「1等賞の旗を4人で取る為のユニット」





――レッスンスタジオ――
<ガチャ

北条加蓮「やっぱりここにいた」
工藤忍「……? あ、加蓮! もしかしてここ使う?」
加蓮「んーん。忍を探してた」
忍「え……アタシを?」
加蓮「LIVEの後だから自主レッスンしてるだろうなーって思ったら予想通り。ふふっ、そろそろ忍の行動パターンが読めてきたかも♪」
加蓮「ね、少しだけ混ざってもいい?」
忍「それは大歓迎だけど……加蓮、風邪はもう治ったの?」
加蓮「見ての通りだよ。今日だってCM撮影やってきたばっかりだし」
忍「そうなんだ……。今はダンスレッスンやってるとこ。昨日の振り付けの確認をね」
加蓮「そっか。相変わらず忍はなんていうか……優等生タイプ? って感じだよね。いっつも反省会ばっかりしてて疲れない?」
忍「疲れるけど、それくらいやるのがちょうどいいって思って。フリルドスクエアのみんなにも頑張ってついていかなきゃね」
加蓮「ふーん。LIVEのことは柚から聞いたよ。ごめんね見に行けなくて。MCパートが大変なことになったんだって?」
忍「そうそう。穂乃香ちゃんがあの緑色のブサイクの話に夢中になりすぎて……。ファンのみんなも笑ってくれたけどさ」
加蓮「ふふっ」
忍「止めなきゃいけないのに、穂乃香ちゃんの楽しそうな顔を見てたら何も言えなくなっちゃった」
加蓮「忍は甘いなー。私だったら体当たりしてでも止めるのに」
忍「っと、それよりダンスレッスン! 久しぶりに加蓮に教えてもらおっかな。最近、レッスンぜんぜん見に来てくれないから」
加蓮「あー……まぁ、柚の件でほとぼりが冷めたらね。それに……その、今はちょっとキツイっていうか……人のことに構ってる場合じゃないっていうか……ほら、教えるのもけっこう大変なんだって! 忍は知らないかもしれないけど!」
忍「…………」
加蓮「……やめてよ、その気遣う目。アンタにそんな目されたら本気でおかしくなりそうなんだけど」
忍「そこまで言うことなくない!? ……まあ、加蓮が気にしないって言うならアタシも気にしないよ」
加蓮「意外とさっぱりしてるんだね」
忍「悩むのは嫌いじゃないけど、悩むよりぶつかっていきたいタイプだから♪ だいたい加蓮のことなんだし、アタシの助けなんてなくてももうだいたい見えてるんじゃないの? 解決方法っていうか、こうするって決めたこととかさ」
加蓮「決めて……なくはないかもしれないけど、今は自分探し中。だから忍の話も聞きたいかな?」
忍「それならしょうがないね」
加蓮「しょうがない」
忍「レッスンの後でいい? って、いやそもそも何の話を聞きたいのか知らないけど……」
加蓮「いいよいいよ。じゃ、軽くやろっか!」
忍「うんっ」

