「パサパサする」
北条加蓮「へー、これが藍子の作ってきたクッキーかぁ」 安部菜々「藍子ちゃんにそんな特技があったとは! ウサミン星でもお嫁さんにしたいアイドルとして人気がうなぎのぼりですよ!」 高森藍子「そ、そんなに言われると照れちゃうので……あの、お口に合うか分からないけど、どうぞっ」 加蓮「うん、いただきます」 菜々「あむっ」 加蓮「……」 菜々「…………」 藍子「あの、どうですか? 正直にお願いします。正直に」 加蓮「……んー」 菜々「……えー」 加蓮「意外と美味しいじゃん」菜々「ナナ的にはちょっと合わないかも……」 加蓮・菜々『あれ?』 藍子「へ?」 加蓮「……え、普通に美味しいけど?」 菜々「あ、あれ?」 加蓮「あ、分かった。若い子向けの味なんだ」 菜々「ちょおっとちょおっとナナも若い子ですよ? 17歳ですよ? 17歳」 藍子「そういうつもりは……あむっ」 加蓮「どう?」 藍子「……パサパサしてて味が薄くて、確かに、あんまり美味しくないかも……」 菜々「ま、まあまあ、そんなに落ち込んじゃ駄目ですよ。最初からうまくいくものでもないでしょうし」 藍子「加蓮ちゃん」 加蓮「私がこういうので嘘つかないって藍子も知ってるでしょ」 藍子「……そうだよね。どういうことでしょう」 加蓮「私の舌の方がおかしいのかな……あむっ。うん、やっぱりおいしい」 菜々「むむむ、どういうことですかね?」 藍子「たまたま加蓮ちゃんのお口に合ったのでしょうか」 加蓮「考えにくいね。私、薄い味の好きじゃないし」 菜々「そういえばそうですねえ。ココ◯チ7辛とかナナには未知の領域ですよ」 藍子「私なんて食べる前から無理でした……」 加蓮「次は8辛に挑戦だね」 加蓮「……それにしても、なんだろうね、これ」 菜々「今日の不思議ですね!」 加蓮「そういう5分番組とかありそう。こう、教育番組的な?」 藍子「あっ、それ加蓮ちゃんに似合いそうです!」 菜々「スーツ姿とか制服姿とか何でも似合いそうですよねえ。あとメガネとか」 加蓮「妖怪まぁまぁメガネどうぞが来るからストップ」 菜々「おおっとナナ失言」 藍子「加蓮ちゃんが先生だったら、学校ももっと面白くなりそうですねっ」 加蓮「えー、私は藍子とクラスメイトの方がいいなぁ」 藍子「あはっ」 菜々「ナナは? ナナはどこですか?」 加蓮「んー……用務員のおばちゃん」 菜々「こらーっ! お、おば、おばち……なんて禁句ですよ禁句! 法律違反です! ウサミン星の警察が押しよせてきますよ!」 藍子「ウサミン星にも警察ってあるんだ……」 加蓮「あは、ごめんごめん。菜々さんが同級生かー」 菜々「放課後にカラオケとか行ってみたりして」 加蓮「延々メルヘンデビュー聞かされるのはちょっとヤダな」 菜々「そ、そこまでじゃありません。加蓮ちゃんの歌だって歌っちゃいますよ!」 加蓮「それはそれで笑いそうだからやめて」 菜々「理不尽ですねぇ!」 藍子「カラオケ、最近あまり行ってませんね」 加蓮「レッスンで忙しいからねー。夏のLIVEに備えなきゃ」 藍子「夏は暑いから、加蓮ちゃん、気をつけてくださいね」 加蓮「はいはい。菜々さんは根性論で頑張れそうだよね」 菜々「そうですねー、昔は運動部のみなさんが水も飲まずに走ってて熱中症……って、て、テレビでね?」 藍子「駄目ですよ……菜々さんも、気をつけてくださいっ」 菜々「がってんしょうち!」 加蓮「で、これさ……」 藍子「あっ、忘れてました」 菜々「クッキーですねえ。では加蓮先生! ご見解をどうぞ!」 加蓮「え、なにそれ」 藍子「わくわく」 加蓮「……まあ真面目な話をすると、『藍子が作ってきた』っていうのが刷り込みになってるのかな」 藍子「刷り込み、ですか?」 加蓮「菜々さんってキュート所属じゃん。