「側に立って微笑んでいる」






――事務所――
北条加蓮「ただいまー」
高森藍子「ただいま戻りましたっ」
安部菜々「おかえうっさみーん♪」
藍子「うっさみーん♪」
菜々「ほらほら、加蓮ちゃんも!」
加蓮「にゃー」
菜々「なんですかそのライバル宣言!?」
藍子「あはは……あっ、私、お飲み物を持ってきますね。菜々さんも何かいりますか?」
菜々「えっ、あ、じゃあお茶を」
藍子「はーい」パタパタ
加蓮「ふぅ。つっかれたー……」ソファニグタリ
菜々「お疲れ様です、加蓮ちゃん。今日は営業でしたっけ?」
加蓮「と、次のLIVEの打ち合わせ。まあ確認くらいだけどね」
菜々「ナナも見に行っちゃいますよ!」
加蓮「ふふっ、じゃあ失敗できないね。藍子にも言っとかないと」
藍子「お待たせしました。はい、加蓮ちゃん」
加蓮「さんきゅ」
藍子「菜々さんも。玄米茶で大丈夫ですか?」
菜々「大丈夫ですよ〜。ありがとうございます、藍子ちゃん!」
藍子「はいっ」
菜々「ごくごく……って、お疲れなのは藍子ちゃんもでしょう」
加蓮「ごくごく?」
菜々「いやいや。なんだかいつも藍子ちゃんに飲み物を持ってきてもらってませんかってこと」
藍子「ごくごく……いえ、私が好きでやっていることですからっ」
菜々「たまには加蓮ちゃんがやってもバチは当たらないんじゃないですか?」
加蓮「んー、そうだね……。ねえ菜々さん」
菜々「はいはい」
加蓮「この前に奢った分、お返しもらってないんだけど」
菜々「え、そうでしたっけ。……あー、ちょっと持ち合わせが少ないからまた今度でいいですかね?」
加蓮「……なんて。冗談だよ」
菜々「へ?」
加蓮「でも、いちいち言われたらウザくない?」
菜々「あー、そういうことですか」
加蓮「それに、私なりにお返しはしてるつもりだし。ねえ藍子」
藍子「はいっ。えっと……(ごそごそ)あった。これ見てください、菜々さん」
菜々「グロスですか?」
加蓮「だいぶ色が薄いヤツだけどね。藍子ならそれくらいがちょうどいいかなって」
菜々「ってことは」
藍子「あと、こっちのハンドクリームと、このハンカチも! 加蓮ちゃんに買ってもらった物なんですよ」
菜々「ほうほう」
加蓮「泊まりがけのロケに行ったりしたら、ほら、ホテルに売店ってあるじゃん。あれ見た時に、あー、なんか買っていこっかなって思って」
藍子「大丈夫だって言っているんですけど、加蓮ちゃん、聞いてくれなくて」
菜々「ふむふむ。な、なんだかナナちょっと空気を読めてませんでした?」
加蓮「菜々さんに空気を読むとか期待してないけどね」
菜々「ひどくありませんか!?」
藍子「あ、でも加蓮ちゃんの言うこと分かるかも……菜々さんは、良い意味で大胆な行動に出てくれますから」
加蓮「そーそー」
菜々「うわ、とってつけたような反応ですね。まあ、今回は藍子ちゃんに免じてあげて信じてあげましょうか」
加蓮「ありがと」

菜々「打ち合わせの方はどうでした?」
加蓮「これといっては特に……あ、そうだ藍子。あのこと教えてあげたら?」
藍子「はいっ。あの、打ち合わせの帰りに、声をかけられたんです」
菜々「声? もしかして……ナンパとか?」
加蓮「あははっ、Pさんが一緒にいたからさすがに違うよ」
藍子「私を見て、ファンだと言ってくれたんですよ♪」
菜々「いいですねぇ」
藍子「それで、いつも私達のLIVEを見てくださってるって」
菜々「私達? つまり、ナナや加蓮ちゃんとの?」
加蓮「そ。いつか最前列でウサミンコールをするのが目標だって言ってたな」
菜々「なんと! ……ううっ、ナナ感激ですっ」
加蓮「悔しかったから、コールするなら私の番だけにしといてって言っといた」
菜々「なんてことを!?」
藍子「い、一応、フォローは入れておきましたから」
加蓮「たはは」
藍子「あと、菜々さんのラジオも聞いてくれてるって言ってましたよ」
菜々「感無量ですね!」
加蓮「菜々さんのラジオって、どこから収録しているかがトップシークレットのアレ?」
藍子「ファンの皆さんは、ウサミン星から放送してるって思っているみたいですね」
加蓮「収録現場はここから徒歩10分の、」
菜々「ストーップ! アイドルとは夢を見せる物なんです! ナナがウサミン星からお送りしているって言ったらウサミン星からお送りしているんです!」
加蓮「じゃあそういうことにしておくよ」

