「TRUE:それがあの時に見せた姿」






第23話「IF:それがあの時に見せた姿」の正史版です。だから何ということもありませんが。


――事務所――
北条加蓮「……ん、もうこんな時間」チラッ
加蓮「Pさん、私って今日もう用事ないよね?」
P「え? おう……ってーかお前、今日は次のLIVEの軽い打ち合わせだけだったんだから、もう帰ってもよかったぞ?」
加蓮「え、だって帰ってもやることないし、それならPさんの側にいたいじゃん」
P「……お前はまたそういうことをさらっとだな」
加蓮「ふふっ。ね、行って来ていい?」
P「あー、今日は木曜日だったな。あんまり目立ちすぎるなよ?」
加蓮「はーい。じゃ、行ってきますっ」
P「おう」

安部菜々「ですからナナは渋いお茶の方が……あれ? 加蓮ちゃん」
高森藍子「お帰りでしょうか。もし用事がなかったら、いっしょにカフェに行きませんか? 晩ご飯、一緒に食べたいです♪」
加蓮「あー、ごめん藍子。すっごい行きたいんだけど、ちょっと今日は先約があってね」
藍子「そうですか……」
菜々「誰かと食事の約束でも?」
加蓮「野暮用だよ、ちょっとした散歩。また誘ってね、藍子」
藍子「はいっ」
加蓮「じゃあねー」
(バタン)
藍子「……あっ、そっか。今日、木曜日だっ」ポン
菜々「木曜日? 木曜日に何かあるんですか。ナナ、気になりますねぇ」
藍子「気になりますか?」
菜々「まあ、可愛い妹分ですからねえ」
藍子「じゃあ、ちょっと覗きにいっちゃいましょう♪」
菜々「??」


――町外れの図書館前――
加蓮「〜〜〜♪」
菜々「(物陰から)軽い変装に鼻歌……これで加蓮ちゃんでなきゃ、男の気配が! なんてなるんですがねえ」
藍子「(物陰から)そういうんじゃないですよ……あっ、ほら、あそこ」
加蓮「〜〜♪♪ あっ、今日も来てる来てる」
菜々「……え?」

「あっ、かれんちゃんだ!」
「うたのおねえちゃんだ!」

加蓮「やっほー。久しぶりだね、みんな……わぷっ!」
「ぼうしがとんでった!」
「こらー! きたないぼうしなげちゃだめ!」
「きたなくねーよ!」
加蓮「大丈夫だよ。はい。投げちゃダメだよ、危ないからね?」
「はーい」
「おこられてやんのー!」
「うっせー!」
加蓮「やるなら、ふりまわすだけでね?」
「はーい!」
「うっしゃあ、つづきだー!」
「そりゃ! そりゃ!」
加蓮「あはは、おねーちゃんも参加しちゃおっかな?」


――物陰――
菜々「……………………あれは加蓮ちゃんの妹さんか何かですか?」
藍子「妹さんがいるって話は聞いたことありませんけど、あれは加蓮ちゃんですよ」
菜々「……えええ?」
藍子「ほら、クリスマスの時、子ども達にプレゼントを配ってたじゃないですか。あれからすっかり、お姉さんになるのが楽しくなったみたいで」
菜々「あー。あの時の加蓮ちゃんも誰だって感じでしたねぇ・子供たちは?」
藍子「ここの図書館って、毎週木曜日に小学生が来るみたいなんです。社会見学だって」
菜々「なるほど」

――図書館前(以後省略)――
加蓮「いえ、ふふっ、私も楽しいですから。……ほらー、みんなー。おとなの邪魔をしちゃダメだよー」
「はーい」
「はーい」
「やーい、つかまえてみろー」
「まてー!」ドンッ
男「うわ! 危ない!」
加蓮「あっ、言った先から! こら!」
「ぎゃー」
「うわ、こえぇ!」
「おにだー!」
「あくまだー!」
加蓮「誰がちひろさ……ごほん。他の人に迷惑をかけるなら、お姉さん、鬼になっちゃおうかなー?」ニコッ
「ひいっ」
「ごめんなさい!」
加蓮「分かればよろしい。ほら、ぶつかっちゃった人にはなんていうのかな?」
「うー……」
加蓮「はい、せーのっ」
加蓮&子どもたち「「ごめんなさい!」」
男「あー……あはは、元気だねぇ。気をつけるんだよ」スタスタ
加蓮「……ふふっ、よかったね♪」
「やったー!」
「ゆるしてくれた!」

