「気随気儘なお姫様」





――事務所――
安部菜々「おはうっさみ〜ん♪」

高森藍子「あっ、おはようございます、菜々さん」(←肩を揉まれてる)
北条加蓮「おはよー、菜々さん。今日も元気だね」(←肩を揉んでいる)

菜々「…………???」ハテ?
菜々「ああ、罰ゲームですか」
加蓮「よし、藍子。菜々さんのアルバムをネットに公開」
藍子「はいっ」
菜々「ストォーップ! 冗談、冗談ですからね! いや、っていうか誰でもそう思いますよ絶対!」
加蓮「気持ちは分かるけど、聞いてよ菜々さん」
藍子「加蓮ちゃん、今日が久々のオフの日なんです」
菜々「そういえばずっと働き詰めでしたねえ。夏休みに入ったからってあんなにスケジュールをつめ込まなくてもいいでしょうに」
加蓮「菜々さんのスケジュールは変化なしだよね。夏休みになった筈なのに」
菜々「あーあーナナには何のことやらさっぱり。それで、加蓮ちゃんがオフの日で?」
藍子「久しぶりのお休みだから、やりたいことをやるんだって」
菜々「その結果が肩もみですか」
加蓮「藍子がさ、やりたいことがあるなら何だって付き合うって言うから、じゃあ藍子と何かしたいじゃん」
藍子「最初に思いついたのが、私の肩を揉ませて欲しいっていうことだったんです」
菜々「なるほど。ナナにはさっぱりです!」
加蓮「ふうっと。藍子、これくらいでいい?」
藍子「はいっ。わ、肩がすっごく軽い……! ありがとうございます、加蓮ちゃん!」
加蓮「ふふっ。今度、私が疲れてる時には私にマッサージをしてね」
藍子「もちろんですっ」
菜々「なるほど、それが目当てでしたか」
加蓮「よし、藍子。菜々さんの私物をネットに公開」
藍子「はいっ」
菜々「ストォーップ! ってどうせ自覚してるんですよね加蓮ちゃん!」
加蓮「自分で思うことと人に言われることじゃぜんぜん違うよ」
菜々「ふーっ、ふーっ……」
加蓮「疲れてるならマッサージ室に行ったら?」
菜々「誰が疲れさせてると……! ナナの肩は揉んでくれないんですか!?」
加蓮「1時間くらいかかりそうだからヤダ」
菜々「30分で済みますからーっ!」
藍子「あ、あの……私、5分でおわっちゃいました」
菜々「…………」
加蓮「…………」
藍子「ご、ごめんなさい」
菜々「…………」
加蓮「こっち見ないで」

加蓮「あ、そうだ。駅前にアイスクリーム屋ができたって言ってたっけ」
藍子「はいっ、お散歩がてら行ってみましょう!」
菜々「あ、ナナもついていきますよ!」

――駅前――
加蓮「おいし〜! やっぱりスッキリしたい時はミント味だよね♪」
菜々「ミント味、アイス……うっ、頭が……ナナは断然ストロベリー派ですね!」
加蓮「……事務所でそれ言ったら大変なことになるからやめてあげてね、主に柚が」
菜々「が、がってんしょうちです」
藍子「はふ……♪ 暑い日はアイスですね」
加蓮「クーラーがかかった部屋でも美味しいよ」
菜々「たまには太陽の下に出てこそ夏ですねぇ!」
菜々「…………」
菜々「あつい」
加蓮「ふふっ、変なの。あ、そうだ! 今日はジャンクフードを食べようって決めてたんだ!」
藍子「駅の中にありましたっけ。……あるみたいです!」
加蓮「駅なら涼しいよね。ほらほらっ行こ!」
菜々「わーっ、まだアイス食べ終わってないんですけど〜〜〜!」

