勝負って言ったらやっぱりLIVEとかでしょうか」 加蓮「私、そこまでアイドルバカに見える?」 藍子「はい」 菜々「はい」 加蓮「よし、ちょっとまとめて表に出ようか?」 藍子「きゃー♪」 柚「あ、あのー……アタシ、もしかしてオジャマ?」 加蓮「ん?」 藍子「もう、また加蓮ちゃんが余計なことを言ったんですか」 加蓮「すぐに私のせいにするのやめない?」 菜々「むしろ邪魔なのはナナの方では」 柚「や、や、なんだかほら、ユニット3人にジャマしちゃってるかなー、なんて」 加蓮「んー……柚はさ、例えば、私が忍や穂乃香ちゃんの代わりに混ざってたとして、邪魔だから出て行け、なんて言う?」 柚「い、言うワケないよっ! 柚そんな悪い子じゃないよっ!」 加蓮「じゃあ私が言う訳もないじゃん」 柚「うゅー……」 菜々「陰湿な加蓮ちゃんは想像できないですねぇ」 藍子「加蓮ちゃん、すごくいい子だから」 加蓮「……柚が余計なこと言うから2人が余計なこと言い出したんだけど?」 柚「わー、ごめんなさいっ。でも加蓮サン顔が赤い!」 加蓮「うっさい」 柚「褒められ慣れてないよね、加蓮サンって」 藍子「素直にありがとうって言えばいいのに……」 加蓮「余計なお世話だっ。藍子だって、私がからかう度に変な反応する癖に!」 藍子「そ、それは加蓮ちゃんの言い方が悪いんですっ」 菜々「その点、ナナは問題ないですねぇ」ドヤァ 加蓮「は?」 藍子「え?」 柚「……?」 菜々「なんですかそのマジな反応は!」 柚「ねーねー。ところで藍子サン、なんで立ちっぱなしなの?」 藍子「えっ?」 菜々「それはナナも気になってましたねぇ。ナナが来た時に自然に立つから、あれって思いましたけど」 加蓮「席は空いてるのにね。どしたの?」 藍子「あはは……こうしていると、メイドさんみたいになれるかなぁって」 菜々「ナナへのアイデンティティ侵食作戦がまだ続いていた!?」 藍子「あっ、忘れちゃってました。菜々さん、お飲み物を持ってきますねっ。何がいいですか?」 菜々「え、あ、じゃあオレンジジュースで」 藍子「はいっ。お茶菓子も持ってきちゃいますね♪」タッタッタ 柚「……ほえー。ホントにメイドさんみたいだっ」 加蓮「前は私専用のメイドとか言ってた癖に」 菜々「いやそれよりも、今まさにナナの立場が危ういワケですが!」 柚「菜々サンはメイドさん……なの?」 菜々「ええそうですよ、ウサミン星のメイドさんこと、ナナで〜す♪」 加蓮「メイド喫茶に……ごめんなんでもない」 柚「はいはい! アタシもメイドさんやったことある!」 菜々「イタリアンクッキングの時でしたっけ。あの伝説の」 柚「そーそー! ……イタリアン、いちご……うっ、頭が」 藍子「お待たせしましたっ。はい、菜々さん、オレンジジュースです」 菜々「サンキューですよ藍子ちゃん」 藍子「それからこれ、Pさんからカステラをいただきましたっ。ちょうどお菓子メーカーから、試供品をいっぱい頂いたそうですよ」 柚「おいしそー!」 藍子「加蓮ちゃんには、はいこれ。ハッカ飴です♪」 加蓮「あ、うん、ありがと。……いや逆に気を遣われるとなんとも言いづらいね」 菜々「加蓮ちゃんはどうしてほしいんですか……」 加蓮「それを言わないで。私にも分かってないから」 柚「カステラうまー!」 藍子「はいっ、とっても美味しいです♪」 加蓮「じゃあ一口だけ……あれ、あんまり甘くなくて美味しいね、これ」 菜々「ホントですねぇ。ビターな味が大人のウサミンにピッタリですよ!」 加蓮「大人」 柚「おとな?」 菜々「おおっと、大人"になりたい"ウサミンでしたっ」 加蓮「藍子ってさ、例のいちごパスタ食べたことある?」 藍子「い、いちごぱすた……?」 加蓮「ないか。柚、今度さ、作ってきてもらってよ」 柚「やだ! そしたら柚も食べさせられる!」 加蓮「大丈夫、その時は私も付き合うから」 柚「そういう問題じゃないよー!」 菜々「そこまで言われると逆に興味があるんですが、どんな味なんですかね?」 柚「すごいよ! もうホントにすごいんだよ! こう、口の中で、モワ〜って! 異世界が広がるんだよ!」 菜々「は、はあ」 加蓮「……食べてみれば分かるよ。言ってること間違えてないから」 菜々「うわぁ」 藍子「あっ」 加蓮「どしたの?」 藍子「あ、いえ、ごめんなさい。トレーナーさんから通知が来てて」 菜々「今日ってレッスンの予定とかありましたっけ?」 藍子「ええと……いえ、ポジティブパッションの方で、合同レッスンの予定だって」 加蓮「今日?」 藍子「いえ、明後日のことみたいです。あ、続きがある……見学希望者がいるようなら連れて来い?」 加蓮「見学者……って、レッスンの? なんで」 柚「あ、柚それ知ってる! ユニットのレッスンを見せることですごいことになるって言ってた!」 加蓮「分からん」 菜々「まあニュアンスは伝わりましたね。いつかナナ達のレッスンにも見学者がついたりするんでしょうか」 柚「そしたらアタシ見に行く!」 加蓮「じゃあ私は柚のレッスンを見に行くよ」 柚「ぎゃー、やめてー! 加蓮サンがいたら緊張で踊れなくなっちゃうっ」 藍子「じゃあ、私ならいいですか?」 柚「う、ぅうー……藍子サンなら大丈夫、カモ」 加蓮「……………………」 菜々「そんな顔でこっち見られても」 藍子「ま、まあまあ。加蓮ちゃんはまた今度に、ね?」 柚「ぅー」 加蓮「……まあ、じゃあ、私が見ても緊張しないように頑張るって目標にしたら?」 柚「そ、それならいいカモ」 菜々「頑張ってくださいね、柚ちゃん!」 柚「……うん」 藍子「カステラ、ごちそうさまでした。私、片づけてきますねっ」タッタッタ 加蓮「お願いねー」 菜々「じゃ、ナナもこれで。今日は久々にアニメを見に帰りますっ」 加蓮「ん、お疲れ。……柚は……って、まだ縮こまってるよこの子」 柚「ゅ? わ、わっ、加蓮サン、あんまりじっと見ないで、恥ずかしいっ」 加蓮「はいはい。テキトーに雑誌でも買いに行こっかな。柚は? 一緒に来る?」 柚「ご、ごめんね、アタシこの後ちょっと用事がっ」 加蓮「残念。じゃあまたね、柚」 柚「いえっさー!」 加蓮「なにそれ、へんなの。ふふっ」 |
掲載日:2015年6月17日