「ホワイトドロップならぬ……いい言葉が思いつかなかった」





――事務所――
北条加蓮「おは――」
喜多見柚「いやっほーぅ! プール!」ドバーン
加蓮「」バシャツ
柚「」
加蓮「…………」ゴゴゴゴゴ....
柚「……忍チャンがプールやろうって言い出しました」

ごんっ!

柚「〜〜〜〜〜!」
加蓮「なんで事務所の、それもPさん達が仕事する場所にビニールプール出してんのアンタ……」
柚「〜〜〜〜〜!」
加蓮「……にしてもここ暑いなぁ……クーラーきいてんの?」
柚「はっ!」ガバッ!
柚「そうなんだよひどいんだよ聞いてよ加蓮サン!」グイグイ
加蓮「な、なに?」
柚「Pサンがクーラーの温度を上げるって! 見てよこれ29度! 28度ですらなくて29度! プロダクションにはアイドルをいたわるって気持ちはないのかー!」
加蓮「……で、Pさんもしくは柚のプロデューサーは?」
柚「ぎゃっ、加蓮サンが猟師さんみたいな目に!」
加蓮「プロデューサーは?」
柚「し、しらない、柚しらないよ!」
加蓮「そ……。で、プールってこと」
柚「引っ張りだしてみた! あんまりホコリがついてなかったけど誰か使ったのかな?」
加蓮「屋上とかスペース広いから、たまに使ってるって誰かが言ってたけどね」
柚「加蓮サンもプール一緒にどう!?」
加蓮「ごめん。私、それなりに恥を知ってるから」
柚「そっか! じゃあ柚、ぷかーってしてるね! なにかおもしろい話して!」プカー
加蓮「じゃあ今私の目の前にいるのがアホの子だって話」
柚「えっと、加蓮サンの前にいるのは……アタシ!?」
加蓮「うん。柚」
柚「柚はアホ子じゃないよぅ!? ……じいって見てもアホの子じゃないもんっ! やめてっ」

工藤忍「こんにちは〜……うわっ、暑っ!」

柚「あ、忍チャン!」バシャッ
加蓮「馬鹿、その状態で歩いたら床がびしょびしょになるでしょ! ってプールの周りもひどいことなってるし……」
忍「…………え? 部屋の中にプール? 柚ちゃん水着?」
柚「クーラーがPさんのケチになったからプール出してみた!」
忍「??」
加蓮「設定温度を上げられて暑くなったからプール出したんだって」
忍「は、はあ……さすが柚ちゃん? だね?」
柚「やったー忍チャンに褒められたー!」プカー
加蓮「……褒めた?」
忍「褒めてない」
柚「ね、ね、忍チャンも一緒にプール、どうカナっ!?」
忍「え……やだよ。それにアタシ、水着持ってないし」
加蓮「……そういえば忍って水着の仕事やったことないよね。夏にやったLIVEもいつもっぽい衣装だったんだっけ」
忍「う、うん。そういえばやっていないけど――」
柚「忍チャンの水着、見たことない!」
加蓮「アイドルをやってるんだったら、当然、可愛い水着の1つや2つは着こなさないとね?」
忍「うぐ……そういえばアタシ、Pさんからそういう仕事があるって話も聞いたことないよ!?」
加蓮「可愛くなる努力、してるんでしょ?」
柚「こっそり特訓してPサンを見返そう大作戦! あっ、これあずきちゃんのパクリだ」
加蓮「水着なら事務所の衣装部屋にあるんじゃないの? 洗濯して返せば大丈夫でしょ」
柚「いまのうちっいまのうちっ♪」
忍「……そうだね! アタシ、ちょっと着替えてくる!」ダッバタン
柚「いてら〜」
加蓮「……」
柚「……」
加蓮「……」
柚「(・ω<)」
加蓮「なんか……忍って、からかっても面白くないんだよね……」ハァ
柚「へ? そうなの? 加蓮サンのことだからてっきり、ふはははー、簡単に騙されおってー! みたいなこと思ってるのかと思った!」
加蓮「私ってつくづく悪役なのね」
柚「ねえねえお嬢ちゃん、イイコトするから一緒に来ない? って言ってそう!」
加蓮「…………そのセリフはどこから仕入れたの?」
柚「アタシのPサンから! こういうこと言う男の人にはついてっちゃ駄目だって何度も言われたよ!」
加蓮「そう……。ねえ柚。ピョッキーあるんだけどちょっと休憩室まで来ない?」
柚「ピョッキー!? 行く行くっ!」ビシャッ
加蓮「……。ねえ、柚。こういうのに釣られるなって、柚のプロデューサーさんは言ったんじゃないのかな」
柚「はっ! お、おのれ加蓮サン。アタシをからかってもそんなの意味ないよっ意味ない」
加蓮「夏限定のメロン味ピョッキーもあるんだけど」
柚「なにそれ柚知らない!?」ビシャッ
加蓮「効果あるじゃん」
柚「はっ! ま、また柚をダマしたんだ加蓮サン! むーっ! もう加蓮サンの言うことなんて信じないよ!」
加蓮「ふうん。そういえば前にあずきちゃんが、柚とまたカラオケに行きたいって言ってたなぁ」
柚「ホントホント!? じゃあっ次のオフは土曜日だから――ってー! どうせそれも嘘なんだよね!?」
加蓮「…………ふふふ」ニコッ
柚「どっちか分かんないー! 加蓮サンのイジワルー!」

