「気合だって入るよ」





――事務所の仕事部屋・夕方――
相葉夕美「こんにちは〜♪」
高森藍子「あ、夕美さん! ふふっ、こんにちはっ」
北条加蓮「…………」チラッ
夕美「藍子ちゃんに加蓮ちゃんっ。ね、今いい? 今日はもう帰るところなんだけどちょっと買い物があって。一緒に行きませんかっ♪」
藍子「いいですよ。加蓮ちゃん、」
加蓮「……」スクッ
藍子「は――」
加蓮「ごめん、私先に帰るね」スタスタ
<ガチャ
夕美「……?」
藍子「…………」
夕美「もしかして忙しかったのかな? 悪いことしちゃったかなぁ……あ、じゃあ藍子ちゃん一緒に行ってくれる?」
藍子「あ、はいっ。その……加蓮ちゃんがごめんなさいっ」
夕美「いいっていいって! なにかあったのかな? なんだか、ちょっとキツそうな顔してたけど……」
藍子「……ちょっとだけ。でも、その……いろいろと難しくて……」
夕美「そ、そなの? ええと、1人にしちゃって大丈夫なのかな」
藍子「今は、あんまり構わない方がいいのかも……?」
夕美「そっか。気になっちゃうけど、藍子ちゃんがそう言うなら……うん! 1人になりたい時だってあるよねっ。私だって落ち込んでる時はあんまり人に見られたくないもん。また笑顔になったら、お話することにするねっ」
藍子「そうしてあげてください。私は、夕美さんのお買い物についていっちゃいますね」

