「なにやら不満があるようです」





――事務所――
アホP(以下「P」)「うう〜〜〜〜〜〜む…………」

<ガチャ

岡崎泰葉「おはようございます」
P「むう〜〜〜〜〜〜〜む」
泰葉「……? おはようございます、Pさん」
P「む〜〜〜〜〜〜〜〜う」
泰葉「…………」イラッ
P「う^〜〜〜〜〜〜〜〜〜っむ」
泰葉「…………」
泰葉「よいしょ、っと……」ソファニスワリ
泰葉「宿題を……」パラッ

――10分後――
P「ハッ! いけないいけない、脳内でついほたるちゃんにはどんな冬服が似合うか考えてしまっていた! ……冬服、ショー、今から間に合うかな……」ブツブツ
泰葉「…………」チラ
P「確か定期のファッションショーが近いうちに、って資料どこやったっけか」キョロキョロ
P「ん? ……どわ!? ややや泰葉!? 泰葉さん!? いつの間にいらっしゃって!?」
泰葉「おはようございます、Pさん。私はずっとここにいましたよ。Pさんが悩んでいる間も」
P「マジ!? うっわ、うっわ、どんだけだ俺。泰葉が来たことに気付かないとかどんだけだ俺」
泰葉「随分と難しい顔をしていますね、Pさん」
P「あ、ああ〜……うん、その、泰葉が心配することじゃないんだ。ええとな……」
泰葉「…………」イラッ
泰葉「……夕美さんから聞きました。スカウトして、失敗してしまったって」
P「ああ……ああ? ああ聞いてたのか。そうなんだよなぁ。夕美のLIVEを見せてまでミスっちゃって……ははっ」
泰葉「そんなに落ち込まないでください。誰だって失敗はありますから……」
P「泰葉ぁ……!」
泰葉「……Pさん。あの、1人で考えこまないでください。Pさんには私と、それに夕美さんもいるのですから」
泰葉「それに……Pさんが悩んでいるのに蚊帳の外なんて、寂しいんですよ?」
泰葉「もう少し頼りにしてくれた方が、私は……」
P「…………!」
泰葉「どうやってアイドルをスカウトするか、一緒に考えましょう。私も、微力ながら……手伝えることは手伝います」
泰葉「私だって、Pさんのアイドルなんですから」
P「泰葉〜〜〜〜〜っ!!」ガバッ
泰葉「きゃっ」
P「やすはああああああああ〜〜〜〜〜っ!!!」
泰葉「…………あの、あんまりこうしていると、また――」

相葉夕美「おはようございま、」

<ごちーん!

……。

…………。

P「拳が……拳が見えなかった……相葉夕美、ヤツは光速拳の使い手だったか……!」(床にぶっ倒れている)
夕美「なにそれ?」
泰葉「だから言ったのに……」
P「ぬおぉ……うが〜〜〜!」ガバッ
P「おのれ夕美! 今日という今日は! そこになおれ!」
夕美「座ればいいのかな? よいしょっと」
夕美「あっそうだ! Pさん、今日はリラックスできるハーブを持ってきたんだ。昨日は徹夜明けみたいだったから……今日はこれを使って、じっくり眠ってね♪」
P「ヤバイ。夕美も泰葉も優しい。ここが天国か――」
P「……否! 夕美、そこになおれ!」
夕美「うん。何?」
P「お前な! 泰葉がな、泰葉が悩んでる俺に手を差し伸べてくれたんだ! じゃあ抱きつくのが男ってもんだろ! 勢い余るのが野郎ってもんだろ!」
夕美「ごめん、私女の子なんだ」ウシロカラギュー
泰葉「…………?」ダキシメラレ
P「…………お前な……いいや。なんかもういいやってなってきた……夕美に殴られるのもそれはそれでいいし……」
夕美「ちょっと待ってPさん今見逃せないこと言わなかった?」
P「よし、今日もミーティングだ。泰葉はレッスンで夕美はCM撮影だな。泰葉、レッスンの進行具合はどうだ?」
夕美「…………まー、もう今更だからいいけど」
泰葉「レッスンは順調です。ただ、トレーナーさんからはまだまだと……ダンスが少し弱いって指摘されています」
P「おし俺も見に行こう。以上、ミーティング終わり! 今日も頑張っていくぞ!」
泰葉「はい」
夕美「はーいっ。……って、いっつも思うけどPさんって私への指示すごくアバウトだよね。泰葉ちゃんにはよくいろいろ聞いてるのに」
P「だって夕美それで結果上げてくるじゃん。あと夕美に任せたらどうなるか楽しみにするのが俺の楽しみだし」
夕美「そうなんだっ。任されてる、ってことでいいのかなっ?」
P「おう! 信頼してるぞ俺の嫁!」
夕美「お断りします♪」
泰葉「…………」ジー


