「IF:もしそれが2年ぶりならば」






――もしものお話。

――12月中旬 スタジオへの道中――
北条加蓮「……」
安部菜々「雪が降りそうな天気ですね。マフラー持ってきて正解でした! ……加蓮ちゃん? どうしましたか?」
加蓮「……ん、いや、ちょっとね」
菜々「加蓮ちゃんらしくありませんねえ。いつもお仕事となったらナナ顔負けの勢いで突っ走っていくのに」
加蓮「そうかな? 私、これでもクールキャラを心がけてるつもりなんだけど」
菜々「いえいえー。若いのっていいなぁっていつも思いますよ! ナナなんてすぐバテちゃって」
加蓮「17歳なのに?」
菜々「……って! 10年後のナナなら言うかもしれませんね!」
加蓮「いつも思うけど、菜々さんって変だよね」
菜々「変とは何ですか!」
加蓮「変」
菜々「ぐぬぬ……い、いいですか、確かにナナはちょっぴり変わったところもあるかもしれませんけどもっ、」
加蓮「……ちょっぴり?」
菜々「言っておきますけどね! 加蓮ちゃんも十分、変ですからね! ナナからすれば!」
加蓮「さすがに菜々さんと同列に並べられるのは心外だね」


――交差点の赤信号――
加蓮「っと」
菜々「ココアの温かさに癒やされますねー」
加蓮「寒い中を歩いてスタジオに来いって、Pさんも何考えてんだかね」
菜々「なんとも急にお仕事が入ったみたいですよ? 誰かがスタジオについてないからとかなんとか」
加蓮「サボり魔か」
菜々「い、いやいや、さすがに杏ちゃんだって収録をサボったりは」
加蓮「杏だもん」
菜々「ああ見えて杏ちゃんはスゴイですよ! 律儀っていうか、天才肌っていうか」
加蓮「天才、か……」


――スタジオへの道中――
加蓮「……たまに杏んちに行くことあるけど、杏のそういうとこってあんま好きじゃないんだよね」
菜々「おおっと舞台裏のドロドロとかナナ趣味じゃありませんよ」
加蓮「そこまで言うつもりはないかな。やりたいようにやってるのになんでもできるっていうのが、ちょっとムカつくってくらい」
菜々「はあ」
加蓮「もちろん、杏も裏で努力してることは知ってるんだけどね」
菜々「なかなか割り切れないことってありますよねー。わかりますわかります」
加蓮「たださ、いくらなんでも面と向かって嫌いだとか言えないじゃん」
菜々「杏ちゃんなら気にしないと思いますよ?」
加蓮「それでも。私には私なりのキャラとかプライドってあるし」
菜々「まあ、誰彼構わず嫌い嫌いって言う人はナナもちょっと」
加蓮「それでも思うんだ。人を嫌いになれることって、大切なんじゃないかって」
菜々「嫌いになれること……?」
加蓮「親でも友達でも、いいところばっかり見て生きていくのって疲れない?」
菜々「分かるような分からないようなですねえ。ナナは考えたことありません」


――赤信号で止まる――
菜々「じゃあ試しにナナのこと嫌いって言ってみてください! ……なんですかその『えー……?』って顔は! 加蓮ちゃんがやりたいって言うから提案したのに!」
加蓮「いや、さすがに……ね?」
菜々「はぁ。分かりましたよ。ナナの言い方が悪かったですー」
加蓮「それに私、菜々さんのことあんまり嫌いじゃないし」
菜々「それは喜べばいいんですか?」
加蓮「喜べばいいんじゃないかな」
菜々「嫌いになることって大切だと思うって言ってたのに?」
加蓮「大切と必要は違うでしょ。それに、菜々さんはなぁ……」
菜々「おっと青信号ですね。それで、ナナが何ですか?」テクテク
加蓮「うーん……よくさ、自分と同じタイプの人が嫌だって意見があるじゃん」テクテク
菜々「ありますねぇ」
加蓮「私は逆なんだ。自分と同じタイプの人が好き」
菜々「ってことは加蓮ちゃんもついにウサミン星人の仲間入りに!」
加蓮「そこでその発想が出てくるかー」


