「ドジっ娘巫女さん、ちょっと休憩中」
――事務所――
P「……あのな、菜々……誰がここまでやれと言った」 安部菜々「へ?」 道明寺歌鈴「……?」オチャオイシイ P「ずっと前から事務所の電話が鳴りっぱなしなんだよ! どこの書店でも写真集が瞬殺されたらしく、増版はまだかって!」 菜々「知りませんよそんなの! いや、やめてください、これ以上ナナの水着姿を世に出さないでください〜!」 P「つっても売れる時には売るってのがうちの方針だし、俺としても嬉しい悲鳴なんだけどな……」 歌鈴「あ、あのっ、私、先月はいっぱいLIVEをやらせてもらいました!」 菜々「先月の歌鈴ちゃんはすごかったですねー。ドキュメンタリーアニメに出るだけでここまでなるとは」 菜々「……いや、いやいや! だからって!」 P「ああ、言っとくけどもう手遅れだぞ。既に印刷所には連絡してあるし」 菜々「いっつも事後承諾ばっかりー! Pさんはナナをいじめたいんですか!」 P「コーヒーうめぇ、淹れてくれてありがとな歌鈴」 歌鈴「は、はいっ! 私、転ばずこぼさず淹れられました!」 P「おう。やったな」ズズ 菜々「人の話を聞けーっ!」 P「ふうっ……大の大人がギャーギャー騒いでたらみっともないぞ、菜々」 歌鈴「大人?」 菜々「ナナは17歳です! 17歳!」 P「17歳なら別に水着の写真集が出たところで問題ないだろ」 菜々「うぐ……」 P「ニヤニヤ」 歌鈴「えっと、それならもしかして……水着が恥ずかしかったとか? そ、それなら大丈夫です! いつも転んでばっかりでもっと恥ずかしい子もいますから!」 P「ドジっ娘を力説するんじゃない」 歌鈴「それに、私も水着のお仕事をやったことがあります、そっ、そっ、その時は……Pさんの前だったから、すっごく恥ずかしくて……っ!」 菜々「え? もしかしてPさんの目の前で着替えを!?」 歌鈴「はわ!?」 P「んな訳あるかい。最初から下に水着を着ていたぞ」 歌鈴「あはは……そっ、それでも恥ずかしくて、なかなか脱げなくてっ……菜々ちゃんの大胆さが羨ましいなぁ」 P「というよりヤケクソ」 菜々「悪かったですねぇ! あ〜〜〜、もうっ! ナナもファンからたくさんファンレターが来てますよ! とうとう水着になったとかへそを見せろだとか!」 歌鈴「おへそ?」 P「最後までずっと手で隠していたからな。いったい何のこだわりなんだか」 菜々「Pさんには分からないんですよナナの気持ちが!」 P「開き直りゃいいのになぁ……」 菜々「次のLIVEで絶対ネタにされるじゃないですか! も〜〜〜〜っ!」 P「ネタにされるなんて今さらじゃ……」 菜々「ネタキャラって言うなや!」 歌鈴「…………」ゴクゴク 歌鈴「はー……」 菜々「……なんだか今日の歌鈴ちゃんはのんびりしてますねぇ」 歌鈴「あっ、はい! ええと……のんびりしようとしたら、のんびりできるんですっ、私っ」 菜々「そ、そういうものなんですか」 P「……それはまあ、前からなんだろうが……歌鈴、最近はちょっとのんびりしすぎじゃないか?」 歌鈴「え……?」 菜々「そういえばついちょっと前までずっと出ずっぱりだったのに、急に見なくなったというか」 P「そりゃ同じグループの誰かさんが話題をかっさらっていったからな……」 菜々「おおっとこれは失言でしたか」 歌鈴「実は、そのー……あの、藍子ちゃんの誕生日LIVEが終わって、ちょっと燃え尽きちゃったといいますかー……」 P「ふむ」 菜々「すごいLIVEだったみたいですねぇ。ナナもDVDを予約しちゃいましたよ!」 P「加蓮も藍子もそうだけど、言ってくれりゃタダで渡すのになぁ……」 歌鈴「はわっ。わ、私けっこうミスっちゃったので……うう、あんまりしっかり見ないでくださいね!」 P「ミスなんてしてたか?」 