「マジな話をしてしまうんだ」






※7月12日追記:一部の文章を修正しました。


前回のあらすじ!
工藤忍のレッスンに北条加蓮が付き合ったよ!
加蓮はぐったりしてたよ!


――レッスンスタジオ――
工藤忍「ダンスとボーカルを教わってもらったから、やっぱりビジュアルレッスンもして欲しくて」
加蓮「やっぱそう来るよね」
忍「加蓮のオシャレはキュートグループでもけっこう有名なんだ。教わらない手はないよ♪」
加蓮「そういうの、噂のひとり歩きって言うんだよ」
忍「……やっぱり、迷惑だった?」
加蓮「そこで迷惑でしたと素直に言える人間に見える?」
忍「柚ちゃんが、加蓮は意地悪さんだって何回も言うから」
加蓮「……代わりにシメといてよ。首のあたり、こう、きゅっと」
忍「そうするね。……それで」
加蓮「いいけどさ。正直、予測していたっていうか、忍に付き合ったらまたぶっ倒れさせられそうっていうか」
忍「う゛」
加蓮「だから今回は助っ人を呼んできたよ。そろそろ来ると思うけど……」ドタドタドタ「ああ、来た」
安部菜々「お待たせしましたっ! ウサミン星からただいま参上、安部菜々17歳です☆」
忍「えー!!?」
加蓮「え、何その反応」
忍「だ、だって安部菜々さんって言えばキュートグループの大先輩みたいな存在だよ! びっくりもするって!」
加蓮「……だってさ」
菜々「加蓮ちゃんからはなーんか妙な含みを感じますけどねぇ」
忍「先輩って言ったら加蓮も同じだけど、やっぱり同じグループってなると緊張感が違うよ! アタシついていけるかな……ううん、ついていくんだっ!」
加蓮「それでこそ忍」
菜々「忍ちゃんのことは聞いてますよ。今日はビジュアルレッスンですかね?」
加蓮「私1人でもいいんだけど、菜々ちゃんがいた方がスムーズになるでしょ」
忍「よ、よろしくお願いしますっ」
菜々「わっかりました! 不肖このナナ、やっちゃいますよぉ!」