――スタジオの入口前――
菜々「はいっ、収録予定の、そうですよ、ウサミン星からやってきたナナで〜す! え、サインですか? しょうがないですねえ、はいっ♪」
加蓮「うん。やっぱり菜々さんは嫌いになれないよ」
菜々「見てくださいこれ。警備の方がご苦労様ってココアをくれました!」
加蓮「さっきも飲んでなかった?」
菜々「今日は身にしみる寒さですからね」
加蓮「そろそろ寒さが堪える年か」
菜々「そうなんですよ〜ここ数年は以前にも増して朝に起きるのが辛く……って、お、お母さんが」
加蓮「はいはい。ふふっ」


――スタジオ入口――
加蓮「おはようございまーす」
菜々「おはようございますっ♪ 加蓮ちゃんもほら、もっと元気に!」
加蓮「はーい。……あ、おはようございますっ!」
菜々「待機室はこっちですね! だそうですよ、加蓮ちゃん!」
加蓮「ん」
菜々「こうしていると、まるで加蓮ちゃんの付き添いで来たお母さんの気分ですよ」
加蓮「そ、そう」
菜々「なんだかいろんな話が未完のまま終わってますね。えーと、何のお話をしてましたっけ」
加蓮「雑談なんてそんなもんでしょ。別に、討論してる訳じゃないし」
菜々「まま、加蓮ちゃんのお悩み相談ならいつでもお受けしますよっ」
加蓮「ありがと」
菜々「…………真面目な話、もっと身近に相談できる同年代がいればいいんですけど」
加蓮「ふふっ、なにそれ、お節介?」
菜々「いやいやマジにマジな話」
加蓮「ま、凛や奈緒には相談できないことってあるし、それ以外となるとね……」
菜々「他にも、加蓮ちゃんが胸を張って嫌いって言える人とかいればいいんですけどねえ」
加蓮「……そうだね」


――スタジオ内部――
加蓮「…………」
菜々「ん? どうしましたか加蓮ちゃん。まさか具合が悪――」
加蓮「違! あ、あのね、菜々さん。笑わないで聞いてほしいんだけど」
菜々「はい」
加蓮「私、すごく緊張する……!」
菜々「あー、2年ぶりなんでしたっけ?」
加蓮「こういうの初めてで……! 私どうしたらいいのかな、えっと」
菜々「気にしなくていいと思いますよ! なんだかんだ同じ事務所なんですから、ちょっと見かけるくらい何度もあったでしょうし!」
加蓮「それとこれとは」
菜々「どっちみちユニット組むんですから、ここで尻込みしてても。ほら、加蓮ちゃんらしくありませんよ!」
加蓮「う、うう」
菜々「ほらほら!」グイグイ
加蓮「待って、待って菜々さん! ……分かった! 腹は括るから5秒だけ待って!」
菜々「しょうがないですねえ」
加蓮「すー、はー……すぅー……」
菜々「成長を見せつけるってくらいでいいと思いますよ。ナナは昔の加蓮ちゃんをあまり知りませんけど、すごく成長したってことはPさんから何度も聞きましたから!」
加蓮「……そうだよね……大丈夫、大丈夫……」
菜々「さ、いきましょ?」
加蓮「うん。……2年だもんね。私はもう、昔の私じゃないんだ」
菜々「半年しか見てないナナでも保証します!」
加蓮「ふふっ……らしくなく怖気づいちゃったな。ごめんね菜々さん。行こっか」
菜々「女は度胸ですよ!」

(ガチャ……)


――お久しぶりです、加蓮ちゃん
――うん。久しぶりだね、藍子


――12年11月登場、[アニバーサリーゴシック]北条加蓮・[アニバーサリーイエロー]高森藍子
――14年4月登場、[夜宴の白芙蓉]北条加蓮・[スペース☆ウサミン]安部菜々
――14年11月登場、[希望の聖夜]北条加蓮・[まごころプレゼント]高森藍子



掲載日:2015年6月6日

 

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