菜々「ナナが言うのも何ですが、あれ何キャラですか? いやマジで」
藍子「まぁ、加蓮ちゃんですから……」アハハ
菜々「しっかし楽しそうですねぇ加蓮ちゃん」
藍子「いつもとはぜんぜん違う笑顔で……ふふっ……♪」カシャカシャ
菜々「藍子ちゃんも抜け目ありませんね! よし、ここはウサミン星人ことこのナナが盛り上げ役に――」
藍子「あ、だめです!」グイッ
菜々「ぐえ」
藍子「ご、ごめんなさい。でも……今の加蓮ちゃんだけは、邪魔しないであげてください」
菜々「藍子ちゃん……?」
藍子「だって、あんなに自然な笑顔の加蓮ちゃん、あんまり見られませんから……ね?」

「おにごっこやろーぜ!」
「じゃあオレがおにな! おらー!」
「だんしうるさーい!」
「かれんちゃんがおにになるぞー!」
加蓮「もうっ。男子のみんな、歩いてる人に当たらないようにね?」
「はーい!」
「おこられてやんのー!」
「おこられてねーよ!」
「〜〜〜♪」ピーピー
加蓮「あ、リコーダー? ◯◯ちゃん、うまいね」
「ほんと!? わたし、リコーダーだいすき!」
加蓮「そっか」
「わたしはドッジボールがすき!」
「おれはゲーム!」
「よう◯いウォ◯チおもしれーよな!」
「えー、もうあきたー」
加蓮「あ、よ◯かい◯ォッチ? 知ってる知ってる。面白いよねー」
「だよなー! ほら、かれんちゃんだっておもしろいっていうんだぜー!」
「うっせー! いまはサッカーのじだいなんだよ!」

菜々「……そうですね。じゃあ今日のナナは見守り役になりますよ!」
藍子「そうしてあげてくださいっ。この写真も、アルバムの隅っこにこっそり入れておくだけなんです」
菜々「藍子ちゃんだけが知る加蓮ちゃんって感じですね! ナナが知っても大丈夫だったでしょうか」
藍子「私が、だめ、って言うと思いますか?」
菜々「わーおその言い方なんか加蓮ちゃんにそっくりですねー」

「おーい! せんせーが、としょかんにはいるぞって!」
「えー!」
「もっとかれんちゃんとあそびたいー!」
加蓮「わがまま言っちゃダメだぞ? ほら、おねーさんはまた来るから、ね?」
「はーい……」
「じゃあ、かれんちゃん、さいごにおうたうたってー!」
「うたってー!」
加蓮「私はいいけど……先生、時間は大丈夫ですか? ……はい、そんなにかかりませんから。じゃあ……うん、ありがとうございますっ」
「おうたー!」
「うたー!」
加蓮「はいはい。あ、そうだ。さっきの……◯◯ちゃん。ね、いっしょにリコーダー吹いてよ!」
「え!?」
「おー、リコーダーとかれんちゃんだ!」
「アイドルだー!」
加蓮「やってみよ? なんだってやればできるよ!」
「……うんっ!」

菜々「……あの、あれホントに加蓮ちゃんですよね? ナナにイジワルばっかりする加蓮ちゃんですよね?」
藍子「ま、また今度、言っておきますから……」アハハ

加蓮「あるこー、あるこー♪」
「〜〜〜♪♪」ピロピロ
「わたっしはーげんきー♪」
加蓮「あるくのっ、だいすきー!」
加蓮&こどもたち「どんどんいーこーおー♪」


――後日、事務所――
加蓮「でさ、その店、ビターチョコっていうのにすっごく甘くてさー」
藍子「あはっ、ドンマイです、加蓮ちゃんっ」ヒラッ
加蓮「……ん? 藍子、なんか鞄から落ちたよ。写真?」ヒロイ
藍子「写真……? …………あ!! 待ってください加蓮ちゃん!」
加蓮「うわっと。ふふっ、どうしたの慌てて。そんなに恥ずかしい写真を隠――」
(加蓮が子どもたちに囲まれて満面の笑みになっている写真)
加蓮「…………!!??」
藍子「」サーッ
加蓮「え、うそ、なんで、え……?」
藍子「あ、ええとですねその、えっと、あ! 散歩してたらたまたま見たんです……加蓮ちゃんの妹さん!」
加蓮「……」
藍子「……ですっ」アセダラダラ
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「――私に妹なんていねええええええええ――ッ!!」ダッ
藍子「ご、ごめんなさあああああああああああああい!!」ダッ


掲載日:2015年7月2日

 

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