<ガサゴソ...

加蓮「……ん、忍、帰ってきた?」
柚「忍チャンの水着だ!」
加蓮「…………」
柚「…………アレ?」

<あ、あの、ええとアタシ

柚「せーのっで忍チャンを呼ぼう加蓮サン! せーのっ」
柚「忍チャーン!」加蓮「忍ー?」

<…………

<ガチャ...

忍「………………」モジモジ
柚「おおーっ!」
加蓮「ピンクのパレオ……へえ、すっごい可愛いじゃん!」
忍「ほ、ほんと……? アタシ、その、こういうの着たことないから……じゃなくて! こ、これしかなくて、アタシに合うサイズの水着!」
柚「カワイイカワイイ! 柚と一緒にグラビアやっちゃおう!」
忍「む、無理っ、これアタシには難易度が高すぎだって……!」
加蓮「女は度胸、だよ。なんだったら私もついていってあげるから」
忍「加蓮と並ばれると違う意味で無理だって! ……アタシやっぱり着替えてくるっ!」
柚「こらーっ、逃げるな忍チャン!」バチャッペタペタ
加蓮「あっ」
忍「ひゃっ、ゆ、柚ちゃん!?」
柚「忍チャンも一緒にプールに入るのだー!」
忍「い、いいよアタシは! ……加蓮! ニヤニヤしてないで助けて!」
加蓮「こうなったら私もプール入ろっかなぁ。水着、まだあった?」
柚「3人集まればナントカ!」
忍「待って、待って柚ちゃん! ちょっと水着が取れ――」

<ガチャ

柚忍P(女性。以下「P」)「おはよー。今日は――」

柚「あ」
忍「あ」
加蓮「……あーあ」
P「……………………なにこれ? 何してんの?」
柚「……」
忍「……」
加蓮「……」
P「柚も忍も水着で……え、プール? 事務所よねここ? ……うわっ何これ!? カーペットがベチャベチャ!?」
加蓮「柚がやりました」
柚「忍チャンがやりました」
忍「えっ、えっ、……アタシやってないよ!?」
柚「えー、そこは空気を読んで加蓮サンがやったって言うとこだよー」
忍「そういう流れだったのこれ!?」
P「………………あんたら、ちょっといいかしら?」ゴゴゴゴゴ....
柚「あっ」
忍「あっ」
加蓮「うわぁ」
P「……せっかく柚がかわいそうだから上司にかけあってクーラーの温度を下げてもらえるようになったけど、おねーさん無駄なことしちゃったみたいね」
柚「ギャー! ぴ、Pさん、クーラーサンを、クーラーサンを!」
P「びしゃ濡れでしがみつくなっ!」ゴンッ
柚「あいたあ!」
加蓮「……ま、柚だからこうなるよね」
P「加蓮ちゃんも! 柚がこういうことしないように、私と加蓮ちゃんとこのと同じ部屋にしたつもりなんだけど!」
加蓮「え、いやそれ聞いてない」
P「それと私、加蓮ちゃんとこのから、加蓮ちゃんが暴走しないようにってきつく言われてるのよね」
加蓮「何もしてないんだけど私!?」
忍「……えと、アタシ着替えてくるねっ」
P「ああ、忍は今度、水着のグラビアの仕事ね」
忍「」
P「全員着替えて――後片付けしなさあああああああああああああい!」
柚「ごめんなさーい!」
忍「」
加蓮「とばっちりー!」


掲載日:2015年7月29日

 

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