「まずは友達を増やすこと」





――事務所――
相葉夕美「こんにちはーっ♪ 藍子ちゃん、いるー?」
高森藍子「……?」ヒョコッ
藍子「あ、夕美さん! こんにちはっ」
藍子「今日はどうしたんですか? そうだっ。ちょうど今、お茶でも飲もうかなって思ってたところなんです。夕美さんもよかったら……」
夕美「いいの? ありがとっ。あ、それならさ、2人分をお願いできるかなっ?」
藍子「2人分、ですか?」
夕美「うん。ほたるちゃんの分!」
藍子「……ほたるちゃん?」
夕美「ほたるちゃーん! 出入り口のところに立ってないでこっち来なよーっ。大丈夫大丈夫、転んだらすぐ抱きかかえてあげるから♪」
ほたる「は、はい……っ」テクテク
ほたる「…………」テクテク
ほたる「…………」ソファニスワル
ほたる「ほっ……」
藍子「もしかして、夕美さんの部署に入った新人さんって……」
夕美「そだよっ。ほたるちゃん、こっちは藍子ちゃん! いっつものんびりしてる子で、すっごく優しいんだ!」
ほたる「初めまして……白菊ほたるです。その、すみません」
藍子「……? 高森藍子ですっ」
夕美「ほたるちゃん、ちょっぴり人見知りっていうか……ほら、初めて行くお店とかって緊張しないかな? それと同じなの」
藍子「なるほど……。じゃあ、できるだけ緊張しないように……その、私にできることがあったら言ってくださいね」
夕美「うんっ。ほたるちゃんも」
ほたる「…………」コク
藍子「あ、私、お茶を入れてきますっ。夕美さんはジャスミンティーですよね。ほたるちゃ……ええと、ほたるさんは……」
夕美「……ふふふ」
藍子「夕美さん?」
夕美「実はね、ほたるちゃんってこう見えても13歳なの!」
藍子「へ?」
ほたる「は、はい、13歳です……すみません」
藍子「……えええっ!?」
夕美「あははっ、Pさんみたいな反応してる!」
藍子「そ、そうなんですか……びっくりしたぁ。私、夕美さんと同じくらいだって思っちゃって……じゃあ、ほたるちゃん♪」
ほたる「は、はいっ、すみません!」
藍子「あはは、謝らなくていいですよ。ほたるちゃんは、何が飲みたいですか?」
ほたる「あの……私は、お水だけでも……」
夕美「遠慮なんていらないよっ。藍子ちゃんはね、誰か来たらすぐにお茶を淹れたがるんだ。ねー?」
藍子「そうかもしれませんねっ」
ほたる「それなら……紅茶で、いいですか?」
藍子「はい、分かりました♪ じゃあ少し待っててくださいね――」スクッ