――25分後――
加蓮「…………」バタッ
忍「ワンツースリーフォー、ワンツー…………あ」
加蓮「…………かるくっていったよねわたし……」シロハタ
忍「……大丈夫? やっぱり病み上がりはキツイんじゃ」
加蓮「元からこんなんよ……悪かったわねぇ体力なくて…………」
忍「あ、そう……」
忍「じゃ、アタシもちょっとクールダウンしよっと。ねえ加蓮。アタシのダンス、どんな感じ? 直した方がいいとことかある?」
加蓮「別に……だいたい完成してるように見えたけどね……。それ昨日の振り付けなんだよね。LIVEはどんな感じだったの?」
忍「LIVEは……ダンスパートは穂乃香ちゃんがすごかった。あずきちゃんも、ペースを持っていくっていうかさ」
忍「でも何より柚ちゃんの迫力が違ってた。加蓮、何をアドバイスしたのさ。アタシにも教えてよ」
加蓮「……いや、特別なことはなんにも。あの子が道を見つけただけ……ゲホッ……なんじゃない?」
忍「そうなのかな……」
忍「……アタシさ」
加蓮「んー?」ゴロン
忍「もっともっと上を目指したいんだ。……努力することは好きだけど、今はそれと同じくらい結果を出したくて。そうしたら、アタシを育ててくれたPさんへの恩返しになるかな、なんて思っててさ」
加蓮「…………」オキアガリ
忍「アタシって不器用で荒削りで、みんなみたいに持ってる物も少ないから……でもどんなに頑張ってもぜんぜん追いつける気がしないんだ。フリルドスクエアのみんなとか、加蓮とか」
忍「どうしたらいいんだろ、アタシ……って、加蓮相手に聞くことじゃないよね! 加蓮に追いつきたいって言ってるのに加蓮に相談するとかアタシ変だよね! ふふ!」
加蓮「うん。忍ってちょっとヘンだよね」
忍「……いや真顔で返されるとちょっとショックだよ?」
加蓮「変だって自分で言ったことじゃん。……上を目指すとかトップになりたいとか、だったらフリルドスクエアみんなでなればいいのに」
忍「うん、そう考えたこともあったよ。でもみんなは、友達で仲間だけどライバルなんだ。……加蓮ならそういうの、分かってくれると思うけどな」
加蓮「ん……分からなくもないけど……ああそうだ。私たちのユニットさ、モットーがあるんだ」
忍「なに?」
加蓮「"好き勝手にやること"。LIVEの前の会議なんてすぐ終わるしフォーメーションなんてその場に応じて。前に出たいなら勝手に前に出ればいい。それで今まで上手くできてきたの」
忍「へー。なんだか加蓮らしいって感じだね」
加蓮「いつの間にか限度を超えちゃって、私が瓦解させようとしちゃってるけど」
忍「…………うん。加蓮らしいね。いろいろ」
加蓮「気遣わないでくれてありがと。それでさ、だからこそ分かるんだ。忍達のユニットがすごく仲良しだってこと」
加蓮「横並びでさ、みんなでゴール! ……なんて。忍達ならそれができるんじゃないかな」
忍「…………」
加蓮「なんて、余計な物言いかな……ごめんね? 変なこと言って」
忍「いや……加蓮、そういうの嫌うって思ってたからビックリした」
加蓮「あーうん、嫌いは嫌い」
忍「あ、やっぱり?」
加蓮「正直バカみたいだって思う。でもさ。なんていうか、薄っぺらいっていうか安っぽいから嫌いなだけで。フリルドスクエアは薄っぺらくなんてないと思うよ、私は。ちょっと羨ましいくらい」
忍「そうなのかな……。分かんないや。アタシ、加蓮みたいに観察するの得意じゃないから」
加蓮「そ」
忍「でも、それでもさ。それならそれで、アタシはもっと頑張らないと……ううん、頑張りたいんだ。みんなについていけるように!」
忍「誰と並んでも大丈夫だって言えるようになったら、Pさんに見せてあげなきゃ。アタシはここまで成長したぞー! Pさんのお陰だー! ってさ!」
加蓮「……ふふっ。お節介だったね、私」
忍「そんなことないよ。……っていうか加蓮、ちょっと変わった?」
加蓮「え、何が」
忍「なんていうのかな。いま、フリルドスクエアの話をしててすっごく楽しかったっていうか……話がやりやすかった気がする」
忍「よく分かんないけどね……」アハハ
加蓮「ホントに分かんないね」
忍「ぅぐ。ズバッと言うことないじゃん」
加蓮「さてと。健気に頑張る忍ちゃんの為に、この加蓮ちゃんがレッスンをしてあげよう――」グラッ
加蓮「あ、あれ?」
忍「…………」
加蓮「待って、違うのこれはほらちょっとふらついただけで……おっかしーなー、たかが30分程度のダンスレッスンでへばる私じゃ……」
忍「やっぱり加蓮、まだ疲れが残ってるんじゃない? ほら、柚ちゃんのせいでとか」
加蓮「おのれ柚、私をじわじわと!」
忍「困ったらとりあえず柚ちゃんのせいにしちゃえっ♪」
加蓮「い、意外と言うんだねアンタも……あー、じゃあ忍がやってるの見て、私が指導するってことで」
忍「了解っ♪ じゃ、しっかり見ててね。今のアタシの実力を!」


掲載日:2015年10月4日

 

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