――薬局――
夕美「花の香りのエッセンスと、あと天然オイル、それから……ファンデーションはあったかなっ。うん、こんなところ!」
夕美「それから簡単なお菓子も買っちゃお! 薬局っていろいろ揃ってるから便利だよねっ」
藍子「はいっ。ここ1箇所だけで解決しちゃったりしますよね。でも、ちょっぴりこだわりたい時もあったり……?」
夕美「分かる分かる! ここのが悪いって言うことはないけど、ほら、ガーデニング用の土はこのホームセンターで! とか、そういうのあるよねっ」
藍子「ふふっ。私も、お散歩用の靴はいつも決まった場所で買うようにしているんです。夕美さんと同じですね」
夕美「靴かぁ。私1年くらいずっと同じの使ってるよっ。これこれ」トントン
夕美「このスニーカー、とっても動きやすいんだよ。私いろんなとこ走ったりするから、使い潰しちゃっても同じの買うかもっ」
藍子「私は、いつも違うのを買うようにしてますっ。その方がなんだか面白くて♪」
夕美「じゃあ私も次はそうしちゃおうかな。あっ、お菓子売り場! ナッツとかグミがお肌にいいって言ってたかな? 買っちゃおーっと」
藍子「私も、何か買っていっちゃおっかな……実は今日、みんなで菜々さんの家に泊まりに行くことになってるんです」
夕美「え、そうなの!? あはは、ごめんね? 付きあわせちゃって。時間大丈夫?」
藍子「はいっ。7時にみんなでファミレスに行って、ご飯を食べて。あっ、菜々さんの家の近くのファミレスなので、暗くてもへっちゃらですっ。菜々さんもいますから!」
夕美「あー、あはは、そうだね。うん、菜々ちゃんがいるなら大丈夫だよね」
藍子「ファレミスのあとは、菜々さんの家でのんびりしようってなってるんです」
夕美「そっかー、菜々ちゃんの家でお泊り会なんだ。いいなー…………菜々ちゃんの家で?」
藍子「……? はい、そうですよ?」
夕美「えーっと…………」
夕美「…………ウサミン星?」
藍子「あ、あはは、それはあんまり突っ込まないであげてください……」
夕美「そ、そだね! ほらっ女子寮に住んでる子とかもいるから家が実家とは限らないよね!?」
夕美「でもそっかー。次にそういうことがあったら私も誘ってねっ♪ その時にはラベンダーのアロマを持っていこーっと。すごくぐっすり眠れるんだ。LIVEで疲れた日でも疲れも吹っ飛んじゃって♪」
藍子「…………」
夕美「……あ、あれっ? ……ちょっぴりマズイ感じ?」
藍子「あ……い、いえいえっ。ただその、ちょっと今、加蓮ちゃんが――」
藍子「でも、夕美さんなら……ううん、でも……」
夕美「よ、よく分かんないけど……じゃあ、もし大丈夫になったら呼んでほしいな?」
藍子「はいっ、もちろんです!」
夕美「あ、お泊り会なら藍子ちゃんもお菓子を買って行くといいんじゃないかなっ。ふふっ、付き合ってくれたお礼に出してあげる♪」
藍子「本当ですか? ありがとうございます♪ じゃあ、菜々さん用に野菜スナックと、加蓮ちゃん用にポテチと……」
夕美「藍子ちゃん用には?」
藍子「私は……う〜ん……。私は、みんなで食べられるクッキーにしようかな? あ、でも甘すぎると加蓮ちゃんが嫌がるし、プレーンは菜々さんが好きじゃないって言ってたから……」
藍子「両方……は、夕美さんに高くついちゃうしっ……うう〜」
夕美「あははっ♪ いいよいいよ。両方買っちゃえっ。ツアー用の雑費はけっこうもらってるし、まだまだ余裕あるから♪」
藍子「ツアー用、ですか? そういえば夕美さん、今日のお買い物って」
夕美「うん。また明日から北海道ですっ」
藍子「わぁ……あ、じゃあマフラーとかセーターとかも買っていった方がいいんじゃ――」
夕美「ふふっ、それは用意済み♪ お泊りグッズだけ買ったら大丈夫だよ。Pさんから雑費は余るくらいもらっちゃってるしっ」
夕美「……実は毎回、ちょこっとちょろまかしちゃったりするんだ♪」
藍子「えー? そうなんですか?」アハッ
夕美「えへへっ。Pさんも多めに渡してくれてるし、きっとバレちゃってるんだけどね」
藍子「それにしてもまた北海道なんて大変ですね。夕美さん、先週末にも北海道にツアーに行ってたんじゃ……?」
夕美「うん。先週のは前々からだったんだけど、今回はちょっと……リベンジ?」
藍子「??」
夕美「前のツアーの時、少しだけ失敗しちゃったんだ。今回はそのリベンジ。だから、気合も入れていかなきゃね!」
藍子「そう……なんですか?」
夕美「うん。……楽しさを、伝えきれなかった子がいて。そのまま放っとくのもアイドルとしてヤダだしPさんにも頼まれたんだ。だから、頑張らなきゃ♪」
藍子「すごい……! こんなに気合の入った夕美さん、久しぶりに見ます……!」
夕美「ふふっ、私だってアイドルですから♪ って言っても私はいつも通りにしかできないんだけどね。いつも通り、みんなに楽しんでもらう為にって♪」
夕美「いつも通りやるだけ。でも――アイドルとしてのファンと、アイドルとしてのプロデューサー。両方の為だもん。気合だって入るよ!」
藍子「夕美さん…………はいっ」
夕美「藍子ちゃんはどう? そういうことってある?」
夕美「いつも以上に気合が入って、緊張しちゃったり、不安になっちゃったり。そういう時ってどうしてるかな」
藍子「……私は……でも、いつも周りのみんなに助けてもらってばかりですから」
夕美「そっかー。みんな藍子ちゃんのことが大好きだもんね! 加蓮ちゃんに菜々ちゃんに歌鈴ちゃん! もちろん、藍子ちゃんのプロデューサーさんも!」
夕美「あっ、それに私もだよっ♪ えへへ、ちょっと照れちゃうねっ」
藍子「ふふっ、ありがとうございます」
藍子「それは、すごく嬉しいことだけれど……でも、私はいつも助けてもらってばかりだから……夕美さんの強さがちょっぴり羨ましいっ」
夕美「えー? そう? うーん……あのPさんのところにいると逞しくならざるを得ないっていうか……」アハハ...
藍子「?」
夕美「なんでもなーいっ。あんまりのんびりしてたら加蓮ちゃんや菜々ちゃんが待ちくたびれちゃうね。藍子ちゃん、お菓子はそれだけでいい?」
藍子「あ、はいっ。あのっ、やっぱり私もお金――」
夕美「いーからいーから! じゃ、レジ行こっか。〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪」テクテク
藍子「わ、待ってください夕美さん〜」テクテク


掲載日:2015年11月14日

 

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