「IF:3人いれば6つある目」






前回のあらすじ!
加蓮と藍子が2年ぶりに再会したよ!


――レッスンスタジオ――
北条加蓮「……ぷはっ!」
安部菜々「ぜぇ、ぜぇ……な、なかなかうまくいきませんね」
高森藍子「はぁ、はぁ……」
加蓮「なんだろ。なんかこれ根本的に考えなおすべきじゃない?」
菜々「そうですね、ナナもちょっとそう思ってたところです」
加蓮「休憩も兼ねて考えようよ。藍子もそれでいい?」
藍子「……あの、でも、私はもうちょっとだけ」
加蓮「そこも含めてちょっと話しあおう。1つ分かったことがあるんだ」
菜々「わかったことというと?」
加蓮「私達、互いのことを知らなさ過ぎる」

加蓮「問題を整理していくよ。こういうのは冷静に考えなきゃね」
菜々「はいっ!」
加蓮「まず第一の問題は、そもそもこのユニット、体力がなさすぎ」
加蓮(……私はともかく、菜々さんの体力事情はまだ話していないか)
加蓮「でも、これはハンデではあっても壁にはならないと思うんだ」
藍子「どういう意味ですか?」
加蓮「ハンデは武器になるってこと。前に奈緒がドヤ顔でアニメのセリフを言ってたんだけど、例えば10分しかステージに立てないなら、その10分で全力になればいいって。10分しか立てないことを嘆いたりするんじゃなくて」
菜々「まさに加蓮ちゃんにピッタリな話ですね」
加蓮「そう思って奈緒も私に言ったんだと思う」
藍子「それで……10分で、私たちは何をしましょうか」
加蓮「やっぱ掴みは菜々ちゃんに任せたいんだけど、駄目かな」
藍子「私もそう思います。菜々さんのライブを見たことありますけど、本当にすごい声援だったから」
菜々「……分かりました! 不肖このウサミン星人、加蓮ちゃんと藍子ちゃんの為にも張り切っちゃいますね♪」
加蓮「うん。あとは……そうだ。トレーナーさんが緩急を意識しろって言ってたね」
菜々「ナナが思いっきり盛り上げた後は、加蓮ちゃんの歌で?」
藍子「あの、ちょっと急過ぎませんか……? ファンの皆さん、大変そう」
加蓮「どっちもどっちだよね。藍子の言うこともそうだと思うけど、10分ってくくりを入れたらグイグイ行きたいところだし」
藍子「うーん……」

加蓮「……藍子の時はどうしてる?」
藍子「え?」
加蓮「確かポジティブ……パッション? でLIVEとかやってたよね。ほら、茜がいるとこ」
藍子「はいっ。いつも未央ちゃんや茜ちゃんについていくのに精一杯ですけど……」
菜々「あ、ナナ言いたいことが分かっちゃいました。藍子ちゃんのLIVEの時にも、グイグイやってたりしませんかね?」
藍子「言われてみれば……」
菜々「それを真似てみようってことですね!」
加蓮「そういうこと。それから藍子メインで整えて締めに入る。それくらいでバランスいいかなって思うけど」
藍子「わ、私が最後ですか?」
加蓮「最後に3人揃って歌うところ入れるから、ね?」
藍子「うぅ……それなら、大丈夫かな」
菜々「……ちょっといいですか?」
加蓮「ん、なに?」
菜々「なんだか変な感じがするんですよね。加蓮ちゃんがバランスとか言うの」
加蓮「……どういうこと?」
菜々「ナナ的にはもっとこう、勢いつけて! とか、後先考えず! とか、そういう方が盛り上がると思うんですよ。や、加蓮ちゃんの計画もスゴイと思いますけどね?」
加蓮「まあ確かに、我ながら大人しすぎるなぁとは思ってたかな」
藍子「……」
加蓮「実際、どうしたらいいのかな。菜々ちゃんだけで勢いは十分とれると思うけど、その後かぁ……」
菜々「考えてみると難しいですね……Pさんの苦労が偲ばれます、ええ」
藍子「――あのっ!」
加蓮「ん?」
藍子「あの、ちょっと練習しませんかっ……? 体を動かしてみた方が分かることだって、あると思いますから! …………ねっ?」
加蓮「忘れそうになってたよ。藍子ってパッショングループだったよね」
菜々「当たって砕けるのも、アイドルの特徴ですね!」
藍子「はいっ♪」