キュートの子らってよくお菓子とか作ってきてるよね」 菜々「あー、そうですね。主にかな子ちゃんが」 加蓮「私はそういうのないからさ。人がお菓子を作ってきた、っていうのがないんだ」 菜々「ほうほう」 加蓮「だから、藍子がお菓子を作ってきたってことが珍しかったのかな、って思う。……ちょっと恥ずかしいよ、自分のことを自分で解説するって」 菜々「いえいえ、さすが加蓮ちゃんですね!」 藍子「本当に授業を聞いている気分でした……♪」 加蓮「やめてってー」 藍子「私、また作って持ってきていいですか?」 加蓮「ふふっ。楽しみに待ってるよ」 菜々「次はナナも手伝いますよ!」 藍子「ありがとう、菜々さん。菜々さんのお口にも合うように頑張りますねっ」 加蓮「がんばれー。あむあむ」 菜々「じゃあナナはお先に失礼しますねっ!」 藍子「また明日ですっ」 加蓮「体を痛めたりしないようにね」 菜々「へっちゃらです、ナナは17歳なので!」 (タッタッタ) 藍子「(ふりふり)」 加蓮「さて、私も帰らなきゃ」 藍子「晩ご飯、どこか食べに行きますか?」 加蓮「いや、なんか今日はお母さんが作りたいのあるって言ってたし。そうだ、藍子も来る?」 藍子「いいんですか?」 加蓮「悪いと思ったら誘わない」 藍子「あはっ。じゃあ、おじゃましちゃいますね」 加蓮「うんうん。ちょっと待ってね、連絡するから……、……」 藍子「……加蓮ちゃん?」 加蓮「ん……いや、ちょっとね」 藍子「変なメールが来ていたとか……?」 加蓮「違う違う。もう、藍子は心配性だね」 藍子「加蓮ちゃんを見ていたら、誰だってそうなりますっ」 加蓮「メールも通知も来てないよ。ちょっと思い出したことがあっただけ」 藍子「思い出したことですか?」 加蓮「ちょっとね。……藍子ってさ、私のこと嫌い?」 藍子「……? はい、ちゃんと嫌いのままでいますよ」 加蓮「藍子は嘘をつかないタイプだもんね」 藍子「加蓮ちゃんこそ、私のこと嫌いですか?」 加蓮「うん。嫌い」 藍子「加蓮ちゃんが無理しているかどうか、私には分かりませんけど……」 加蓮「そう? そんなにややこしくやってるつもりはないな」 藍子「加蓮ちゃんの基準はおかしいんですよー。味覚もそうですっ」 加蓮「そっかぁ」 藍子「でも、今の加蓮ちゃんが何かに悩んでいるのは、私にも分かります」 加蓮「藍子に隠してもしょうがないもんね」 藍子「もう。私、Pさんとか、加蓮ちゃんが悩んでいる相手に言っちゃいますよ? 加蓮ちゃんが悩んでいるってこと」 加蓮「そーいうところが嫌いなんだけどなー」 藍子「私は1人で悩んじゃう加蓮ちゃんが嫌いです」 加蓮「いらないのにお節介を焼いて私のことどうこうしようとする藍子が嫌い」 藍子「加蓮ちゃんのことを好きな人がいるってこと、分かってない加蓮ちゃんが嫌いです」 加蓮「……」 藍子「……」 加蓮「ふふっ」 藍子「あはっ」 加蓮「敵わないね、藍子には」 藍子「前に菜々さんが言っていたんです。私と加蓮ちゃんが、姉妹みたいだって」 加蓮「家族かー……」 藍子「はいっ」 加蓮「私が北条加蓮じゃなくて高森加蓮だったら、私は藍子の背中を押し続けていたのかな」 藍子「私が高森藍子じゃなくて北条藍子だったら、私はずっと加蓮ちゃんのことを見ていたと思います」 加蓮「……見ていた、か」 藍子「私でよければ、いつまでも見ててあげますから」 加蓮「見てくれる人がいるから、私はここまで来れたんだろうね」 藍子「そうかもしれないですね」 加蓮「……今度は私の番、なんて」 藍子「手伝えることがあったら何でも言ってくださいね」 加蓮「……。藍子の癖に生意気。やっぱ嫌い」 藍子「えー」 |
掲載日:2015年6月3日
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