菜々「忍ちゃん。アイドルに必要なビジュアルってそもそも何だと思いますか?」
忍「え? えーっと……可愛く見せること、とか?」
菜々「そうですね、それも大切です。ですがそれよりもっと大切なことがあります。それは――トーク力です!」
忍「…………へ?」
加蓮「トーク?」
菜々「いいですか、アイドル戦国時代と呼ばれるこのご時世、可愛い子なんて履いて捨てる位いるんですよ。可愛くめかしこんだだの着飾っただのってだけで売ろうなんて甘い! 今のアイドルはグイグイ押してこそ売れていくんです!」
忍「す、すごい説得力……!」
加蓮「ってーか、切実すぎる……」
忍「でもやっぱり、都会には可愛い子がいっぱいいるから、まだまだ頑張らないと……」
菜々「その頑張りももちろん大切です! 流行の先端を調べたりトレンドに先乗りしたり! 時にはお肌が許すぎりぎりの時間まで調べることに没頭して――」
加蓮「おい17歳」
菜々「ハッ! い、いやぁ、若い内から気をつけないとすぐにシワシワに」
加蓮「おい、17歳」
菜々「ハッ! と、とにかくですよ。その頑張りも大切として、今日は自分をどう売り込むかを考えていきましょう!」
忍「は、はいっ!」
加蓮「トークかぁ。そういえば今度、トークバトルショーに出るんだっけ?」
忍「うん。ちょっと気合入れてるんだ」
菜々「そこでどう売り込んでいくかですよ!」
忍「うーん……あ、そうだ。穂乃香ちゃんが前に出てたんだ。緊張したけど、素直になることが大切だって言ってた」
菜々「う゛っ」
加蓮「ダメージ受けてるウサミン星人はほっといて、忍さ、自分がすごい頑張り屋だって自覚ある?」
忍「えっと、……あんまりおこがましく言いたくないけど、自分は努力のアイドルだ! って決めてるよ」
加蓮「その"努力のアイドル"だって姿をさ、いちばん見せつけられるのがトークバトルショーだと思うんだ」
忍「そう……なの?」
加蓮「うん。前に言ったと思う。私、忍と違って努力が好きじゃないんだ。結果を出すことに焦っちゃって……今はもう焦らずやってるけど、でもやっぱり努力はそこまで好きじゃない。『LIVEを成功させる為に頑張る』とかはいいけど、『とりあえず頑張る』っていうのはちょっとね」
忍「加蓮……?」
加蓮「思い込みなんだけどね。この世は結果がすべてだ、って」
菜々「加蓮ちゃん……?」
加蓮「今もその考え方は変わらない。……正直、忍の『とにかく頑張る』『とりあえず頑張る』っていうの、やっぱり好きじゃない」
菜々「ちょ」
加蓮「でもさ。トークバトルショー……もそうだし、トークできる場所ってさ、アイドルが頑張ったことを自慢できる場だと思う」
忍「頑張ったことを、自慢できる……」
加蓮「LIVEも舞台も、どんだけ頑張っても、失敗したらそう見られるし、結果が伴わなかったら駄目だと判断される。でもトークなら、ちゃんと示せるっていうか、それで伝えられたら見られ方もすごい変わるって言うか……その…………」
菜々「……加蓮ちゃん?」
加蓮「…………あーもうっ! とにかくそういうこと! 分かった!?」
忍「……すっごく勉強になった。ありがと、加蓮」
菜々「いやあ、加蓮ちゃんの真面目な姿、すごく久々に見ましたよ」
加蓮「もう! 忍が相手だと調子が狂う!」
菜々「なんならナナ達が相手の時もそうでいいんですよ?」
加蓮「私のキャラじゃないでしょこんなの!」
菜々「またまたぁ。でも、ナナが言いたいこと、ぜんぶ加蓮ちゃんが言っちゃいましたね」
忍「……努力することって、自慢していいのかな?」
菜々「いいに決まってますよ! ナナの話になりますけど、よくファンレターが届くんです。頑張ってる姿を見て勇気をもらったって! 加蓮ちゃんのところにも来てるんじゃないですか?」
加蓮「…………」
菜々「おっと、まだ恥ずかしいみたいですね……。普段、頑張っていることそのものはなかなか見てもらえないかもしれませんけど、たまには見せつけてもいいと思いますよ!」
忍「そっか……そうだね! うん、やってみる!」
加蓮「ま、まあ忍がそんなことやっても、可愛く見られるじゃなくてカッコよく見られたりするかもだけど?」
菜々「おお、加蓮ちゃんの皮肉モードが復活ですね!」
忍「それならそれでいいよ。ファンに元気を与えられるなら、カッコよく見られるのもいいかな!」
加蓮「…………」
菜々「あ、またいやそーな顔になった」
忍「よしっ。じゃあ、どうやったらトークで伝えられるか練習してみる!」
菜々「やっぱり練習あってこそですね! ナナと加蓮ちゃんで聞いてあげますよ!」
忍「ありがとう♪ じゃあ、とりあえずやってみるから悪かったところがあったら遠慮なく――」

(そして今日も開始10分で加蓮がへばった)
(でも、ダンスやボーカルのレッスンの時とは違うようで……)

加蓮「……無理いいいいいい!」
菜々「わっ、加蓮ちゃん!? 急に何ですかびっくりするじゃないですか!」
忍「その日のレッスンは8時に終わる予定だったんです。でもアタシは次のLIVEで、もっとすごいパフォーマンスを見せたくて――」
菜々「忍ちゃんもストップ、ストップです!」
忍「あれ? あ、加蓮、またへばってる」
加蓮「無理! ホント無理! あのね、マジレスを10分も聞き続けるとか勘弁してぇ!」
菜々「あー、これはひねくれて生きてきた罰ですね。忍ちゃん、構わず続けてください」
忍「うん。じゃあ続きね。……プロデューサーさんから止められたんだけど、その時にアタシは、」
加蓮「やーだー! こんな生き方しててごめんなさいってなるううううう!」
菜々「どうどう。藍子ちゃんをスタンバらせときますから、頑張りましょ?」
加蓮「普通のビジュアルレッスン提案しときゃよかったー!!」


掲載日:2015年6月23日

 

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