「正史:雲間の先の7月7日」





――事務所――
北条加蓮「アイドルってさ、ファンに夢を見せる物じゃん」
安部菜々「いきなりなんですか加蓮ちゃん? まあ、そうですね。ナナもファンの皆さんに元気と夢をあげちゃいますよ!」
加蓮「うん。そんな菜々さんのことは、アイドルとして尊敬してるんだ」
菜々「え、ええっ!? ……加蓮ちゃんの口からそんなことが聞けるなんて……ナナ、感激です!」
高森藍子「……あっ」ナニカヲサッシタ
加蓮「アイドルとして尊敬してるし、ある意味、私も菜々さんのファンなのかな」
菜々「もっともっと! もっと言ってくれてもいいんですよ!」
加蓮「だから私も、菜々さんから夢をもらいたいんだ」
菜々「加蓮ちゃんの為ならいくらでも!」
加蓮「うん。だからね――」

加蓮「私をウサミン星の銀河鉄道に乗せてよ。織姫と彦星を見てみたいって夢があるんだ」

菜々「どっせーい! ナナの感動を返せー!」
加蓮「あははっ」
藍子「加蓮ちゃん、さっき事務所の短冊を見た時、ニヤリって笑ってましたよね……」
加蓮「あ、見られてたか」
菜々「じゃあこの展開を予測してたってことですよね! 止めてくださいよ藍子ちゃん」
加蓮「んー? どうして止めなかったのかな、藍子ー? んー?」
藍子「………………え、えへ」
菜々「この事務所にナナの味方はいないのかー!!」
加蓮「で、菜々さん。銀河鉄道――」
菜々「む・り・で・す! いいですか、あれはウサミン星しか乗っちゃ駄目なんですから加蓮ちゃんは無理なんです無理!」
加蓮「前は地球人代表になれば乗せてあげるとか言ってた癖に」
菜々「あれはナナなりの加蓮ちゃんへのコールですよ! もっとアイドル頑張ろうっていう!」
加蓮「あ、ついに建前とか言い出したよこのウサミン星人」
菜々「ちぇ。久しぶりに加蓮ちゃんの素直な気持ちを聞けたと思ったら」
加蓮「んー……でもさ、嘘はついてないんだ。菜々さんのことを尊敬してるっていうのも、それはホントだよ?」
菜々「えっ。……加蓮ちゃん……っ!」ウルウル
加蓮「……ダメだこのウサミン、ちょろすぎて不安になる」
藍子「めっ」

菜々「七夕ですかー。ナナも小さい頃はよく短冊にお願いごとを書いてましたね!」
加蓮「へえ。どんな?」
菜々「『マジ◯ル頭脳パ◯ー!!』に出てみたいとか、『バーコー◯バト◯ー』が欲しいとか」
加蓮「……???」
藍子「えっと、『マジカ◯頭脳パワ◯!!』は1991年に放送開……あの、菜々さん?」
菜々「ハッ! え、えっと、……キャハッ☆」
加蓮「言い訳が思いつかなかったか」
藍子「き、聞かなかったことにしましょうか……」アハハ

藍子「加蓮ちゃんは、どんなお願いごとを書いていましたか?」
加蓮「私は……時期によってかなり違ったなぁ。3歳の頃は、もうずっと『外で遊びたい』って」
藍子「……あ……」
加蓮「で、5歳の頃は『  を返――あ。あはは、ごめんごめん。ほら、ね? ちっちゃい頃の北条加蓮ちゃんはそれはもう面倒くさい子だったからさ。あはは……そういう藍子は?」
藍子「私は、その、家族みんながいつも元気にいられますようにって……」
加蓮「昔からいい子だったんだね、藍子は」
藍子「あうぅ……」
菜々「そうだっ。どうせならナナ達も短冊に何か書いてみませんか?」
加蓮「ん……そうだね」
藍子「は、はいっ」
加蓮(……ゴメン)
菜々(いえいえっ)
加蓮「でも菜々さんは『トップアイドルを目指す!』でしょ。悩むことないんじゃないの?」
菜々「まあそうなんですけどね。どうせだからもう1つくらいいいじゃないですか」
加蓮「ふふっ。よくばりさん。じゃ私も2つくらい書いてみよ」
菜々「……1つは何を書くかナナ分かった気がします」
加蓮「へー。何だと思う?」
菜々「どうせPさん絡みでしょ」
加蓮「あたりー」
菜々「アイドルとしてそれどーなんですかね……」
藍子「(ビクッ)」
菜々「藍子ちゃんも!?」
藍子「あ、あは、その、えと、あの……」
菜々「まったく。事務所に押しかけ取材とか来たらどうするんですか。一発で金曜日ですよ」
加蓮「その時は菜々さんの運転免許証を売るから大丈夫」
菜々「ギャー! 何してくれるんですか!?」
藍子「じゃあ私は、菜々さんの保険証を……」
菜々「藍子ちゃぁん!? なんか最近の藍子ちゃん、加蓮ちゃんに悪く影響されてませんかねえ!?」
加蓮「ふふっ。さーて、短冊とりにいこーっと」
藍子「あっ、私も行きます」
菜々「待ちなさーい!」