藍子「ウサミン星にもラジオ局ってあるんですか?」
菜々「もちろんですよ! ナナも学生時代はよくラジオを聞きながら勉強をしていましたからね!」
加蓮「はあ」
藍子「……あ、あはは」
加蓮「突っ込んであげなよ」
藍子「そ、それは加蓮ちゃんの役割っていうか……」
菜々「?」
加蓮「……菜々さん、気付いてないんだけど」
藍子「加蓮ちゃんっ」
加蓮「はーい」
菜々「ハッ! い、いえ、今も学生時代ですけどね! キャハッ☆」
加蓮「あ、気付いた」
藍子「あはは……」
菜々「そこは教えてくれるのが優しさじゃないですか!?」
藍子「あの、思ったんですけれど、17歳だからって学校に通っているとは限らないんじゃ」
加蓮「あ、そっか。……まあ1年2年前のことを学生時代って言うかは知らないけど」
菜々「それはそれでちょっとイヤですねぇ」
加蓮「ワガママー」
菜々「ナナは現役JKのウサミン星人ですからね!」
加蓮「この何がおかしいか分からないけど何かがおかしいフレーズだよ」
藍子「ウサミン星にも、学校ってあるんですね」
菜々「それはもういっぱいありますよ! ウサミン星は少子高齢化なんて無縁ですから!」
加蓮「妙に生々しい言葉を出すのやめなよ……。じゃあ菜々さんはウサミン星の学校に通ってるの?」
菜々「い、今は地球の学校ですね、ほらナナは地球のアイドルだから」
藍子「いつか菜々さんの学校に行ってみたいですっ」
菜々「げえっ」
加蓮「ぷっ、くくっ……じ、じゃあ私も行ってみたいなー?」
菜々「加蓮ちゃんまで!? あーっと、ほら、アイドルが1箇所の学校に集まったら騒ぎになりますから、ね?」
加蓮「じゃあ学校でLIVEしよう」
菜々「げげっ」
藍子「あ、それとっても素敵ですっ」
加蓮「またセーラー服とか着てみたいな」
藍子「私は逆に、ブレザーに憧れちゃいますっ」
加蓮「制服を交換してみるとか。ねえ菜々さん」
菜々「な、ナナの制服は……その、ウサミン星の特別な仕様で……」
加蓮「今は地球の学校に通ってるのに?」
菜々「……………………」
藍子「……加蓮ちゃん、そろそろやめてあげましょう?」
加蓮「しょうがないなー」
菜々「……アイドル始めて以来、久々にメゲかけましたよ……」

加蓮「じゃ、また明後日。LIVE頑張ろうね、藍子」
藍子「はいっ。お疲れ様です、加蓮ちゃん」
菜々「応援してますよ、加蓮ちゃん!」
加蓮「ありがと。じゃねー」パタン
菜々「……ふうっ。加蓮ちゃんにも困った物ですよ、もー」
藍子「あはは……いつもごめんなさい」
菜々「いやいや藍子ちゃんが謝ることじゃないんですって!」
藍子「私がもっと強く言ってあげられたら、いいんですけど……」
菜々「いつか加蓮ちゃんをギャフンを言わせてみせますからね!」
藍子「がんばってください、菜々さんっ」
菜々「……ま、加蓮ちゃんですからね。ナナは今の加蓮ちゃんが好きですよ」
藍子「私もです。だから、あんまり強く言えないのかも」
菜々「藍子ちゃんは本当に加蓮ちゃんのことが好きですね。飲み物のこともですけど」
藍子「ふふ、だって、素敵なんですもん……♪」
菜々「わーお、なんだか意味もなく対抗心を燃やしたくなるくらいマジな顔だぁ……」


掲載日:2015年6月14日

 

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