「たまたま偶然ばったりっ」





――映画館前――
喜多見柚「面白かった〜♪」
北条加蓮「うわ、外暑……。……せっかくだからもう1本くらい見ていかない?」
工藤忍「そんな理由で!?」
加蓮「だって映画館、涼しいし」
柚「わかる! でも今日はちゃんと対策してきたんだ。じゃん! 冷えピタ!」
加蓮「うわ見飽きたアレがお腹に」
忍「ちょっと柚ちゃん! ここ、外、外!」
柚「おわっと」ササッ
柚「それにしても映画を観に来たら加蓮サンがいるとは! すごい偶然だねっ」
加蓮「こっちこそ。2人だけで来てたんだ」
柚「ホントは穂乃香チャンにあずきチャンも誘ったんだけど、なんか忙しいって」
忍「だからアタシ達だけで来てから、たくさん感想を言ってあげるんだっ♪」
柚「くやしー! 行きたかったー! って言わせたら柚の勝ち!」
加蓮「そっか。柚ならきっとできるよ」
柚「でへへー。加蓮サンは? 1人?」
加蓮「藍子も菜々も、こういうのは向いてないしね。奏は恋愛映画ばっかりだし。凛か未央なら良かったんだけど、どっちも空いていないっていうから」
加蓮「……何? たまのオフの日に1人で映画を観る寂しい女だって思われてる?」
柚「でも加蓮サンだと似合っちゃうからズルいっ」
加蓮「ず、ズルいって……」
忍「加蓮ってこういう好みとかうるさそうだよね」
加蓮「そう? 割となんでも好きだけどなぁ」
忍「じゃあ加蓮は今日のアクション映画、どうだった?」
加蓮「んー……俳優の動きがちょっと鈍いかな。動くべき場所はもうちょっと動いて欲しかったっていうか」
忍「ほらうるさい」
加蓮「……いいじゃん」
忍「アイドルやってるとそういうとこ気になるよね。アタシだったらどうするだろ、とか」
加蓮「分かる分かる。無理だって分かっててもさ、ほら、私だったら挿入歌の雰囲気が気になったり」
忍「アタシはダンスレッスンのこと思い出したなー。でも中盤の、ほら、一対一の緊張感なんかは参考になりそう?」
加蓮「あのシーンはテレビでも話題になってたっけ。なるだけはあるね。次のダンスの時にでも――」
柚「もーっ! 2人とも、今日はオフなんだからアイドルの話は禁止!」
加蓮「え」
忍「え」
柚「2人がアイドルバカだってことは分かってるけどーっ」
加蓮「これと一緒にしないでよ」
忍「加蓮と一緒にしないでよ」
加蓮「…………」
忍「…………」
柚「ケンカもだめーっ。ほらほら、加蓮サン、ポテトの屋台あるよっポテト!」
加蓮「はいはい……。2人も何かいる? ついでに買ってくるけど」
柚「カルピスソーダ!」
忍「じゃあ、ウーロン茶」
加蓮「オッケー、行って来るね」