――その日の夕方――
泰葉「レッスン、戻りました……」ガチャ
P「う〜〜〜〜〜〜っむ。ん、おお、お帰り泰葉。悪いなーつきっきりで見たかったんだがどうしても対応しないといけない電話があってさぁ」
泰葉「ふふ。打ち合わせは重要ですよね。それより、また難しい顔を……もしかして、朝の件ですか?」
P「そうそう。なあ、泰葉ならどうする? アイドルのLIVEで盛り上がっていない子がいたりしたらさー、どうする?」
泰葉「私は……でも、色々考えますけれど、最後には今できることを精一杯やるしかないと思います」
P「お、意外とシビア」
泰葉「プロは結果がすべてです。レッスンが足りなければそれだけの結果しか出ない。でも気付いた時にはどうしようもない。……そんな世界だと思います」
P「意外とじゃねえすっげえシビア」
P「そっかー……。泰葉は自分に厳しいんだな」
泰葉「いえ……それでも、たまに気が抜けてしまって。今日もレッスン中に――」
P「おっ?」
泰葉「…………レッスン中に……ダンスをしている時に、ふっと思い出しちゃって……その、Pさんがここで面白っ、…………ふ、不思議なポーズをしていた時のことを…………!」
P「」グサッ
泰葉「トレーナーさんにもっと真剣にと言われてしまいました。私も、まだまだですね」
P「い……いやぁ……それくらい柔らかい顔でやった方が、ファンも喜ぶと、思うよ……?」
泰葉「……でも、あの顔は反則ですよ……っ! あ、また思い出してしまって、ふふっ、違っ、あの時のPさんの顔……くくっ……!」
P「」グサグサッ
泰葉「ふうっ……何とか落ち着きました。ところでPさんはどうしてお腹を押さえているんですか?」
P「泰葉」
泰葉「……?」
P「子供には分からないと思うけど、大人には徹夜明けテンションってあるんだ」
泰葉「…………」
P「そんな姿をね、しかも子供に見られるとね、もうね」
泰葉「…………」
P「…………なんで昨日の俺はあんなことやってたんだよチクショウ〜〜〜!」
泰葉「…………」
泰葉「Pさん。Pさんにとって私は、やはり子供なんですか?」
P「へ? まあ、そりゃ16歳だし……」
泰葉「……確かにアイドルとしてはまだ未熟ですが、これでも長い間この業界にいたんです」
泰葉「だから……」
泰葉「…………」ボソッ
P「え、何? 頼る……?」
泰葉「……いえ、なんでも。今日はもう予定がないので……私は、帰りますね」スクッ
P「あ、あの、泰葉さん? そのー、何か怒って」
泰葉「怒ってません」
P「いやどう見ても怒って」
泰葉「怒ってません」
P「…………」
泰葉「怒ってません」
P「ソウデスネ」
泰葉「ではまた明日……。お疲れ様でした、Pさん」
<ガチャ
P「…………」
P「…………」
P「……………………」

<ただいま〜ってPさん!? 枯れた花みたいになってるよ!? どうしたの!?
<う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜む、分かんねえ、すべてが分かんねえ…………
<何が!?
<この世のすべてが分かんねえ…………
<だから何があったの!?


掲載日:2015年11月12日

 

第180話「俺のパターンは64までしかないぞ」へ 第182話「知ってる? 知らない?」へ

二次創作ページトップへ戻る

サイトトップに戻る

inserted by FC2 system