「ぱらりぱらりと時間つぶし」





――事務所の休憩室――
北条加蓮「…………」パラッ
安部菜々「うっさみーん♪ あら、加蓮ちゃん、ここにいたんですね」
加蓮「ん……何か用?」
菜々「いえいえ。読書ですか――あれっ、メガネ? 加蓮ちゃんって目が悪かったりしましたっけ」
加蓮「伊達だよ。これをつけてると集中力が上がる気がして……宿題の時とか勉強の時とかね」
菜々「ふむふむ。すっごくお似合いですよ! そういうモデルの仕事とかもいいんじゃないですか!」
加蓮「そうかな……」
菜々「だったらいろいろなメガネを試さないといけませんねぇ。確か事務所にも――」
加蓮「あ、馬鹿、そういうこと言ったらまた、」

<シュタッ マアマアメガネドウゾ!

加蓮「!?」
菜々「加蓮ちゃんのメガネが一瞬にして入れ替わった……!?」
加蓮「……妖怪の仕業だね。そういうことにしとこ」パラッ
菜々「深い青色が加蓮ちゃんによく似あってますねぇ。イメージカラーって感じですよ!」
加蓮「せっかくアイドルになったし、いろいろ試してみたいけどね」パラッ
菜々「ところで何を読んでるんですか? 加蓮ちゃんが雑誌以外なんて珍しい」
加蓮「ちょっと読みたくなっただけだよ。たまにね、そういうことがあるんだ」パラッ
菜々「ふむふむ」
加蓮「……入院時代は本当に暇だったからね。小学生のうちから漢検を取れる自信があったよ。やらなかったけど」
菜々「加蓮ちゃんの聡明な部分って、そういうところから来てるのかもしれませんねぇ」
加蓮「悪知恵が働くだけ」
菜々「ナナにも是非ともご教授を」
加蓮「何か言うまでに深呼吸すればいいんじゃない? 毎回。ウサミン星の呼吸法とかなんとか言って」
菜々「それ絶対、今以上にイロモノになりますよね!?」

