「IF:その提案はまだできないし、その呼び方はまだ変わらない」






前回のあらすじ!
加蓮と藍子が2年ぶりに再会したよ!


――事務所――
北条加蓮「こんにちはー。あれ、菜々さん? 机いっぱいに何置いてるの?」
安部菜々「加蓮ちゃん! 今日も元気いっぱいですね! さあ今日もご一緒に、うっさ」
加蓮「よいしょっと。寒いと歩くだけで体温がおかしくなるね」ソファニスワリ
菜々「…………」ブーブー
加蓮「……逆にさ、私がノリノリで付き合いだしたらどうする?」
菜々「夢だと疑いますね」
加蓮「そういうこと」
菜々「でもちょっとくらい付き合ってくれてもいいじゃないですか!」
加蓮「キャラじゃないし。それで菜々さ……菜々ちゃん。これ、ネイルの道具?」
菜々「あっ、そうなんですよ! 加蓮ちゃん、ネイルに詳しかったですよね?」
加蓮「それなりには……うわっ、このキューティクルオイル、高いヤツじゃん。なになに、本格的に始めるの?」
菜々「あー、これはお母さんが譲ってくれたもので」
加蓮「ふうん。あ、こっちのトップコートは安物だ。駄目だよ変なの買っちゃ。爪が傷んじゃうから」
菜々「とりあえずお試しって感じで揃えてみたところです。加蓮ちゃんが言うならまた探してみましょうか」
加蓮「で、私に教えろって?」
菜々「ずっと前から興味はあったんですよねー。機会がなかったんですけど、そういうのもいいんじゃないかってPさんから提案されたので、是非とも!」
加蓮「いいけど、教えることなんてそんなにないよ? やりたいようにやるものだもん、ネイルなんて」
菜々「いえいえ、こういうのは一緒にやるから楽しいんですよ!」
加蓮「私は1人でコツコツやる方が好きかな? ……ところで」

加蓮「藍子はなんでそこで隠れてるの?」

高森藍子「っ」
菜々「あれ、藍子ちゃん来てたんですか」
加蓮「なんかずっとそこにいたけど、入るでもないし話しかけてくるでもないし。ちょっと不気味だったからさ」
藍子「ご、ごめんなさい。おふたりを見かけて、話しかけようとしたんですけど、邪魔になるのも悪くて……」
加蓮「は? 邪魔?」
菜々「とんでもないですよ! ほらほら、藍子ちゃんもこっちに、ここ座ってください!」グイグイ
藍子「きゃっ」ポスッ
加蓮「今、菜々ちゃんにネイルを教えるところだったんだ」
菜々「藍子ちゃんも一緒にどうですか?」
藍子「ネイル、ですか……?」
加蓮「私の趣味。でも、この道具を持ってきたのは菜々ちゃんだよ」
菜々「加蓮ちゃんは今日はネイルの道具を持ってきていないんですか?」
加蓮「いつも持ち歩いている訳じゃないし、事務所で付け替えるってこともしないからなー。ごめんね、言ってくれればもってくるから」
菜々「是非ともお願いします!」
藍子「わっ、これすっごく綺麗な色……加蓮ちゃんの爪と、似ていますね」
加蓮「朝に軽くしてきたんだ。どう、似合う?」
藍子「はい、すごく似合ってます♪」
菜々「紫色が目にキツく見えないなんて久々ですよ」
加蓮「といっても、これは塗るタイプじゃなくてつけるタイプだけどね」
菜々「つけ爪ってヤツですね」
加蓮「楽って言えば楽だよ。……それにしても菜々ちゃん、なんでいきなりネイル?」
藍子「菜々さんも、趣味とかですか?」
菜々「いやあ、ナナは趣味ではないんですけど、加蓮ちゃんがやっているのを見たら気になったんですよねぇ。こうしてると、加蓮ちゃんの気持ちも分かるかなぁ……なんて、ちょっとクサかったですかね? キャハッ☆」
加蓮「ふーん……」
藍子「すっごく素敵だと思いますっ」

