「お仕事インタレスティング」





――事務所――
男性P(加蓮担当)「とりあえず加蓮ならいけそうなオーディションはその辺だな。これがやりたいっていうのはあるか?」
北条加蓮「んー……ピンと来るのは無いかも。ね、Pさんが決めてよ」
男性P「俺が?」
加蓮「うん。ほら、私ならすっごい話題になりそうなヤツ」
男性P「か、簡単に言うんだなお前……」
加蓮「この辺とかこの辺とか、あんまりやったことない仕事だよね。ねねっ、この辺だったらどれがいいかな?」
男性P「俺としては……今の加蓮なら、この辺かこの辺が狙い所だと思ってるが」
加蓮「えー、これ長期ロケがいるヤツじゃん」
男性P「ああそうか……加蓮の体力じゃキツイな。なら――」
加蓮「体力って意味じゃなくてっ。もう、だから体力はもう大丈夫なんだってば」
男性P「そういうのは耐久レッスン入門編がクリアできるようになってから言えな?」
加蓮「……べ、別にあんなのできなくてもアイドルなれるし」
男性P「へーへー」
加蓮「今は短いスパンでお仕事がやりたいって言うか、いろいろ試してみたいかな。……そういうの、ある?」
男性P「短期で終わる仕事っつったらこの辺か、それかこの辺もだな」
加蓮「じゃあこれ!」
男性P「ん? 決まったのか」
加蓮「うん。これがいいな」
男性P「なるほど……じゃあこっちから応募しとくから、オーディションは……予定じゃ6日後だな。整えといてくれ」
加蓮「はーい」

喜多見柚「…………」ジー
女性P(柚担当)「ん? 柚ー?」
柚「ひゅっ! べべべ別に加蓮サンのことなんてこれっぽっちも見てないよよよよよ!」
女性P「私まだなーんにも言ってないけどなー。気になるの?」
柚「……ちょっとだけ」
女性P「まあ今はやることもないし、好きなだけ見ていなさいな。何か学べるものもあるかもしれないわよ」
柚「はーいっ。…………うずうず……うずうず……」
女性P「……あちゃー、これ、同じ部屋にしたの失敗だったかな」
柚「へ?」
女性P「いや、甘えて来たいけど加蓮ちゃんがいるからやめたとかかなぁ、なんて」
柚「ちっ、違うよ! 違うもん! Pサンのばか!」
女性P「ほー、小娘が生意気なこと言うねー」
柚「ばかー!」
女性P「あほー!」
柚「…………そうじゃないもんっ。お仕事モードの加蓮サン、かっこいいなーって思っただけっ」
女性P「そうだね。相変わらずアイツを振り回してる感じはするけど……オーラがあるわね」
柚「オーラ!」
女性P「アイドル特有のね。大丈夫大丈夫、柚にもあるわよ。加蓮ちゃんとはちょっと違うかもしれないけど」
柚「やたっ」

男性P「あとは定例のだけど……ん? 加蓮、どうした?」
加蓮「ん、別に……」
男性P「まさか体調――」
加蓮「しつこいっ。定例LIVEのことだよね」
男性P「ああ。まあ、伝達事項も別にないのだが……そうそう。定例と言えば、レギュラーでやらせてもらってるあの番組」
加蓮「どれ?」
男性P「ほら、『アイドルまったりカメラ』。ゆるやかーにやってるヤツだ」
加蓮「ああ、あのゆるやかーにやってるアレ。アレいつになったら藍子をゲストに呼ぶの?」
男性P「番組スタッフの目標は「高森藍子を呼ばずにどこまでやれるか」らしい」
加蓮「……すごい人もいるんだね」
男性P「だな。あそこが新しい企画を立ち上げるって言ってな。それに加蓮はどうかって打診があったんだ」
加蓮「へえ。どんなの?」
男性P「なんとも旅行企画らしい。地方の名所を回ってみるとか」
加蓮「! それ、私がやらせてもらえるの!?」
男性P「おおう、急にどうした」
加蓮「やりたい! それやらせてPさん!」
男性P「わ、分かった。じゃあこっちからも売り込んでおく。……ああ、お前、アレか。前に温泉に行った時にハマったか」
加蓮「それもあるけどそれだけじゃないよ。だって……ほら、また新しいところにいっぱいいけるなって思うと……」
加蓮「……あ! もうっ! そんなマジな顔で見ないでよ恥ずかしいなあ!」
男性P「はは。そっか。そうだな。おし、加蓮。新企画、俺たちで成功させるぞ!」
加蓮「ふふっ、気が早いよPさん。まずはPさんのプロデュースにかかっているんだから」

