「定点観測」





――事務所――
喜多見柚「すずしー……夏はいいよね、クーラーあるもん」
北条加蓮「だよねー……クーラーがないなんて考えられないよ」
柚「クーラーさいこー」ダラーン
加蓮「もう動きたくないなー」ダラーン
工藤忍「……ごろごろするのはいいけど、柚ちゃん、シャワーくらい浴びてきなよ。レッスン上がりなんだし」タオルノッケテ
柚「あ、忍ちゃん!」
加蓮「レッスン上がりなの? 道理でちょっと汗臭かったんだね」
柚「くさい!? え、アタシくさい!?」バッ
加蓮「あー……ちょっとだけ、うん、ホントにちょっとだけ」
柚「シャワー浴びてくるっ!」ドタドタ
加蓮「あっ」
忍「着替えを忘れないようにねー」

<あづいー!

加蓮「ダンスレッスン?」
忍「うん。毎日コツコツ続けてるんだ♪」
加蓮「さすが忍。そうだ、アイス食べる?」
忍「もらう」
加蓮「はいどーぞ」
忍「ありがと」
加蓮「でもさすがに食べ飽きたかなぁ」
忍「夏と言えばそうめんだよね!」
加蓮「流しソーメンとかやってみたいな。やったことなくて」

高森藍子「あつー……あっ、お疲れ様です、加蓮ちゃん、忍ちゃん!」

加蓮「お疲れ」
忍「お疲れ」
加蓮「うわ、藍子、汗だっくだく。ハンカチ忘れたの?」
藍子「いえ、その……茜ちゃんとばったり会って……」
加蓮「ああ。じゃちょっと文句でも言ってこようかな」スタッ
藍子「わーっ。だめ、だめです加蓮ちゃん、ついていったの私ですし茜ちゃんにも悪気はっ」ブンブン
加蓮「悪気がなければなんでもやっていいって物じゃないよね」チラッ
忍「……あはは」アイスクワエ
藍子「アイス、おいしそうですね! 私も欲しいな……」
加蓮「その前にシャワー浴びて来なさいって」
忍「はむっ。でもシャワーは柚ちゃんが使ってるよ?」
加蓮「空いてるシャワーくらいあるでしょ。なんだったら1回帰ったら? そのままPさんと会うのも気まずいだろうし」
藍子「そうですねっ。お言葉に甘えて――あ、加蓮ちゃん。これ、お土産です♪」
加蓮「ありがと」
藍子「ではっ」テクテク
忍「おみやげ、何?」
加蓮「んー……おー、アーモンドクッキー。美味しそ。忍も食べる?」
忍「いただきます」テヲアワセ
加蓮「じゃ、私もいただきますっと。ありがとねー藍子ー!」

<いえいえーっ♪

忍「もぐもぐ……甘さ控えめだ」
加蓮「いつも私の好みに合わせてくれるんだ、こっちが申し訳ないって思うくらいに」
忍「いい友達だね」
加蓮「忍にだっていっぱいいるくせに」
忍「ふふっ」

道明寺歌鈴「こんにぢっ!」ヅルッベチャッ

加蓮「…………」ハァ
忍「……え、何? ……誰だっけ?」
加蓮「Pさんと藍子に迷惑ばっかかけるドジ巫女」
歌鈴「め、迷惑なんてかけて……かけて……かけてるかもしれませんけどっ! Pさんも藍子ちゃんも、いつも許してくれます、もん……」
加蓮「とかいって腹の中では何を考えていることやら」
歌鈴「あうぅ……そ、それを言うなら加蓮ちゃんもです! いえ加蓮ちゃんの方です! 藍子ちゃん、いつも困った顔です!」
加蓮「私はもう許されてるからねー。案外、歌鈴の方が呆れられてるんじゃない?」
忍「歌鈴……って、あ、前に加蓮が相談してき――」
加蓮「わ、ちょ、ストップ!」
忍「もが」
歌鈴「?」
加蓮(あれオフレコで! お願い!)
忍(え? まあ、いいけど……)コクコク
歌鈴「(ガチャ)ん? ……あーっ! 私のプリンがないっ!」
忍「プリン?」
歌鈴「加蓮ちゃん! 私のプリン食べましたね! 絶対にそうですっ、ニヤニヤしてますもん!」
加蓮「知らないよー」
歌鈴「じゃあそこの空のパックは何なんですかぁ!」
忍「! あ、それアタ――」
加蓮「バレた? でも歌鈴が悪いんだよ、名前を書いてないから誰のなんて知らないし」
歌鈴「プリンに名前を書く人なんていません! それに私、これ、Pさんと帰った時に明日の為にって入れておいたの、加蓮ちゃんも見てる筈ですぅ!」
加蓮「えー、営業帰りに冷蔵庫からジュースをもらってた歌鈴なんて知らないなぁ」
歌鈴「覚えてるじゃないですかぁ加蓮ちゃんの馬鹿ぁ!」
加蓮「まーまー。ほら、お詫びにこのクッキーをあげよう」
歌鈴「むーっ」パクッ
加蓮「またPさんに買ってもらえば?」
歌鈴「言われなくてもそうしますぅ!」バタン!