加蓮「ただいま」
柚「おかえりっ。今ね、忍チャンと加蓮サンのこと話してたんだ!」
忍「でも柚ちゃんって、加蓮のことすごいすごいってばっかり言うから……なんか惚気話でも聞かされてる気分になっちゃった」
柚「わ、わー! それ禁止! 言うの禁止!」
忍「今日の柚ちゃんは禁止が多いね」
加蓮「はいはい、じゃあお礼にジュースは奢ってあげよう」
柚「やったっ。アリガト加蓮サン!」
加蓮「はい忍。ん、お金」
忍「……アタシの分は奢らないんだ」
加蓮「ポテトうまー」
柚「加蓮サンが戻ってきたところで……エート、じゃあ加蓮サンは加蓮サンの何が凄いと思いますかっ」
加蓮「え……? なにこれ、自画自賛しろってこと? やだよ痛いよそれ」
柚「ほらほらっ」
加蓮「んー…………」
柚「ちなみにアタシはイジワルがすごいと思う! はい忍チャン!」
加蓮「褒めてるのそれ?」
忍「アタシ? じゃあ……やっぱり、歌が凄いこと?」
柚「アイドルの話禁止!」
忍「え!? それすごく難しくないかな!?」
加蓮「アイドル意外に褒めるとこないって言いたいの?」
忍「うん」
加蓮「…………いーもん、私、端っこでポテト食べてるもん」
柚「わわっ加蓮サンが拗ねちゃった! 忍チャン、謝って!」
忍「はいはい……ごめんごめん。加蓮のいいところ? 子供に優しい」
柚「そなの?」
忍「すごくね。前に教育番組にも出たんだったかな……ほら、歌のお姉さん」
加蓮「歌い方を変えるのだいぶ苦労したよ。お陰で子供にもちゃんと笑顔になってもらえるようになったけど」
忍「相変わらず加蓮だね。どうやってるのさ?」
加蓮「ちょっとコツを掴めば簡単だよ。まず息を吐き出す方法を――」
柚「アイドルの話ばっかりっ。2人はそれ以外にないの!?」
加蓮「あー……」
忍「気がついたらやっちゃうよね。アタシも加蓮も、相当アイドルバカだし」
柚「それさっき柚が言った! あれ、一緒にするなって言ったけど、それは一緒でいいんだっ」
加蓮「事実だもんね」
忍「そう考えると、プライベートって苦手かなぁ……加蓮っていつも何してる?」
加蓮「さぁ……。何してたっけ。あ、今、映画観てきた」
忍「それはアタシもだよ……」
柚「加蓮サン、前にファッション街の方いなかった? ほらほらっ、えと、開店ブームの時!」
加蓮「アイドルとしては見逃せな――おっと、またアイドルの話しようとしてた」
加蓮「忍のこと笑えないなぁ……まあ、笑ってもないけど」
忍「柚ちゃんはオフの日の過ごし方とか得意そうだよね」
柚「待ってましたっ。柚はね、色々やってるんだよっ。この前は忍チャンおすすめのお店に行ってみた!」
忍「りんごタルトを買いに行った場所?」
柚「うん。でもやっぱり、みんなで行く方が楽しいね!」
忍「だねー」
加蓮「りんごタルト?」
柚「こっちの方にあるのですよっ、忍チャンと同じ青森のりんごを使ったタルトのお店!」
加蓮「へー……藍子にでも買って行ってあげよっかな。ねね、どこにあるの? 教えてよ」
柚「えー、あれはフリルドスクエアみんなの秘密のお店だからっ」
忍「えっと……あった、はいこれ、住所とマップ。送ろうか?」
加蓮「サンキュ。お願い」
柚「うらぎりものー!」
忍「別にそういうのじゃないし……加蓮だって、言いふらしたりしないでしょ」
加蓮「そうした方がいいならそうするよ?」
柚「むむ……加蓮サンならしょうがないっ。ねね、今度アタシと一緒に行こうよ!」
忍「早速だな」ビシッ
柚「それでー、えっとー、誰と行こうかなっ。誰と行ったら楽しいかな? へへっ」
加蓮「……とりあえず、忍は除外して、そだねー」
柚「ええっ。忍チャン、だめ!?」
忍「アタシだってオフの日くらい加蓮と会わずに済みたいよ。加蓮だってそうだよね」
加蓮「もちろん」
柚「え、え!? ……あれ……? どゆこと? どゆこと?」
加蓮「別に……」
忍「加蓮と行くならあずきちゃんとかは? 加蓮にもいい刺激になるよ!」
加蓮「あずきちゃんかー。いっつもびっくりするよね、あの子には。あの発想どこから来るんだろう」
忍「ときどき羨ましくなるよね。ダンスもビジュアルも、トレーナーさんがびっくりするくらいのこと言うんだもん」
加蓮「歌い方……魅せ方、っていうのかな。ちょっと聞いてみようかな、気にな――」
柚「アイドルの話は禁止ー!」
加蓮「おおっと」
柚「もうっ。気を抜いたらすぐこうだっ。罰として加蓮サンはアタシと付き合うことー!」
加蓮「告白されちゃったよ」
忍「おめでとう。存分に振り回されて来てね」
柚「そおじゃなーいー! 忍チャンっもしかして柚を厄介者っぽくしてない!?」
忍「うん」
柚「なななっ!?」
忍「……柚ちゃんって空気読めないとこあるよね、いやいい意味でだけど」
柚「ギャー! そそ、それは言わないでっ、言わないでっ」
加蓮「忍が言うんだから良い意味なんじゃないの? 忍が言うんだから」
柚「ほ、他にも誰か言ってる!?」
加蓮「私」
柚「ごめんなさいー!」
加蓮「……良い意味だと思うんだけどね、私も」
忍「退屈しないし、塞ぎ込みもしなくなるもんね!」


掲載日:2015年8月17日

 

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