加蓮「……Pさん以外のことにしろって、Pさんに怒られたんだけど」
藍子「むー」
菜々「残念でもなく当然ですねえ」
加蓮「あ、これは短冊に祈るなんてことしないで実力でやれってことかな」
藍子「……! そうですね、アイドルですから!」
菜々「わーおびっくりポジティブ思考。藍子ちゃん、それアイドルとなんの関係があるんでしょうか」
加蓮「でも困ったな。Pさん以外のこととなると、あとはもうアイドル頑張るってくらいしかないなぁ」
菜々「いや、それでいいんじゃないですかねぇ」
加蓮「笹の葉に七夕……かぁ」
菜々「ん? どうしたんですか、加蓮ちゃん」
加蓮「ほら、学校とか……病院とか……こういうのよくやるじゃん。子供達が楽しめるように、って」
菜々「そうですねー、ナナも小学校の頃――まあナナは17歳でs」
藍子「しっ」
菜々「もが!?」
藍子「……ね?」
菜々「もが、もが」コクコク
加蓮「……変に気を遣わなくていいの、藍子。もう」
藍子「あはは、つい」
加蓮「ま、私が世話になった病院は今も七夕とかやってるのかなって、ちょっと思っただけ。ほら、こういうイベントやるところとか減っちゃったしさ」
藍子「まだ、やっているといいですね」
菜々「今度は加蓮ちゃんがイベントを開く番ですよ!」
加蓮「私が? ……そうだね、アイドルになったもんね。ね、聞いてよ。私のいた病院さ、七夕はやってくれたのにクリスマスはやってくれなかったんだ」
藍子「そうなんですか……?」
加蓮「お陰でクリスマスにはいい思い出がなくて。なんでやってくれなかったんだろ。サンタクロースが見つからなかったとか?」
菜々「あー……」
加蓮「クリスマスの時さ、病院でもプレゼント配るのやりたいってPさんに言ったけど、どうしても都合がつかなくてねー。生まれて初めてPさんのこと呪ったよ。きっと病院には、私みたいにクリスマスが楽しめない子がいるだろうに」
藍子「加蓮ちゃん……」
加蓮「……なんて、辛気臭い話はナシナシ! ほら、去年はいっぱい楽しめたんだから!」
菜々「……そうですね! もう、ナナと藍子ちゃんに感謝してくださいよ、加蓮ちゃん?」
加蓮「はいはーい。感謝感謝」
菜々「加蓮ちゃんの態度からはそれが見えてこないんですけどね?」
加蓮「え? ガッチガチの敬語で先輩扱いした方がいい?」
菜々「逆です! いいですか、何度も言いますけどね、ナナは17歳です! いいですか、17歳!」
加蓮「先輩じゃん」
菜々「加蓮ちゃん明らかに20代の人扱いしてますよねナナのこと!」
加蓮「20代じゃん」
菜々「17歳だってーの!!」

藍子「…………ふふっ♪」
藍子「……ありがとうございます、菜々さん」
藍子「……私も、ああいう風に……」

加蓮「藍子? 何ブツブツ言ってんの?」
藍子「ひゃっ」
菜々「ぜー、ぜー、加蓮ちゃんは相変わらず加蓮ちゃんですね!」
加蓮「だって私、北条加蓮って言うんだし。で、あのさ、藍子……次の定期健診、ちょっと早めちゃおうかなって思うんだ」
藍子「!」
加蓮「ふふっ。ねえ、ついてきてくれる?」
藍子「はいっ。絶対、絶対に、スケジュール空けておきます!」
加蓮「ありがと」



掲載日:2015年7月7日

 

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