高森藍子「こっちから加蓮ちゃんと菜々さんの声が……あっ、やっぱりおふたりともここにいたんですね!」

菜々「藍子ちゃん! うっさみーん♪」
藍子「うっさみーん♪ 加蓮ちゃんも!」
加蓮「藍子はいつウサミン星の住人になったの?」
藍子「えへへ。菜々さん、これ、頼まれていた物です♪」
菜々「お、やっときましたね! 加蓮ちゃんと歌鈴ちゃんのLIVE映像! いやぁ見たかったんですよこれが!」
加蓮「……何が珍しいんだか」
菜々「って、今は再生できる物がないですね……これは家に帰ってじっくり見ることにしますね!」
加蓮「ウサミン星では果たして地球のDVDを再生できるのか」
菜々「……ち、地球のDVDをプレイヤーを持ち込んでますからね、文明の研究の為に」
加蓮「レポートでも読んでみたい物だね。藍子は? 今日はオフだっけ」
藍子「はいっ……あ、いえ、オフじゃないんですけれど、昨日、ちょっとレッスンをしすぎちゃって……Pさんに気を遣ってもらって、今日のお仕事を短めにしてくれたんです。ゆっくり休むようにって言われちゃって」
菜々「ほうほう。いやいや藍子ちゃん、無理はいけませんよ無理は。ナナも意地を張った分が2日後に来ていつも悶える羽目に――」
加蓮「……30代から40代になると筋肉痛は遅れてやってくる、ふむふむ」パラッ
菜々「ハッ! って加蓮ちゃんそれ別に医学書でもないですよね!?」
加蓮「ちっちゃい頃に好奇心で読んだから、それなりには説明できるよ。菜々さんが年を取った時にでも思い出してあげよう」
菜々「いやあ助かりますねえ、最近はどうも腰やら膝やら調子が悪――ナナも17歳です! 17歳! 同年代!」
加蓮「あははっ」
藍子「私もいつか、お世話になるのかな……?」
加蓮「……藍子より先に私が世話になりそうな気がしてならない」
菜々「加蓮ちゃんはアレですよね。年を取って、昔ほど元気いっぱいにできなくなったことに気づかないでぶっ倒れるタイプ」
加蓮「さぞ見てきたように言うのやめてよ。あと生々しいよ」
藍子「加蓮ちゃんもゆっくりやりましょう。あんまり急ぎすぎても、良くないですよ?」
加蓮「ん……藍子が言うなら、そうする……私も、たまにはこうして本をぱらぱらめくるの、嫌いじゃないしさ」
藍子「読書、ですか? そういえば私、この前、すっごく面白い小説を見つけたんです!」
菜々「藍子ちゃんも本を読むタイプなんですねぇ。ナナはどうも活字が苦手で」
藍子「あっ、じゃあ、漫画の方をお貸ししましょうか? 未央ちゃんイチオシので、私もいっぱい笑っちゃいました♪」
菜々「いいですねぇ!」
藍子「今度、持ってきますね。加蓮ちゃんもどうですか?」
加蓮「んー……」パラッ
藍子「……あはは、今は気分じゃないみたいですね」
菜々「いや藍子ちゃん、あの反応は怒っていいところだとナナ思いますよ」
藍子「……? 加蓮ちゃんだって、漫画を読む気分の時と読まない気分の時って、あると思いますけど……」
菜々「いやそうではなく、あのテキトーな返事ですよテキトーな返事! しかも本を読みながら! コラ加蓮ちゃん! いくら藍子ちゃんがいい子だからってあんまりひどい態度を取ってると愛想もつかれちゃいますよ!」
加蓮「んー……」パラッ
菜々「コラー!」
藍子「菜々さん。加蓮ちゃんの邪魔をしちゃ駄目、ですよ?」
菜々「ナナが怒られる流れ!?」
加蓮「……ああごめん、話あんまり聞いてなかった……ほとんど暇つぶしでやってたけど、いざやってみるとハマるもんだね、読書って」
藍子「あっ、分かります。ちょっと時間が余ってて図書館にいったら、ついお仕事に遅刻しそうになったり……」アハハ
菜々「2人ともすごい集中力ですねぇ」
加蓮「レッスンに夢中になって三十代の仲間入りをする菜々さんには敵わないよ」
菜々「どーいう例えですかそれ!?」
藍子「他にも、ちょっと見つけたカフェのメニュー表を見ていたら、1時間が経っちゃってたり」
菜々「ナナ少しばかり藍子ちゃんのことが心配になってきたんですけど」
藍子「えっ? こういうのってよくあることじゃないんですか……!?」
加蓮「ない」
菜々「人類皆が藍子ちゃんみたいだったら、絶対、世界って平和になってますよね」
加蓮「地球が暇すぎてウサミン星に侵略を開始するかもね」
菜々「ナナの生まれ故郷になんてことを!?」
加蓮「藍子は自覚がないんだよ。自分の危うさっていうか、もっとぶっちゃけると周りからどういう目で見られてるか」
藍子「……??」
加蓮「そんでもって藍子の周りには藍子に頼る子ばっかりと来てるから、いざって時を想像すると本気で不安になるんだよね」
菜々「あー……って、それってナナも含まれてます?」
加蓮「筆頭」
菜々「これでもナナにじ――あ、危ない危ない」
加蓮「私も人のことは言えないけどね……」
菜々「いっそのことPさんに見てもらうというのは」
加蓮「それは私が許さない」
菜々「加蓮ちゃんもたいがい面倒くさいですよねぇ……」
藍子「あ、あはは、ご迷惑をかけちゃってるみたいで」
加蓮「……」パタン
菜々「あれ、読書はもういいんですか」
加蓮「2人の話を聞いてたら飽きちゃった。ごめんね、テキトーにしちゃってて」
菜々「ま、加蓮ちゃんですからね」
藍子「あはっ。真っ直ぐみたら、メガネ姿の加蓮ちゃん、可愛いっ♪」
加蓮「ありがと」
藍子「ね、せっかくですから何かして遊びませんか?」
菜々「ナナ的には賛成ですね! 何をしますか?」
加蓮「ひとまず菜々さんにウサミン星についてのインタビューを」
菜々「う゛ぇ!?」
藍子「では私から……ウサミン星にはどんなカフェがあるんですかっ?」
菜々「藍子ちゃんん!? しかもどんだけカフェ好きなんですかねぇ!?」


掲載日:2015年7月27日

 

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