歌鈴「あうぅ……やっぱり完璧には……でっ、でも! もうミスしたって、それをプラスにすることができますから! ……きっと!」 菜々「いいポジティブ思考ですね! ナナも見習わなくては!」 P「よし、水着の写真集についてもプラスに考えていこう」 菜々「それとこれとは別です!」 歌鈴「はわー……でも、あの時のLIVEは、すごく楽しかったなぁ……」 P「だろうな、見ているこっちもすごく楽しかったぞ」 歌鈴「Pさんが見ていてくれたから、きっと全力を出せたんですっ」 菜々「そういえば歌鈴ちゃん、アニメの収録で何回か噛んじゃってましたっけ」 歌鈴「……はぃ」 菜々「ああいえ別に責めてるとかでは!」 P「そうか……。じゃあ次の収録の時は、なんとか時間を見つけてついて行くか」 歌鈴「そ、それはそれで緊張してしまいそうな……」 P「どうしろと」 菜々「あの時は加蓮ちゃんが励ましてましたねぇ」 P「加蓮が? ……煽ってたとかじゃなくて?」 菜々「ええ、信じられないことに」 歌鈴「かっ、加蓮ちゃんはそんな人じゃ……そんな人かもしれませんけど、そんな人じゃないんです!」 P「おう……??」 歌鈴「あれはきっと、私の為に……それにっ、加蓮ちゃんがいたら、負けたくないって思っちゃうから……」 菜々「へええ……」 P「でもなんか歌鈴って、よく加蓮と喧嘩していないか?」 歌鈴「あっ、あれは加蓮ちゃんが悪いんですよ! Pさんと藍子ちゃんを盗っていくから!」 菜々「なるほど」 P「俺、いつの間に加蓮に盗まれてたんだ……?」 菜々「加蓮ちゃんは大変な物を盗んでいったんですよ! Pさんの心をね!」キャハッ P「…………あれって何年前のネタだっけ」 歌鈴「なんのお話ですか?」 菜々「やめてくださいよドヤ顔で言ったのがすごく恥ずかしいじゃないですかぁ!」 P「はっはっは」 菜々「うなーっ!」 歌鈴「だから私が加蓮ちゃんから取り返すんですっ!」 菜々「キャハッ☆ じゃあ次は、歌鈴ちゃんと加蓮ちゃんがLIVEバトルなんてどうですか! Pさん!」 P「面白そうだな。きっと話題になるぞ」 歌鈴「ぴ、Pさんが応援してくれるなら頑張れるかも……!」 P「分かった、全力で応援しよう!」 菜々「ナナも見に行っちゃいますよ! あわよくばそれで話題が逸れれば、」 P「ああ、でも菜々の写真集はこれからもっとプロモーションしていくぞ」 菜々「ギャー!」 P「むしろ歌鈴と加蓮のLIVEに来た人向けに限定版を刷って売るとか。加蓮とユニット仲間ってことで」 菜々「なんてことを!」 歌鈴「そっ、そうしたら菜々ちゃんにもっていかれちゃいそう……ううっ、頑張らなきゃ!」 菜々「……もう! そっとしておいてくださいよせめて!」 P「アイドルが何を言ってるんだか……」 歌鈴「でっ、でもお仕事をした後にうまくいかなくて、忘れてほしいってなることはありますね」 菜々「ですよね! ですよね!」 P「お前らはネガティブなのかポジティブなのかよく分からんぞ……」 菜々「ではナナはレッスンに行ってきますね!」 P「おう、俺はその間に売り込みの計画だ」 菜々「どうせなら次の仕事の営業をー!」 歌鈴「が、頑張ってくだしゃ……さいね! 菜々ちゃん!」 菜々「がってんしょうちですよ!」バタン P「はー……あいつは相変わらず元気だなぁ」 歌鈴「菜々ちゃんの写真集、ホントにすごい人気なんですね……お店に行っても、もうどこも売り切れでした」 P「売れるとは思っていたけど、ここまでとは想定していなかったな。ホント、嬉しい悲鳴って奴だよ……歌鈴も、少し落ち着いたのは分かるけど、見習えよ?」 歌鈴「は、はいっ! 私もがんばらなきゃ! ええとっ、藍子ちゃんが帰って来るまで……の、のんびりしててもいいですか?」 P「ははっ……。レッスンに備えて休憩するのも、大切な仕事だもんな」 歌鈴「はいっ。……はふぅ」ズズ |
掲載日:2015年8月3日