「原点に戻って」
北条加蓮「最近はあんまり藍子とレッスンしてないなぁ」 高森藍子「そうでしたっけ……?」 加蓮「いつ以来かなんて覚えてないけどね」 安部菜々「加蓮ちゃんと藍子ちゃんじゃ、課題とかぜんぜん違いますからねぇ」 加蓮「そういう理知的な話がしたいんじゃなくて」 菜々「加蓮ちゃんなら今すぐにでもトレーナーさんに直談判とかしそうですけど」 藍子「たまには加蓮ちゃんからエネルギーをもらいたいです。レッスンだけでも、見ていてすごく刺激になるから……」 菜々「ナナは逆に危機感を受けますねぇ。いつ加蓮ちゃんに追い抜かれるかもう怖くて怖くて」 加蓮「さすがに遠すぎるよ。アイドルランクも総選挙順位も」 菜々「それでもナナには脅威ですよ、もうホント。藍子ちゃんはその辺どうですか?」 藍子「私はまだ、追いかける立場です。……でもいつか、加蓮ちゃんの隣に立って見せますからっ」 加蓮「今すぐ立たれてもいいと思うし、むしろ私が食われそうなんだけど?」 菜々「藍子ちゃんも藍子ちゃんですけど、加蓮ちゃんも妙に自己評価が低くありませんかね?」 加蓮「まあ、そういう生き方してきたしね……」 藍子「私は……あっ、ううん、なんでもないです」 菜々「?」 加蓮「どうせ『アイドルらしくないから』とか『向いてないから』とか言うつもりだったんでしょ」 菜々「あー」 加蓮「それ言ったら私がどつくようにしてる」 菜々「荒療治ですねぇ」 加蓮「それでも治らないから、膝枕してもらう時にイタズラするって決めた」 菜々「イタズラって?」 藍子「…………」モジモジ 菜々「え、なんで顔赤くしてるんですかね!?」 加蓮「何を想像したか想像できるけど、私にそういう趣味はないよ」 藍子「…………」ジー 菜々「藍子ちゃんが嘘つけって顔で見てますけど!?」 加蓮「勘違いだってば、もー」 菜々「加蓮ちゃんは何がホントで何がウソかあやしすぎるんですよぉ!」 加蓮「冗談は言うけど嘘はついてないけどなぁ」 藍子「でも、それくらいの方が、私にはいいかもしれません」 菜々「!?」 加蓮「菜々さん、穿って考えすぎ」 菜々「おおっと。豊富な人生経験というのも考えものですね」 加蓮「へー」 藍子「あ、あの、17歳……ですよね?」 菜々「おおっとそうでした。ナナ失敗」 加蓮「ついに藍子にすらフォローされる始末」 菜々「ぐぬぬ」 加蓮「そういえば、ここのところ変な夢を見るんだ」 藍子「変な夢……ですか?」 加蓮「心配するのが早過ぎるよ藍子……悪夢とかじゃなくて、変な夢。いつも通りみたいな感じなんだけど何かが違ってね。例えば、私が菜々さんのこと菜々ちゃんって呼んでたり」 菜々「……!!」キュピーン 加蓮「うわっ、食いついてきた」 菜々「じゃあさっそく現実でも呼んでみましょう! ね、ね? せーのっ!」 加蓮「おばちゃん」 菜々「誰がじゃコラー!!」 藍子「……うくっ」 菜々「藍子ちゃん!?」 藍子「うくくっ、ご、ごめんなさい、でも、おかしくて……あははっ」 菜々「藍子ちゃあん!? ちょ、どうしてくれるんですか加蓮ちゃん!」 加蓮「え、だって"ちゃん"付けしろって言うから」 菜々「だからって誰がおば、おばち……ですかねぇ! ちょっとそのボケはナナも許容できませんよ!」 加蓮「菜々さんって凄いよね。ボケとツッコミを両方こなすなんて」 菜々「つっこませるのそっちでしょうが! あと誰がボケですかね!?」 加蓮「あれ、ウサミン星ってツッコミ待ちじゃないんだ」 菜々「前にも言いましたけどこっちは本当なんですぅ!」 加蓮「ってことは17歳の方は嘘だと」 菜々「……うわ〜〜〜〜〜ん、藍子ちゃん、もうやだ〜〜〜!」 藍子「よしよし……もう、加蓮ちゃん。めっ」 加蓮「さっき藍子に裏切られてなかった?」 