「旅路もまた旅という名前」





――某サービスエリア――

<バタン! タタタタタ...

北条加蓮「……具合が悪いならもっと早く言えばいいのに」
安部菜々「といっても高速道路ですからねぇ。止まりたい時に止まれる場所じゃありませんし」
高森藍子「それに、加蓮ちゃんの前じゃ言い難かったのでは……?」
加蓮「ばっかみたい」
藍子「でも、ちょうど……ん〜〜〜っ! 体も凝ってた頃ですし、私たちも休憩にしましょうっ」
菜々「事務所まであと1時間くらいですかね? ナナお土産を見てこなきゃっ」タタッ
加蓮「あ、菜々さん! ……もうっ。大人なんだか子供なんだか……」
藍子「私たちも、ちょっと歩いてみませんか?」
加蓮「ん」

――店内――
加蓮「へー……」
藍子「わぁ、いろんな場所のお菓子が……どれを買おうか迷っちゃうなぁ……♪ ……加蓮ちゃん?」
加蓮「あ、うん……。サービスエリアってこんな場所なんだ、って」
藍子「なんだかテーマパークみたいですよねっ」
加蓮「ラーメンに餃子にチャーハンに、あっ、こっちは冷麺なんて売ってる」
藍子「いい匂い……お、お腹が鳴っちゃいそうっ」
加蓮「ハンバーガーもあるんだ。うぅ、私までお腹が空いてきちゃった」
藍子「反対側には、お洒落なレストランもあるみたいですね」
加蓮「こっちはお土産コーナーだね。見て見て藍子。あっちの人、同じお土産をいっぱい積んでるっ」
藍子「きっと、ご近所さんに配るんですよ」
加蓮「同じものを買うかな〜? あっ、それだけ美味しいってことかな」
藍子「あっ、そのお菓子、試食ができるみたいですね」
加蓮「ん、藍子」ズイ
藍子「あ〜ん。……あはっ、甘くてふんわりしてて、でもなんだか食べたことがない味……!」
加蓮「見てよこれ。お土産ランキング1位だって。しかもここだけじゃなくてこの地方で」
藍子「ホントだっ。ポップが可愛いです……♪」
加蓮「こっちはここのサービスエリア限定品だって。限定品。買いたくなっちゃうじゃん」
藍子「お煎餅の試食がありますよ。どうですか、加蓮ちゃん♪」
加蓮「ん。あーん」パクッ
加蓮「……わ、辛い。ピリッと来たよ」
藍子「甘いお土産が多いみたいですけれど、こういう物もあるんですね」
加蓮「抹茶のお饅頭とかある。買って帰ろっかな」
藍子「私も、お父さんとお母さんに……あれっ? あれって、菜々さん?」
加蓮「ん? …………うわぁ」
菜々「よっ、ほっ、うぐぐ、か、体が思ったより疲れてて……! 崩れるぅ……!」グラグラ
藍子「菜々さん、大丈夫ですか? ちょっとだけ持ちますね」スッ
菜々「感謝ですよ藍子ちゃん!」グラッ
菜々「って、うわっ!」
加蓮「おっと」ヒョイ
加蓮「……そんなに買うなら一声かけてよ。見てて危なっかしいよ」
菜々「加蓮ちゃん! ううっ、事務所の皆さんをカウントしていたらついこんな量に……!」
加蓮「どうせ事務所には色んな人の色んなお土産があるんだから」
菜々「大人には社交辞令って物があるんですよ! ロケに行った時にはこうしてきちんとお土産を、」
藍子「大人…………?」
菜々「ハッ! え、ええっとぉ、ってPさんが言ってましたよっほらっPさん今ちょっと調子が悪いから!」
加蓮「はいはい。先に会計を済ませとく?」
藍子「車の中に運んでから、またゆっくり見て回りましょうっ」
菜々「そうですね!」

――某サービスエリア 外――
菜々「ああっ藍子ちゃん! 車、車が来てます!」
藍子「ひゃっ。あ、ごめんなさい……」ペコリ
加蓮「……公園とかならともかく、ここは車ばっかりが通るんだからね?」
藍子「はい……」シュン
加蓮「ん」ギュ
菜々「そこでさっと手を握れるあたり加蓮ちゃんは優し「そういうのはいちいち言わないの」
藍子「あっ、加蓮ちゃん菜々さん! こっちっ、ドッグランがあります!」
菜々「わんちゃんを遊ばせるところですねぇ。時間が時間なのでもう誰もいませんが」
加蓮「こういうところもあるんだ……。ふふっ、凛を連れてきたら喜びそう」
藍子「猫さんの場所はないのかな……」
菜々「きっとそのうちできますよ!」
加蓮「あっ、こっち遊歩道になってる。藍子、行ってみる?」
藍子「はいっ」
菜々「……な、ナナはちょっと疲れちゃったのでPさんの方を見てきますね!」
加蓮「はーい」