男性P「じゃ、俺は営業に行って来る」バタン
加蓮「行ってらっしゃーい。……旅番組かー。ふふっ……楽しみだなー、ふふっ」
柚「加蓮サン!」
加蓮「おわっと。あ、柚」
柚「あれっ? 加蓮サンなんだか顔がゆるってなってるっ。どしたの?」
加蓮「んーん、別に?」
柚「によによしてる!」
加蓮「ちょっと新しい仕事が入りそうで楽しみなんだ。そうだ、いつか柚もゲストに呼んじゃおっかな」
柚「やったっ。アタシも楽しみっ」
加蓮「柚は? 何してんの?」
柚「え!? え、ええと、ええと…………」チラッ
女性P「……?」
柚(Pサンたすけて!)
女性P「……??」
加蓮「うん? ミーティングでもやってたの?」
柚「え」
加蓮「ごめん、私も私の方で夢中になってて。あはは、これじゃPさんと柚のプロデューサーさんの仕事部屋を同じにした意味がないね」
柚「あ、そ、そうなんだ! ミーティングっ。柚もお仕事バリバリ頑張らないと!」
加蓮「あれ、柚にしては珍しい」
柚「アタシだって頑張る時には頑張る! Pさんのためにっ」
加蓮「プロデューサーさんのため?」
柚「うんっ。ちょっと苦手なことでも、がんばるんだ」
加蓮「へー……すごいね、柚は」
柚「褒められた!?」
加蓮「ん。まあ……その、さ。歌鈴といい柚といい、人の為に頑張る人ってすごいなーっていうか、私って私の為ばっかりに生きてるから……」
加蓮「……ごめん、忘れて」
柚「よく分かんないけど、加蓮サンは暗い話をどよーんってするの得意そうカナ?」
加蓮「根暗って意味で言ってるんじゃないと信じたいよ」
柚「でも今日は休憩タイムなんだっ。休憩休憩。加蓮サンも一緒にまったりしようよ!」
加蓮「アンタいつも休憩してない?」
柚「してない!」
加蓮「私も今日の予定は終わったし、じゃ、ゆっくりしよっか」
柚「うんっ。あ、何かおやつ持ってくるねっ。おやつおやつー」タタタ
加蓮「あ、柚ー、私は甘いのパ――駄目だあれ絶対聞いてない」ハァ

女性P「お疲れ、加蓮ちゃん」
加蓮「ん、お疲れ様です。柚は相変わらず元気だねー」
女性P「元気過ぎて困るくらいにねー。おねーさんついていくのでいっぱいだ。聞いてよ加蓮ちゃん、柚の奴、人が筋肉痛になるまでバドミントンやらせるのよー」
加蓮「ふふっ」
女性P「たまには代わってー」
加蓮「気が向いたらね」
女性P「柚ね、さっき加蓮ちゃんのことをじーって見てたのよ」
加蓮「私を? あれ、ミーティング中に?」
女性P「にひひひ……」
加蓮「……ああ、そう。そゆことか」
女性P「加蓮ちゃんに懐いてるのねー。不思議なんだけど、加蓮ちゃんって柚にいつ懐かれたの?」
加蓮「えーっと……柚と最初に話したのは…………もうずっと前じゃなかったかな。ここに来たばかり、ううん、制服の仕事をやった頃? 違う、もっと前からだったような気も……。少なくとも藍子と会うよりは前だった筈……だよ、うん、間違えなく」
女性P「思ってたより長い付き合いなのねー」
加蓮「不思議なことにね」

柚「ただいまーっ。ピョッキーとあんこもちがあった! あとオレンジジュース! 見て見て柚色だよ柚色! 柚子味じゃないケド」
加蓮「……柚。前にも言ったと思うけどさ、私、甘いの駄目なんだって」
柚「あれっそうだっけ? まま、たまにはピョッキーおひとつどうぞっ」ズイ
加蓮「わ」ムグ
加蓮「…………」シャクシャク
加蓮「……甘」
柚「へへっ♪」



掲載日:2015年8月12日

 

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