「で、どこで見たんだろ?」






――事務所の談話室――
北条加蓮「……」ポチポチ
喜多見柚「やほーっ。あっ、加蓮サンだー!」ニパニパ
加蓮「柚。おつかれ、レッスン?」
柚「やーもうヘトヘトだよー。聞いて聞いて、ぐるぐる〜って回ってたら忍チャンとぶつかってサ、おでこがイタイタで」
加蓮「へー」スマホシマイ
柚「忍チャン石頭なんだよ! ひどいっ、柚のおデコにキズがっ」
加蓮「……ここから見ても綺麗な肌色しか見えないけど?」
柚「や、綺麗なんてっ照れるよっ、あ、あんまりじいっと見ないで〜」
加蓮「フリルドでライブあるの?」
柚「うんうん。前みたいなんじゃないけどね。ちっこいの」
加蓮「ふうん」
柚「じゃなくて、ちっこくなくて。ちゅうぐらい?」
加蓮「じゃあ、たまには足を運んでじいーっくりと見てみよっかな」
柚「わわっ、加蓮サンがイジワル言ってる! やめてー、そうしたら柚ぜったいミスっちゃう」
加蓮「ふふっ。私は逆に、そういうの燃えるんだけどね」
柚「加蓮サンはチャレンジャーだ。あっ、アタシ喉乾いたからちょっとジュース探してくるっ」
加蓮「あー、いいよ、私が取って来るから柚は座ってて。ほらここ」
柚「わやっ。いいの?」
加蓮「たまにはね。炭酸でいい?」
柚「あいあいさー!」
加蓮「なにそれ……あはは、変なの」

加蓮「はい、メロンソーダ」
柚「ありがとー! ぷしゅっ。ごくごく……うまー!」
加蓮「ごくごく……ぷはっ」
柚「加蓮サンは今日レッスンないの? 柚、久々に見てみたいなー」
加蓮「……? 久々も何も、柚って私のレッスンとか見てたことあったっけ?」
柚「えっ」
加蓮「えっ」
柚「……あー、あっ、そっかっ、そうだっ、加蓮サンは、えと、今日は元気?」
加蓮「柚ってさ」
柚「はいっ」
加蓮「嘘がつけないタイプって、よく言われるでしょ」
柚「……穂乃香チャンににらめっこで勝ったことありません」
加蓮「だよね」
柚「加蓮サン、ううん、加蓮先生! なにとぞこの柚ににらめっこの必勝法をっ」
加蓮「まずは心を無にします」
柚「むり!」
加蓮「諦めろ」
柚「せっしょうな!」
加蓮「まあ、レッスンなんて見られて困るもんじゃないからいいよ。……いややっぱりなし。ちょっと恥ずかしいし」
柚「加蓮サンはお手本になるべきだと柚は思うなっ」
加蓮「お手本?」
柚「みんなのお手本! そしたらみんなももっと頑張ると思うんだ」
加蓮「……そんなものかな」
柚「みんなすごいから、きっと加蓮サンに……しょく、しょく、しょっぱつ? されるよ、きっと」
加蓮「触発? 私にはよく分からないなぁ……」
柚「加蓮サンは恥ずかしがり屋サンでしたかっ」
加蓮「そうじゃないけど……なんか、努力を見せるのってかっこ悪いなって。ううん、あくまで私がだよ」
柚「そっかー。柚は大好きだよ! みんなで頑張るの!」
加蓮「いや、人をぼっち扱いしないでくれる?」
柚「えっ」
加蓮「え?」
柚「……か、加蓮サンには柚がいるよ! 癒やされたい系のゆずゆずがいるよ!」
加蓮「癒し系じゃないんだ」
柚「柚は甘やかされたい系!」
加蓮「じゃあ私とは合わないかな」
柚「なんですとっ」
加蓮「甘いお菓子は苦手だから」
柚「むー、ピョッキーおいしいのに。はっ、加蓮サンはオトナだからおやついらないんだ。じゃあ加蓮サンのおやつは柚のもの……!」
加蓮「違う違う」
柚「とわっ!」
加蓮「あ、ちょ、飛びついで来るなっ」
柚「へっへっへー。さてさて、どこに隠してますカナー?」
加蓮「隠、して、ないっ!」ドーン
柚「ぎゃふんっ!」
加蓮「はー……なんでこう私の周りにはいきなり飛びかかってくるのばっかりなのやら」
柚「む? 柚のあいでんてぃてぃーがピンチの予感っ」
加蓮「飛びついてくるのがアイデンティティなんだ……」
柚「違うよー。アタシは愛され系!」
加蓮「好かれるの好きだね」
柚「えっへへー。加蓮サンも好きでいてくれるカナ……あ、ややっ、今のナシ、ナシ!」
加蓮「……ほぉー。そうだねー」
柚「目がイジワルモードだー! だからじっくり見ないでってばっ、柚、真っ赤になっちゃうからっ」アセアセ
加蓮「あははっ。柚のことは嫌いにはなれないかな」
柚「やたっ」
加蓮「……嫌いには、なれないね」
柚「??」
加蓮「なんでもなーい」