<って、なんでバナナの皮っ、きゃあああっ!

加蓮「やっば、敵に塩を送っちゃった」
忍「…………えーと、加蓮。プリン、食べたのアタシなんだけど……?」
加蓮「面白そうだから放置した」
忍「なんか罪悪感がすごいよ!? ちょっとアタシ謝ってくる!」
加蓮「待って、待って待って。それやると私の顔が潰れると思ってやめて」
忍「むぅ……」
加蓮「ね?」
忍「……はぁ。あとで、歌鈴ちゃん? に謝っといてね、アタシの分まで」スタッ
加蓮「はーい」
忍「もう。加蓮、子供みたいだよ」
加蓮「歌鈴にはあれくらいでいいの」

安部菜々「おはうっさみーん♪ おや、加蓮ちゃんと忍ちゃんですか!」

忍「菜々さん!」
加蓮「菜々。ごめーん、クッキー食べ終わっちゃたところなんだ」
菜々「あらら、それは残念ですね。おかわりと言ってはなんですが、ナナが持ってきたケーキはどうですか?」
加蓮「おー」
菜々「ビターチョコもありますよ!」
忍「ケーキ……アタシもいいの?」
菜々「もちろん! フォークと取り皿を持ってきますね!」
忍「あ、アタシが持ってくるよ!」
菜々「いえいえっ、ここはメイドの、メイドのナナにお任せください!」タタタッ
加蓮「まだメイドのこと気にしてたか……。忍、何を緊張してんの」
忍「えっ。あ、あはは、やっぱり大先輩を前にすると緊張しちゃうっていうか……」
加蓮「あのウサミン星人はちょっとやそっとじゃへこたれないから大丈夫だって。なにせ――」
忍「なにせ?」
加蓮「……なんでも。私は飲み物を持ってくるね。ケーキなら紅茶がいいかな」
忍「アタシも手伝わせてよ。アタシだけ座って待ってるなんて嫌だからね♪」
加蓮「はいはい」

菜々「ん〜♪ おいしいですね!」
加蓮「ホントだ、食べたことない味……これ有名どこの?」
忍「もぐもぐ……」
菜々「お母さんがお裾分けしてくれた物なのでそうかもしれませんね。はい、ごちそうさまでした」
加蓮「おいしかった〜」
忍「ごちそうさま♪」
菜々「後は冷蔵庫に入れておきますね。さて、ナナはミーティングがありますのでこれで!」
加蓮「行ってらっしゃーい」
(バタン)
忍「…………」
加蓮「ん? 忍? どしたの、青い顔して」
忍「ヤバイ……アタシ、このままここにいたら、お菓子ばっかり食べそう……!」
加蓮「あぁ」
忍「スタイル維持しないとってPさんも言ってたのに……そうだ、食べた分はレッスンしなきゃ! 加蓮、付き合って! 自主レッスン!」
加蓮「ちょ、私を巻き込まないでよっ。この気温で忍に付き合ったら本気で死ぬよ私!?」
忍「加蓮だって食べてたでしょ!?」
加蓮「私は太らないもん!」
柚「ただいまーっ! シャワー気持ちよかった!」ホカホカ
加蓮「あ、おかえり柚。ねえちょっと忍が――」
柚「それでそれで、そこでPサンとすれ違って、これくれた! コンビニのシュークリーム! 加蓮サン、忍チャン、一緒に食べよ♪」
忍「!?」
加蓮「……。……いいね。それと柚、冷蔵庫に菜々からのおみやげのケーキがあるよ」
柚「ほんとっ!? やった、ケーキ!」タタタッ
加蓮「ふぅ。さて、忍。これで柚もたくさん食べたことになるよね?」
忍「……加蓮ってさ」
加蓮「うん?」
忍「やっぱり連絡先、消していい?」
加蓮「それはさすがに寂しいからやめてほしいかな?」



掲載日:2015年7月18日

 

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