「左隣から右隣に勝つ」





前回のあらすじ!
北条加蓮が頭を思いっきりぶつけたよ!


――病室――
工藤忍「で、わいわい騒いで頭を打って、精密検査をしたら2日ほど安静入院しろって言われたんだ」
北条加蓮「…………」
忍「……」
加蓮「……うん」
忍「…………加蓮だってはしゃぎたい時もあるよね♪」
加蓮「待って、なんかまるで私がやんちゃして病院送りになったみたいに言うのやめて」
忍「そうだ、りんご食べる? 持ってきたんだ。うさちゃんりんごにしてあげよっか?」
加蓮「やめて、ここぞとばかりに全力で子供扱いするのやめて」
忍「しょうがないなぁ。はい、あーん♪」
加蓮「やーめーろー!」
忍「わっ。びっくりした。意外と元気じゃん」
加蓮「あー……ちょっと目眩が」
忍「大人しくしてないと、加蓮のプロデューサーさんにも怒られるよ?」
加蓮「もうさんざん絞られたからいいです……」
忍「アタシだって心配したんだからね? もちろん、柚ちゃんも穂乃香ちゃんもあずきちゃんもだよ?」
加蓮「心配かけてごめんって言っといて」
忍「……加蓮が変に素直だと、逆に心配になるね」
加蓮「忍もそろそろ、こっちの私に慣れてきた?」
忍「うん。ま、こういう人もいるのかなって思えると楽しめるよ♪」
加蓮「私は忍といても肩が凝るだけだよ……」
忍「そうだ、今日のレッスンのお話でもしよっか」
加蓮「そういうところで肩が凝るんだけど」

――10分後――
忍「――で、どうもアタシの動きとあずきちゃんの動きが合わないんだよね。アタシ、先走りすぎちゃってるかな?」
加蓮「でも話を聞くだけだと、そこは気合を入れてステップを踏むところだよね」
忍「うん、トレーナーさんも言うんだけど、何回やってもうまくいかなくて……」
加蓮「忍のやり方は間違ってないと思うけど……じゃああずきちゃんの立ち位置が悪いのかな? 今度、見てみようか。動きを変えるだけで解決することってあるんだよね」
忍「お願いします、加蓮プロデューサー♪」
加蓮「ふふっ」
忍「……」
加蓮「……」
忍「……いつの間にか、いつもの加蓮だね」
加蓮「はっ。……もう」ゴソ
忍「シーツに隠れるくらい恥ずかしいことなんだ。アタシにとってはやっぱり、こっちの加蓮の方が加蓮って感じがするな♪」
加蓮「むー……忍がレッスンの話とかするから悪いんだ」
忍「でも加蓮だって乗ってきたよね」
加蓮「そうだけどさー……」
忍「気にしすぎだと思うんだけどなー。アタシだってステージやってる時とか、ステージ終わった後なんかはよくハイテンションになるけど、別に恥ずかしくなんてないよ?」
加蓮「私、アンタほど素直に生きてないしー」
忍「ふふ。はい、あーん♪」
加蓮「むぐ……」モグモグ
忍「帰ったらまた自主レッスンやろうっと。加蓮のアドバイス、活かさなきゃ♪」
加蓮「……私が退院した時、変なダンスしてたら鼻で笑うからね」
忍「笑われないように頑張るから! じゃ、アタシは帰るね! 加蓮、お大事にっ!」バタン
加蓮「ばいばい」

――30分後――

<コンコン...

加蓮「開いてまーす」

<ガラッ...