――駅中のジャンクフード――
加蓮「ポテトっポテトっ」
藍子「いつ来ても、人が目まぐるしく動いていてちょっと酔いそうです……」
菜々「これぞ都会! って感じですね。ナナはチーズバーガーで!」
加蓮「はーい。チーズバーガーとポテトLサイズ。藍子は?」
藍子「私は……あんまりお腹がすいていないので、ポテト、ちょっとだけもらってもいいですか? それだけでいいです」
加蓮「仕方ないなぁ。うん、以上で」
藍子「これだけ人がいるのに、レジにぜんぜん人が並んでない……」
菜々「ジャンクフードは回転率が重要ですからね。ゆっくりしたい時は是非ともナナのメイドカフェへどうぞ!」
加蓮「ちゃっかりしてるねー。あっ、もう来た。ありがとー♪」
菜々「あれ? 持ち帰りですか」
加蓮「食べ歩きってやってみたかったんだ。はい藍子。あーん」
藍子「あーん……あはっ、美味しいです!」
菜々「ナナも一口!」
加蓮「しょうがないなぁ」スッ
菜々「〜〜〜! 塩がすごく効いてますね。パリっとしてますし、さては揚げたてですかね?」
加蓮「運が良かったね」
藍子「食べ歩きはちょっと……行儀が悪いような」
加蓮「えー、これくらい普通だよ」
菜々「じゃ、事務所に戻りますか!」

――事務所(手は洗いました)――
加蓮「思い出した。昨日に寝る前に、急に昔のゲームがやりたくなったんだよね。探してみたんだけどうちになくて。ここならあるかな?」
藍子「ちょっと探してみますね……タイトルは?」
加蓮「――ってヤツ。確か機種は――だからこの辺に」
藍子「あっ、ありました!」
加蓮「これこれ。本体は、っと。よし、やろやろ♪ ……つかない」
菜々「昔のゲーム機あるあるですねえ。端子をふぅーっとすると点くって最初に思いついたの誰なんでしょ」
加蓮「あれってネットニュースでデマどころかカセットに悪いって言われてなかった?」
菜々「そうなんですか!? でも絶対にあれ効果ありますよ! 何回もやりましたし!」
加蓮「うーん……でも菜々さんの気持ちも分かるな。駄目だって言われても、そんなことないよって思うよね」
菜々「ですよね! ですよね!」
藍子「……あ、あの、菜々さん」
菜々「ん? どうかしましたか藍子ちゃん」
藍子「このカセット、確か、私が生まれるより前のゲームじゃありませんでしたっけ……?」
菜々「あ」
加蓮「…………あー」
菜々「か、加蓮ちゃんだって同意してくれましたし!」
加蓮「いや、その、私はお父さんが昔やってたからって譲ってもらって……」
菜々「…………」
藍子「…………」
菜々「……み、見つかったんだからやりましょう! 加蓮ちゃんこれをやりたかったんですよね!」
加蓮「そ、そうだね、うん……」

加蓮「昔やったゲームも、今やれば簡単に思えちゃうなぁ……」
藍子「加蓮ちゃん、さくさく進めちゃってますっ」
菜々「あーありますよねそういうの。20年前に感動したゲームも今は何も思わなかったり」
加蓮「20年前」
菜々「12年前の間違いでしたぁ!」
藍子「私は逆に、昔に読んだ絵本が今になって感動しちゃったり……」
加蓮「藍子らしいなぁ。……あれ、これって左だっけ右だっけ」
菜々「そこは右ですね! 次の暗号もナナ覚えてますよ! もうそのゲームなんて何度やったことか!」
加蓮「ありがと。でもちょっとだけ悩ませてね」
菜々「おおっとこれはナナとしたことが。ネタバレ厳禁ですね! しーっ」
藍子「しーっ、ですねっ」

加蓮「……ふぅ。うん、もういいや」
藍子「気づいたら5時になっちゃってますっ」
加蓮「ごめん、今日は家族で外食するんだ。久々の休みだからって……何が嬉しいんだか」
菜々「ニヤニヤしながら言われても」
藍子「それで、加蓮ちゃん。今日はどうでしたか? いっぱい、楽しめましたか?」
加蓮「んー……んー…………あのさ」
藍子「はいっ」
加蓮「……なんか、これ何が違うの? って1日だった」
藍子「あれ!?」
菜々「ああ、ナナも同じ感想ですねぇ……」
加蓮「いやほら、私って割と普段からやりたいようにやっているっていうか」
菜々「それでですかね……。まあ、加蓮ちゃんらしいってことで!」
藍子「私、加蓮ちゃんに振り回されるの、けっこう好きですっ」
加蓮「もー、なにそれ。私も藍子も変なのっ」


掲載日:2015年7月31日

 

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