菜々「そうだっ。どうせですから加蓮ちゃんも、趣味を真似てみたらどうですか?」
加蓮「真似?」
菜々「藍子ちゃんの趣味は……散歩でしたっけ?」
藍子「あ、はいっ。一応、プロフィールの方には『近所の公園を散歩』って書いてもらってます」
加蓮「散歩かぁ……何年もやっていないな、そんなの」
藍子「すっごく面白いんですよ。見知った場所も、行く度に違って見えて。同じ方がいらっしゃったり違う方がいらっしゃったり、それに場所によっては露店が開いていたりして」
加蓮「へー……」
藍子「公園への道にも、すてきなお店がいっぱいあって。雑貨屋さんも、お菓子屋さんも、ついふらっと立ち入っちゃいますっ」
菜々「ほほー……」
藍子「それから……、あっ、ご、ごめんなさい。つい熱くなってしまって……」カアア
菜々「いやいやー。でもちょっと意外でしたね。藍子ちゃんがこんな熱くなるキャラだったなんて」
藍子「うう、よく言われます……」
加蓮「そう? 1stアニバの時のLIVEとか、藍子すごくパッションっぽかったよ?」
藍子「え……お、覚えててくれたんですか!? LIVEした時のこと!」
加蓮「さすがにね。さて、ネイルと散歩とってところで…………」
藍子「?」
加蓮「……ごめん、なんでもない。なんだっけ、散歩がいいって話?」
菜々「どうせだったら今から行ってきたらどうですか? 今日はまだ時間もあるんじゃ」
加蓮「いいけど……私が出たら、菜々ちゃんと藍子にネイルを教えられないよ?」
菜々「おっとっと。じゃあ基本だけでも教えてくれたら、後はナナの方で頑張ってみますから!」
加蓮「ネイルってそこまで浅い話じゃないけど……ま、最初はマイペースでやった方がいいのかな。じゃあ、必要最低限のことだけ教えとくね」
菜々「よろしくお願いしますよ!」
加蓮「うん。じゃあまずマニキュアの塗り方なんだけど……」
藍子「……ふふっ♪」
加蓮「……って、そこで保護者気分に笑ってる藍子。何を他人ごとみたいに見てるのよ」
藍子「え……?」
加蓮「私、藍子にも教えているつもりなんだけど」
藍子「え、えっ!? そうだったんですか!?」
加蓮「……この状態で除け者にするキャラだって思われてるのかね、私」
菜々「加蓮ちゃんはひねくれ者ですし」
加蓮「おいこら、そこのウサミン星人はなぜ私をジト目で見る」
藍子「ご、ごめんなさい。そういうつもりじゃ、その」
加蓮「大丈夫大丈夫。多少、変な目で見られることは慣れてるから」
菜々「そういうところがひねくれ者って言ってるんですけどねぇ」
加蓮「ほら、藍子も。簡単なのでいいから、やろ?」
藍子「あ、はいっ」
加蓮「まずマニキュアだけど、慎重にやるよりささっとやった方が――」

菜々「できましたー! どうですか加蓮ちゃん藍子ちゃん、もっとウサミン星人っぽく見えますか!?」
藍子「星型ですね。すっごく素敵です!」
加蓮「はじめてにしてはうまいなぁ。菜々ちゃんってもしかしてすごく器用だったりする?」
菜々「ふっふっふ、グッズなどはだいたい自作ですからね」
加蓮「そういえばPさんとデザインの話してたっけ」
藍子「私も……できましたっ。菜々さんのに比べたら、地味かもしれないけど……」
加蓮「んー? お、うまく濡れてるね。橙色っていうのが藍子らしいな」
菜々「ちょっと手をこう広げて見せてくださいよ! ……やっぱり! これだけでだいぶイメージって変わるんですね」
藍子「そ、そうですか?」
加蓮「ネイルは地味なとこあるけど、やるとやらないとじゃぜんぜん違うからね。また教えてあげるよ、藍子」
藍子「あ、えっと、は、はいっ!」
加蓮「……なんで私相手に緊張するかなぁ」
菜々「気持ちは分かりますけどね。ところで加蓮ちゃん、ナナにも教えてくださいよ」
加蓮「え? 教えるまでもなさそうなんだけど」
菜々「仲間ハズレはやめてくださいよ!」


――今日の帰り道――
加蓮「……」
加蓮「……緊張してるのは、私の方なのに」
加蓮「言えなかったなぁ」
加蓮「藍子に、じゃあ次は菜々さんの趣味だね、とか」
加蓮「意地悪に笑う私とか」
加蓮「……菜々"ちゃん"だって」
加蓮「なんかやだなぁ、あの気を遣う目……」


掲載日:2015年6月8日

 

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