菜々「藍子ちゃんは優しいですからね。どこかの誰かと違って!」 加蓮「あはは。これでさ、私たちがいるから好き勝手にできる! ってならないのは、菜々さんの良い所で悪い所だよね」 藍子「そうですか?」 加蓮「もうちょっと甘えていいと思う、けど……な……分かった分かったごめん藍子、そのジト目は私の心に刺さるからやめて」 菜々「膝枕だけですよねぇ、加蓮ちゃんがはっきりと甘えているのって」 加蓮「キャラじゃないし」 藍子「そんなこと言って無理ばっかりするから……」 菜々「なるほどー。捻くれ者の加蓮ちゃんですが、よろしくお願いしますね!」 藍子「はいっ♪」 加蓮「アンタはお母さんか」 菜々「加蓮ちゃんと接していると、まるで自分がお母さんだと思……いやナナは17歳ですけども!」 藍子「あ、それ、私も時々なっちゃいます」 菜々「…………」 加蓮「ぷぷっ、変な顔」 藍子「でも私は、お母さんじゃなくて、お姉ちゃんみたいに……あっ、でも、いつもは加蓮ちゃんの方がお姉ちゃんですね」 菜々「あー、前にナナが言ったことですか」 加蓮「手のかかる妹だね」 菜々「アンタが言いますか!?」 藍子「あうぅ、手のかかる妹でごめんなさい……」 菜々「藍子ちゃんも! 今のは突っ込むところですよ!? そんな"しゅん"とならなくても!」 加蓮「手のかかる子の方が可愛いって言うじゃん。ねえ菜々さん」 菜々「う゛、なんでそこでナナをじっと見つめるんですかね〜。確かに最近はお母さんからそろそろ相手はいないのと言われたりもしますが」 加蓮「17歳が?」 菜々「お、お母さんは未来を見据えたすごいウサミン星人ですからね!」 加蓮「でも、菜々さんの態度は刺激になるよね。貪欲っていうか直球っていうか」 藍子「私も、よく勇気をもらってます」 菜々「そ、そうですか? 照れちゃいますね〜」 加蓮「私ねー……アイドルになるだけで満足だったけど、いざなってみると上を目指したくなるな」 菜々「ほうほう」 加蓮「CDデビューをした時に、なんか急に世界が広がった気がして」 藍子「そうですね。今まで知らない人とも話して、見たことのない世界も見て」 加蓮「自分がいかに狭い世界にいたか思い知らされた、とかさ」 藍子「でも私は、やっぱり……上を目指すより、1人でも多くのファンを笑顔にできるアイドルになりたいな……」 菜々「むうぅ、その控えめな可愛らしさはナナにないところですね」 加蓮「いらないでしょ」 菜々「そんなキッパリ」 加蓮「藍子も。アイドルランクが上がれば、ファンも増えるんだからさ。そしたら、笑顔にできる相手も増えるんじゃない?」 藍子「…………!」 加蓮「今気づいたかー」 菜々「これまたライバルが増えちゃった感じですね!」 加蓮「私たちに教えてとせがんでくる、可愛いライバルだけどね」 藍子「……!!(メラメラ)」 加蓮「なんか燃えてる」 菜々「まぶしっ」 加蓮「若さが?」 菜々「もうその手には乗りませんからね!?」 加蓮「ちっ」 藍子「やっぱり私、加蓮ちゃんと一緒にレッスンしたいですっ!」 加蓮「そこに戻ってくるんだ」 藍子「加蓮ちゃん、今からお時間ありますか? トレーナーさんからもらってる宿題があって……それで」 加蓮「うん、今日はもう時間潰すだけだったからね。ちょうどいいや。菜々さんも一緒にどう?」 菜々「や、ナナはレッスン帰りですので今日は……」 加蓮「そっか。残念」 藍子「加蓮ちゃん、はやくはやくっ」グイグイ 加蓮「わ、ちょ、っと。もう、すぐ行くから待ってよ藍子。じゃあまたね菜々さん、しっかりマッサージ受けときなさいよー」 菜々「がってんしょうちです!」 |
掲載日:2015年6月11日
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