「X≠X Y」
――女子寮:工藤忍の部屋――
北条加蓮「シャワーいただきました、っと」 工藤忍「晩ご飯どうするの? アタシは買ってきたのあるけど」 加蓮「2人分」 忍「ない」 加蓮「だよね。いいよ、後でまた買いに行くから」 忍「シャワー浴びて来たのに? またベタベタになるのに」 加蓮「そしたらまた借りる」 忍「……あのね加蓮。アタシの部屋は休憩所じゃないし、避暑する為の場所でもないんだけど」 加蓮「まーまーそう言わないでさー。ほら、いつもレッスンを見てあげてるでしょ?」ユサユサ 忍「…………」ジトー 加蓮「ふふっ。最近はどう? またビジュアルレッスンをよくやってるって、忍のプロデューサーさんが言ってたけど」 忍「うん。今度は可愛く見せるだけじゃなくて、かっこ良く見せることもやりたくて。激しめのダンスばっかりやってたからかな」 加蓮「忍には力強さがあるよね。表情作り、教えてあげよっか」 忍「お願いします、加蓮プロデューサー♪」 加蓮「ふふっ」 忍「……でも加蓮の表情作りかー…………」 加蓮「え、なんで微妙そうな顔すんの」 忍「柚ちゃんが言ってたよ。また加蓮にいじわるされたって」 加蓮「意地悪したくなる柚が悪い」 忍「なにそれ……。でもアイドルの時はすごい真剣そうだから、ホント加蓮って……いいや、なんでもないよ」 加蓮「別に無理しなくていいのに。アンタのことなんか嫌いだ、って」 忍「そこまでじゃないよ。加蓮のことはよく分からないってだけで。加蓮、色んな顔を持ちすぎなんだよ」 加蓮「忍は難しいことを言うんだね。私は私、でしょ?」 忍「……ハァ。いいや。そういえば柚ちゃんがおかしなこと言ってたよ。加蓮が……なんだったかなぁ」 加蓮「私が?」 忍「ええと……難しい顔してた、あと楽しそうな顔してた、って。何のこと?」 加蓮「…………ごめん、さすがに分かんないわ」 忍「まあ柚ちゃんがヘンなこと言うのは今に始まった話じゃないから、気にしなくていいよ」 加蓮「い、意外と忍も言うんだね」 忍「柚ちゃんも、加蓮も、アタシの周りには分からない人だらけ。いいんだけどね、見てて面白いから♪」 忍「でもいきなり避暑代わりに来られたら、色々と困るかな……。アタシ、明日も朝早いんだよね」 加蓮「鍵なら閉めて事務所に届けとくよ」 忍「……泊まる気なんだ」 加蓮「たまには女子会をしよう♪」 忍「はーい。あ、そうだ、アタシご飯食べるね。何かあったかな……」ゴソゴソ 忍「……カップラーメンでいい?」 加蓮「ありがと」 忍「ちょっと待っててね。ヤカン、どこに置いたかな……」ゴソゴソ 加蓮「柚って言えばさ」 忍「んー? あ、ヤカン見つけた」 加蓮「あの子さ……何かあった? もしくは前にも同じことがあったか」 忍「よいしょ、っと……」ジャー 忍「何かヘンだった?」 加蓮「変というか……何かを気にしてるような……。ほら、ちょっと前にフリルドスクエアのLIVEがあったじゃん。私、たまたま通りかかって柚と話したんだけど」 忍「言ってたね、加蓮が来てるって。すごく楽しそうに」 加蓮「その後に……なんていうか、なーんかひっかかったのよね」 忍「ふうん。……加蓮、カップラーメンの麺のカケラを食べようとしないで。そんなにお腹減ってるの?」 加蓮「え、やらない?」 忍「しない」 加蓮「うっそ。美味しいじゃん、このカリカリっていうの。ほら、ほら」スッ 忍「やだよ……。柚ちゃんって言えば、アタシも気になることが1つあるんだ」 加蓮「んー」 忍「あ、お湯湧いた。よっと……」ジョボボボボ 忍「はい加蓮。3分待ってね。……3分待ってね?」 