――遊歩道――
加蓮「……サービスエリアとかパーキングエリアって、ちょっと立ち寄るだけの場所かと思ってた」
藍子「こんなにたくさんあったら、1日を使っちゃいそうですね♪」
藍子「……あっ(小声)加蓮ちゃん加蓮ちゃん、ちょっとだけ右に寄ってくださいっ」
加蓮「ん? どしたの藍子――ああ、なるほど」
藍子「(小声)カップルさんの邪魔は、したくありませんから……」
加蓮「(小声)だね……」
藍子「…………」テクテク
加蓮「…………」テクテク
加蓮「私も、Pさんと一緒に歩けたらなぁ――」
藍子「…………」ウルウル
加蓮「……藍子が嫌だってことじゃなくてね? もう」ギュ
加蓮「ん、あそこ。鳥居があるよ」
藍子「ホント……。大きな神社が、近くにあるのでしょうか」
加蓮「あれって展望台とかにある双眼鏡かな。ほら、100円玉を入れるヤツ」
藍子「そうみたいですね」テクテク
藍子「……わぁ……!」
加蓮「……海が綺麗……」
藍子「きっと、これを見るための物ですよっ。……あう、小銭がないです」
加蓮「ごめん、私もさっき置いてきちゃった」
藍子「じゃあ、今日はこうして」
加蓮「ゆっくり見よっか」
藍子「…………」
加蓮「…………」
藍子「……海、綺麗ですね」
加蓮「ん……」
藍子「こうして、見たことのない景色を見て、綺麗だな、って思う度に」
藍子「アイドルになってよかったな、なんて思っちゃうんです」
藍子「……あはっ、ちょっと現金ですか?」
加蓮「いいんじゃない? ……私も、こうして色んな場所を見られる度に」
加蓮「色んな人に感謝したくなるな……。Pさんにも、藍子にもね」
藍子「……ふふっ」
加蓮「……もうっ」
藍子「…………」
加蓮「…………」
藍子「…………!」ブルッ
加蓮「寒い? はい、上着」ファサ
藍子「ち、ちょっとだけ……なんだか、急に冷えてきたような……?」
加蓮「雨が降るのかも。もうちょっと見ていたいけど、戻ろっか」
藍子「はいっ。あ、加蓮ちゃん! 写真、いいですか?」
加蓮「忘れてたんだ。忘れるくらい綺麗だったってことかな」
藍子「えへへ……。はい、その辺で――」
加蓮「どうせならさ。2人で映ろうよ。ほら、自撮りで」
藍子「そうですね! じゃあ、……もうっ、加蓮ちゃん、もっとくっついてくださいっ」グイッ
加蓮「わっ」
藍子「はい、チーズ!」パシャ!
加蓮「あ、ちょ、まだ私、表情作ってな――」
藍子「大丈夫ですよ。ほらっ、こんなに素敵な笑顔!」
加蓮「……もー」


――某サービスエリア 外――
加蓮「具合が悪いのにパンは食べるの……?」
P「良くなったら小腹が空いてな」
菜々「天気予報で雨が降るかもって言ってましたよ! Pさん、気をつけてくださいね!」
P「おう」
菜々「いざとなったらナナが――」
加蓮「菜々さんが?」
菜々「なんでもありませんでした!」
P「じゃ、帰るか」
加蓮「今日はもうすぐ寝たーい」
P「俺も疲れた……。反省会は明日にしよう」
菜々「ナナは帰って一杯――」
加蓮「……そこの有名アイドルさん。まだここ外なんだけど」
菜々「おおっと」

加蓮「……ん? 藍子、どしたの?」
藍子「あっ、加蓮ちゃん」パシャ
藍子「見て見て、これっ。かわいくて、つい撮っちゃいました♪」
加蓮「んー? …………ふふっ、なにこれ」
藍子「ここの店員さん、きっと素敵な方ですよっ」
加蓮「……また来たいね、ここ」
藍子「はい!」

20150812_41.jpg

『お買い物は楽しんでいただけましたか?
ゆっくり休憩していただけましたか?
どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ!
またのお越しを心より、お待ちしております。』

(2011年12月 三木サービスエリアにて撮影)


掲載日:2015年8月6日

 

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