……。

…………。

加蓮「ぷはっ! ……ごめん、もー無理、げほっ」ドサッ
藍子「か、加蓮ちゃん、大丈夫ですか!?」
加蓮「だいじょーぶだいじょーぶ、いつもことだから」
藍子「でもっ、こんなに汗かいて……!」フキフキ
加蓮「ちょっと熱くなりすぎたかな……」
菜々「……」
藍子「スポーツドリンク持ってきますのでじっとしててください! ……持ってきましたっ! はいっ加蓮ちゃん!」
加蓮「ん……(ごくごく)ぷは。……ごめん、ちょっと頭が働いてない」ドサッ
藍子「加蓮ちゃん! あ、あの、菜々さん、……菜々さん?」
菜々「はっ。つい意識がウサミン星にっ。ええと藍子ちゃん、どうしました?」
藍子「加蓮ちゃんこれ大丈夫なんですか!? すっごく息が荒くなって……体もすごく熱くて……!」
菜々「いつも無茶してますからね……加蓮ちゃん、大丈夫ですかー?」
加蓮「だい、じょぶ、ちょっとだけ、ね?」
藍子「……っ!」
菜々「……まあナナもあまり強いことは言えませんけど、加蓮ちゃんだって自分のコントロールくらいはできてるでしょうから」
藍子「でもっ……」
菜々「……それに加蓮ちゃん、なんで笑ってるんですか?」
藍子「え?」
加蓮「あ、わかった……? よいしょっと……なんか、体力のなさを呪う気持ちもあるけど、それよりも楽しくなっちゃって。ふふっ」
藍子「まだ横になっててください!」
加蓮「はーい……」
菜々「――加蓮ちゃん。藍子ちゃんも。聞くだけでいいです。ちょっと聞いてください」
藍子「っ……はい」
加蓮「なに?」
菜々「加蓮ちゃんを心配している藍子ちゃんの気持ちも分かります。ナナも心配です。でもそれ以上に、ナナはさっきの練習中の加蓮ちゃんから目が離せなかったんです。今までナナが見たことないくらい楽しそうで、全力で歌っている加蓮ちゃんのことが」
藍子「……!」
菜々「それで思ったんです。ナナ達のLIVEなんですけど……好き勝手にやりませんか?」
藍子「好きに……?」
加蓮「ユニットなんだからそういう訳にはいかな……げほっ」
菜々「良い意味でですよ。だってさっきの練習だって、加蓮ちゃん、ナナや藍子ちゃんに関係なく思いっきりやってましたよね。それでも練習はうまくいったとナナは思います」
加蓮「……」
菜々「ナナも、加蓮ちゃんも、もちろん藍子ちゃんも。そんなに周りに気を遣わなくても、大丈夫だと思うんです」
藍子「……」
菜々「それよりは、それぞれがやりたいようにやって、ファンの皆さんに楽しんでもらった方がいいかな、なんて……あ、あはっ、ちょっとした思いつきですよ? そんなコワイ顔で見られたらナナ冷や汗が」
加蓮「ううん。そっか、そうだよね」
藍子「……私、好きにやっても、大丈夫なんでしょうか。おふたりに迷惑をかけてしまいそうで」
加蓮「ないない。逆に気を遣われた方がやり辛いな、私は」
菜々「ナナもですよ! いっぱい迷惑をかけてください。ナナはなんとかしてみせます!」
藍子「……」
加蓮「それよりは藍子の本気を見てみたいかな。私たちばっかり見てるんじゃなくてさ」
菜々「そうですね! 藍子ちゃんの全力があって、やっとこのユニットは完成する気がするって電波を受信しました!」
藍子「――はいっ! おふたりに頑張ってついていく……ううん、追い抜いてみせます!」
菜々「どんと来いですよ!」
加蓮「指針が決まったね。ユニット『クリスマスメモリーズ』のモットーは、『みんなが好き勝手にやること』ってことで」
菜々「今度のドリームLIVEフェスティバル、絶対に勝ちましょうね!」
藍子「はいっ♪」
加蓮「うん、思いっきりやろうか……!」




掲載日:2015年6月9日

 

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