加蓮「なんで繰り返したの今」 忍「加蓮のことだから、お腹すいたーとか言って1分くらいで食べそうな気がして」 加蓮「なぜバレた」 忍「ちょっと前にやったボーカルレッスンの時の話なんだけどさ……ほら、加蓮が営業ってことでどこかに行ってた時の」 加蓮「うん」 忍「なんていうか……ちょっと必死そうだった? っていうかさ。そうだ、アタシがレッスンもうちょっとやりたいって言った時、続けて手を挙げたんだよ。アタシもアタシも! って。柚ちゃんがだよ?」 加蓮「それは変だね。何を拾い食いしたんだか」 忍「柚ちゃんだからあり得そうだね……」 加蓮「……ん、もう大丈夫かな。いただきまーす」パチッ 忍「アタシも、いただきます」パチッ 加蓮「待たなくてよかったのに。忍は相変わらず生真面目だね」 忍「…………」モグモグチラッ 忍「加蓮から見たら、だいたいの人が真面目になっちゃんじゃない?」 加蓮「言える」アハハ 加蓮「なんか大きめのLIVEとかあったっけ? それか、実はCDデビューの話が進んでるとか」 忍「どっちも聞いてないよ。柚ちゃんだから、何かあったら我慢しきれず話すだろうし」 加蓮「ふうん。じゃプロデューサーさんから何か言われたのかな」 忍「別に必死にならなくても、柚ちゃんはもう十分だと思うんだけどな……」モグモグ 忍「新しい振り付けも、歌も、すぐマスターするから……あっ、待って、今の無し!」 忍「柚ちゃんも柚ちゃんなりに努力してるもんね。アタシももっともっと頑張らなきゃ」 加蓮「……やっぱさ」 忍「…………?」モグモグ 加蓮「アンタ、私と合わないわ」 忍「今更でしょ」 加蓮「あむっ……あつっ。あんまり食べたことない味だ……おいし」 忍「……その辺のスーパーで売ってるのだよ?」 加蓮「私にとっては珍しいの。うんっ、麺が美味しい。次に見たら買っとこー……って、お母さんにバレたら没収されるし、事務所に置いておこーっと」 加蓮「柚さ、穂乃香ちゃんとかあずきちゃんと何かあったって可能性は?」 忍「ないと思うけど……。あずきちゃんって言えば、この前の水着はすごかったなぁ」 加蓮「あれすごかったよねー。15歳にあんなの着せていいの? 色々と」 忍「あははっ、アタシも思う!」 加蓮「ねー」 忍「もぐもぐ…………え? 何? 卵焼きが欲しいの?」 加蓮「あーん」 忍「はいはい……」スッ 加蓮「んぐっ。ふふっ、ありがと」 忍「……ま、柚ちゃんも何かあったら誰かに話すでしょ。アタシが難しいならPさんにとか」 加蓮「そうでもないかもよー? ああいう子に限って溜め込んだりしててさ」 忍「じゃあ加蓮が聞いてみてよ」 加蓮「忍は気にならないの?」 忍「……気にはなるけど、アタシ、そういうの向いてないから。加蓮が駄目なら、Pさんかあずきちゃんに任せるよ」 忍「もちろん柚ちゃんから相談されたら、ちゃんと聞くけど……」モグモグ 加蓮「やる前から諦めるなんて忍らしくない」 忍「……………………」モグモ... 加蓮「ヤバ。待って今のナシ、今のナシだから! ホント待って、私の一言でグループが瓦解するとかホントに嫌だからね!」 忍「加蓮、それはアタシ達をナメすぎだよ? アタシと柚ちゃんが今までどれだけ喧嘩してきたと思う?」 加蓮「……あ、そっか。私も藍子と喧嘩ばっかりするけど、それだけで解散したりとか絶対にあり得ないし」 忍「そゆこと。ん、ごちそうさまでした」 加蓮「ずず……汁も美味しいっ」 忍「明後日にレッスンがあるから、ちょっと聞いてみるよ。大丈夫、柚ちゃん相手に悪役になるのは慣れてるから♪」 加蓮「……悪役なら、もっと向いてるのがここにいるよ?」 忍「ここでお願いしたら、後で藍子ちゃんに怒られそうだし……」 加蓮「……ああ」 忍「大丈夫。ユニットの問題は、ユニットで解決するから」 加蓮「そっか。頑張ってね、忍」 加蓮「ずず……っと。ごちそうさまでした」パン 忍「お粗末さま♪」 |
掲載日:2015年8月13日