柚「むむ。加蓮サンはミステリアスですなぁ」
加蓮「お、そう? 実は狙ってるんだよね、ミステリアス」
柚「ミステリアスガール!」
加蓮「ふふっ。私の心は誰にも見抜けない、あなたの想いは私の掌の上よ! ……って、何やらせるのよ」グリグリ
柚「ぎゃー。加蓮サンが勝手にやったのにー」
加蓮「これじゃ藍子のこと笑えないなぁ」
柚「藍子サン?」
加蓮「悪戯すると面白いくらいに反応してくれるよ」
柚「そうなんだっ!」
加蓮「……?」
柚「?」
加蓮「ううん、なんでも。柚ってレッスン帰りだよね」
柚「そだよっ。へへっ、柚の話、聞きたい? 聞きたい?」
加蓮「あーはいはい聞きたい聞きたい」
柚「今日はダンスレッスンだったっ」
加蓮「忍と正面衝突したんでしょ?」
柚「あれは痛かったなー。目の前に星がね、こう、ばちばちっ、ばちばちって。あっ、でも柚のひいひいひいひいばあちゃんには会えなかった!」
加蓮「柚」
柚「何カナっ」
加蓮「臨死体験――死にかけた日の夜は気をつけなよ。連れて行かれるから」
柚「……つ、つれていかれる? あ、あは、何に?」
加蓮「そりゃあ……ねえ?」
柚「わーっ、だめ、だめ、アタシそっちの話ホントにだめーっ!」
加蓮「病院ってね、けっこう"本物"がいるんだよね……?」
柚「やーめーてー!」
加蓮「……ふふっ」
柚「も、もうっ、もうっ! アタシをからかってもなーんにもでないよっ。柚なんにも出せないよっ」
加蓮「いいリアクションが出てくる」
柚「ぶすーっ」
加蓮「あはは、ごめんってば」
柚「むーっ」
加蓮「ねえ柚」
柚「む」
加蓮「……いや、なんでもない」
柚「なんでもない?」
加蓮「私はミステリアスアイドルだからね。本音は隠さなきゃ」
柚「むむ。気になりますなぁ」
加蓮「気にさせるからミステリアスだよ」
柚「加蓮サンは陰口とか言いそうにないから安心だっ」
加蓮「そんなことする暇があったら正面から殴りに行くかな、私は」
柚「すごく男っぽい!」
加蓮「このナイスバディを捕まえて男っぽいとは言ってくれるねー」グニグニ
柚「ひゃい、いひゃいいひゃい、かれんひゃん、やめへー」
加蓮「ぐにっと。ところで柚さ、レッスン帰りなんだよね。Pさんに報告はした?」
柚「……あーっ! Pサンに叱られるぅ! ゴメンね加蓮サンまたねっ、あっ、ありがとね!」
加蓮「行ってらっしゃい」

加蓮「…………あ、LINEのID聞き忘れた……」
安部菜々「ただいうっさみーん♪ あれ、加蓮ちゃんだけですか」
加蓮「おかえり。私だけじゃ嫌?」
菜々「いえいえ滅相もない。何してたんですか?」
加蓮「さっきまで柚がいたからちょっと喋ってた」
菜々「柚ちゃんですか。あの勢いはナナも見習いたいですね、若者のエネルギー恐るべしっ」
加蓮「…………」
菜々「……まあナナも17歳ですけど」
加蓮「よろしい」
菜々「ぐぬぬ」
加蓮「……菜々さんさ、私が今、表情を作ってるってこと知ってる?」
菜々「ええ、知ってますよ。それがどうかしたんですか?」
加蓮「いや、なんでも」
菜々「??」
加蓮「確認しただけ」
菜々「ナナにはよく分かりませんけど、若い内は悩むのが仕事ですよ! ナナでよければいつでも相談に」
加蓮「若い内」
菜々「おおっとナナも17歳ですけど」
加蓮「……」
菜々「……?」
加蓮「……晩ご飯、一緒に行かない?」
菜々「いいですねぇ。お伴します!」


掲載日:2015年6月2日

 

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