道明寺歌鈴「……」
加蓮「あれ? 歌鈴じゃん。なになに、弱った相手にトドメ刺しに来た?」
歌鈴「そうですよっ! いっつもいっつも、Pさんを心配させてっ!」
加蓮「ふふっ。……あれ、歌鈴……?」
歌鈴「藍子ちゃんもっ、夕美さんも、あと菜々ちゃんも春菜ちゃんも愛梨ちゃんもっ、みんな心配してるんですよ! 加蓮ちゃんのこと!」
加蓮「…………参ったな」ガシガシ
歌鈴「夕美さんにもらって花束も持ってきましたけど、こんなのぽいっしちゃいますからね! ぽいって!」
加蓮「わ、待って待って。せっかくの好意なんだから受け取らせてよ」スッ
歌鈴「……」シブシブ
加蓮「……そっか、心配、かけちゃったか」
歌鈴「あんまりおばあちゃんみたいにのんびりしてると、Pさんに言っちゃいますからね。すぐ倒れる人とはLIVEできませんって!」
加蓮「はーい、すぐ復帰しまーす。ってか明日には退院するから、その間は自主レッスンでもしててよ」
歌鈴「……それ以上は、ぜったい、待ちませんからね。ぜったいですからねー!」
加蓮「うん。絶対に待たせない」
歌鈴「……」
加蓮「……」
歌鈴「……」
加蓮「……LIVEバトルのこと、聞いた?」
歌鈴「……はい」
加蓮「私と歌鈴が組んで、藍子と夕美とやるんだって。ふふっ、面白そうだよね」
歌鈴「……私、藍子ちゃんと、LIVEバトルするんですね」
加蓮「みたいだね。どうする? ギリギリ降りられるとしたら今だよ。夕美も、もし無理なら別の相手を探すって言ってたから」
歌鈴「……」
加蓮「……歌鈴?」
歌鈴「……私、昔からずっとドジなんです。失敗ばっかりで、転んでばっかりで」
加蓮「うん……?」
歌鈴「でも、Pさんはこんな私に手を差し伸べてくれたんです。アイドルにしたいって。アイドルになれるって。私なんて……ドジでノロマで可愛くもなくて、アイドルなんて絶対にムリだと思っていました。ドジもたくさんしちゃいました。でもPさんはずっと、私のことを見捨てませんでした」
加蓮「……うん」
歌鈴「ここまで、来ることができました」
加蓮「うん」
歌鈴「私は、Pさんのお役に立ちたいんです。Pさんの為のアイドルになりたいんです」
加蓮「うん」
歌鈴「でも私っ……それと同じくらい、藍子ちゃんのことが大好きなんです!」
加蓮「あははっ、見れば分かるよ」
歌鈴「そんな藍子ちゃんと戦うなんて、私――」
加蓮「ねえ、歌鈴」
歌鈴「ふぇっ?」
加蓮「歌鈴がアイドルになったのは、Pさんのおかげだよね」
歌鈴「もちろんでふっ! あ、もちろんです!」
加蓮「歌鈴はPさんの為に、アイドルをやっているんだよね」
歌鈴「はいっ! Pさんの為なら、なんだって!」
加蓮「それは、歌鈴がやりたいからやってるの? それとも、他にやることが見つからないから?」
歌鈴「私がやりたいからやってるんですっ! Pさんに迷惑はかけたくありません。アイドルとして恩返しを……!」
加蓮「……即答か」
歌鈴「私、加蓮ちゃんにだって負けるつもりありませんっ。藍子ちゃんもPさんも、加蓮ちゃんには渡しませんからね!」
加蓮「じゃあさ。もし――ほっといたら、Pさんの隣に藍子がいる、なんてことになったら?」
歌鈴「――!!」
加蓮「どうする? 歌鈴はPさんの左隣に並ぶ? それとも藍子の右隣に並ぶ?」
歌鈴「……」
歌鈴「…………」
加蓮「……」ジー
歌鈴「………………Pさんの隣に並ぶと、思います」
加蓮「よかった」
歌鈴「ふぇ?」
加蓮「ううん。……Pさんは望んでると思うよ。歌鈴が舞台に上がるところを。藍子達に、勝つところを」
歌鈴「……!」
加蓮「言っとくけど――私は色々と言うし人を煽るしからかうけど、嘘だけは絶対に言わないようにしてる。信じるのは歌鈴次第だけどね」ジッ
歌鈴「……………………加蓮ちゃん!」
加蓮「うん」
歌鈴「私……どうせ藍子ちゃんとLIVEバトルするなら、ぜったい、絶対に勝ちたいです!」
加蓮「うん」
歌鈴「勝って、Pさんに褒めてもらって、頼りにされるんです!」
加蓮「よし!」
歌鈴「だから、加蓮ちゃん!」

歌鈴「私がドジをしない方法、いっしょに考えてください!」
歌鈴「私達がすてきなステージをできる方法、いっしょに考えてください!」

加蓮「ふふっ! それはまた難しい話だね。いいよ、寝ないで考えよっか!」
歌鈴「はい! 寝ないで考えちゃいましょう!」
加蓮「打倒藍子だよ。やるよ、歌鈴!」
歌鈴「負けないぞっ。えいえい、おー!」



掲載日:2015年7月23日

 

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