藍子「お待たせしました! ジャスミンティーと、紅茶ですっ」スッ
夕美「ありがと〜!」
ほたる「ありがとう……ございます」ペコッ
夕美「藍子ちゃんはオレンジジュースなんだ」
藍子「缶ジュースが、1つだけ見つかったので。よければ飲みますか?」
夕美「ううんっ、藍子ちゃんが見つけたんだもん、藍子ちゃんが飲みなよ!」
藍子「ふふっ、そうします」ゴクゴク
夕美「いただきます」ゴクゴク
夕美「……〜〜〜♪」
ほたる「…………」ジー
夕美「……? ほたるちゃん、どうかした?」
ほたる「あ、いえ……いただきます」ゴクゴク
ほたる「あ……、……美味しい……」
夕美「良かったね♪」
藍子「はいっ♪」
ほたる「…………♪」ゴクゴク
夕美「幸せだって顔してるねっ」
ほたる「ぇ……あ、ご、ごめんなさい」
夕美「ううん、謝らなくても大丈夫! ほたるちゃんが幸せそうにしてたら、私も嬉しいからっ」
藍子「ふふっ。仲良しなんですね」
夕美「うん! ほたるちゃんをスカウトに行った時に私もいたんだ。なかなか上手くできなくて、ついPさんと一緒にムキになっちゃったっ」
夕美「ほたるちゃんね、その……いろんな不幸、ううん、不運が続いちゃって、ちょっと落ち込んでることが多くて」
夕美「だから幸せそうにしてたら、私まで嬉しくなっちゃうの」
藍子「そうだったんですか……」
ほたる「…………」メヲフセ
夕美「藍子ちゃんも、ほたるちゃんが幸せになれるように協力してほしいなっ」
藍子「はい、もちろんです!」
夕美「ふふ、ありがと。よかったね、ほたるちゃん♪」
ほたる「はい……その、ご迷惑をかけますが……よろしくお願いします」ペコ
藍子「私こそっ」ペコッ
夕美「そういえば藍子ちゃん、今日は加蓮ちゃんと菜々ちゃんいないの? 2人にも紹介したかったんだけどなぁ」
藍子「ええと……確か、菜々さんはロケで、今日はもう帰ってこないって朝に言ってました」
夕美「あちゃ、バッドタイミングっ」
藍子「加蓮ちゃんは……その……」
夕美「……もしかしてまだ揉めちゃってる?」
藍子「揉めてる、っていうより……ううん……」エート
藍子「……今が修羅場……?」
夕美「そ、そうなんだ……。いっつも大変そうだね、加蓮ちゃんって」
藍子「加蓮ちゃん、気難しいところがあるから……。でもみんなも、きっと分かってくれます」
藍子「また、いろんな方と楽しそうにしている加蓮ちゃんを、私は待っているんです」
藍子「今度こそ、ちゃんと待って、おかえりなさいって言ってみせますからっ」グッ
夕美「頑張れ、藍子ちゃん!」
ほたる「…………」ボー
夕美「あ、ごめんねほたるちゃん! こっちの部署にはあと2人、ちょっとひねくれちゃってるけどアイドルのことはすごい一生懸命な子と、……ええと……い、いろいろとすごいけどアイドルのこともやっぱりすごい人がいるの!」
夕美「ほたるちゃんも、運が良ければ会えると思うよっ」
ほたる「運が良ければ……」ハァ
夕美「ああっ、ごめんね! ええとほらじゃあ2人に出会えたらラッキーだって思おっか! ねっ」
ほたる「…………」
夕美「うぅ……」
藍子「夕美さん、ほたるちゃん……」ハラハラ
ほたる「……いえ……でも、ほんの少しだけ」
ほたる「夕美さんがいてくれれば、大丈夫かなって……最近は、思えるようになりました」
夕美「ホント!?」
ほたる「夕美さんや、プロデューサーさんや……泰葉さんは、まだちょっと、その、恐いですけれど……」
ほたる「私、幸せになりにここに来ましたから」
ほたる「ちょっとずつ……」
ほたる「……ちょっとずつ」ゴクゴク
夕美「うん、ちょっとずつ頑張ろう! 焦ってもなんにもいいことなんてないよっ。ね、藍子ちゃん!」
藍子「はいっ♪ ゆっくりやっていきましょう。アイドルは忙しいから、のんびりできる時間を大切に……」
ほたる「……私も、忙しいアイドルになれるでしょうか……?」
夕美「なれるよ! 昨日だってトレーナーさんすっごく褒めてたじゃん!」
藍子「そうなんですか?」
夕美「うんうん。もしかしたらすぐに藍子ちゃんのライバルになっちゃったりして!」
藍子「ええっ。それはその……困りますっ」
夕美「そうしたら、またLIVEバトルになるのかな? 今度は私が敵だね♪」
藍子「夕美さんまで!」
ほたる「そ、そんなにすぐには…………でも、ちょっとずつなら、頑張りたい、です……」
夕美「ほたるちゃんとってもやる気だね! それじゃ――藍子ちゃん、お茶ごちそうさまっ。すっごく美味しかったよ♪」
藍子「そうですか? よかったっ」
夕美「お昼からも頑張っていこっか! ほたるちゃん、ちょっとだけレッスンやってかない? Pさんが帰ってくるまでだけでも、ね?」
ほたる「で、でも私、まだ――」
夕美「いーからいーから。さ、行こっ」グイ
ほたる「きゃっ……」
夕美「藍子ちゃん、またねー♪」
藍子「はいっ。また来てくださいね、夕美さん」

<バタン

藍子「……ふふっ」
藍子「夕美さん、今日も楽しそう……♪」


掲載日:2015年11月24日

 

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