「  と女子の関係」





- SIDE Shinobu -
事務所の入り口で加蓮とすれ違った。
アタシは何も言わなかったし、加蓮も何も言わなかった。


――アパレルショップ――
女性P「見て見て忍。こんなのどう?」
工藤忍「Pさん、それちょっと派手すぎない? いくら都会って言っても……アタシ、そんなの着て歩くなんてちょっと恥ずかしいよ」
女性P「えー、忍なら着こなせると思うんだけど、無理ー?」
忍「無理。着るならもっと可愛いかカッコいいのがいいな。アイドルだって感じのヤツ!」
女性P「私服は変装用も兼ねてるんだから、あんまりオシャレすぎるとアイドルバレしちゃうわよ」
忍「……実はそういうのちょっと憧れてるんだ。今までアイドルバレって一度もなかったし、騒がれてみたいなー、なんて……」
女性P「それで誰が苦労するかも知らないでー」ワシャワシャ
忍「うぁー。ごめんなさいPさん。でも……ふふっ♪」
女性P「艶々しい顔しちゃって。じゃあ、こういうセーターは?」
忍「モコモコすぎて動きにくいよ」
女性P「それなら、こっちのニット!」
忍「こういうのならアタシ持ってるし……」
女性P「注文多いぞ〜? いつの間にかファッショングルメっぽくなってないかしら忍。選り好みしてるとねー、何時間も経ってねー」
忍「こだわれって言ったのPさんじゃん。アイドルだもん、普段のオシャレから妥協はしたくないな」
女性P「おねーさん忍を見てるとたまに自分のテキトーさ加減が嫌になってくるよ」
忍「確かにPさん、服装とかすっごくラフだよね」
女性P「私はアイドルじゃないしー、オシャレとかめんどくさいし」
忍「そうなんだ……あっ、こっちのシャツとかいいかも! でも冬用のフレアスカートと合わせにくいかな……もっと別のがあれば……」ガサゴソ
忍「冬服を合わせるのも難しいね。都会の流行に合わせてっていうのもなかなかできないな……。Pさん、何かいい方法ない?」
女性P「とりあえず片っ端から試着してみたらいいんじゃないの。頭で考えるからごっちゃになることもあるし、忍は考えるより動く派でしょー?」
忍「なるほど……そうかも! じゃあPさん、アタシちょっといくつか試してみる!」
女性P「いてらー。はー、おねーさんもあと10年若かったら忍みたいにいろいろと……いやいや考えるまい」
女性P「……はー。忍と買い物なんて久しぶりだなー」
女性P「忍ってこんなに眩しい子だっけ……いやいや、もしかしたら私が老けた……!?」
忍「Pさん、試着終わったよ、どうかな――え、何してんの? なんで膝ついてぶつぶつ言ってんの……?」
女性P「ああ忍……ねえ忍、おねーさんって老けてる? ババア?」
忍「いきなり何さ……。そんなことないと思うけど」
女性P「だよねぇ……ああ、忍。いいね、似合ってるわよ。流行とはちょっと違うけれど忍らしいって感じ。その方がいいんじゃない?」
忍「そうかな……? 田舎っぽくない? やっぱりPさんが出したような派手なくらいの方が……」
女性P「ううん、あれはおねーさんが悪かったわ。忍はそれくらいがちょうどいいの。派手すぎず地味すぎず。シンプルイズベスト!」
女性P「あんまり他の人と比較しすぎると、忍の良さがなくなっちゃうもの。自分らしくいきましょっ」
忍「……うんっ。じゃあアタシ、今日はこれにする」
忍「Pさんもせっかくだから何か買っていきなよ。今度はアタシが選んであげるね!」グイ
女性P「え、私? ちょっ、おねーさんはだぼだぼが一番――」
忍「オシャレなアイドルには、やっぱりオシャレなプロデューサーさんがいなきゃ!」
女性P「だからってフリフリのスカートとかイタイ! イタイから! フリフリスカートは痛いって!」

<へくちっ ウワサでもされてるんですかね
<20代の話をしてたりして
<なんでそれでナナのことになるんですかねぇ!

忍「事務所の方から何か聞こえたような……?」
忍「ううん、それよりPさん! Pさんけっこう若く見えるんだから、ちょっと冒険しても大丈夫だよ!」
女性P「そ……そお?」
忍「だって前にフリルドスクエアとPさんと一緒にボウリング行った時、みなさん学生ですか? って聞かれたじゃん。あれきっとPさんも入ってたよ!」
女性P「あはは、まったく忍ったら。そんなこと言ったらおねーさん調子乗っちゃうぞ?」
忍「乗っちゃえ乗っちゃえ!」
女性P「ようしっ、忍も顔負けなくらい現代っ子になってやるんだから!」


――事務所――
忍「ただいまー」P「たっだいまぁ♪」
男性P「おー、お帰り、忍ちゃんに…………何だお前、その全力で若作りしたみたいな格好、」

<ごすっ


――事務所――
忍「じゃあアタシ帰るね! Pさん、今日は買い物に付き合ってくれてありがと! 今度またお礼するからっ、じゃあね!」
<バタン
女性P「またねー」
男性P「イテテ……」プルプル
女性P「……や、おねーさんたいていのことは許しちゃう寛容な心の持ち主なんだけど、出会い頭に若作りとかないわー。そんなの20代30代の女性に言ってみなさいよ、一発で袋叩きよ袋叩き」
男性P「おかしいなぁ、ウサミンはいつも乗ってくれるんだが」
女性P「あらゆる部分が規格外の子を参考にしちゃ駄目でしょ。さっすが、加蓮ちゃんがデリカシーないって言うだけはあるわー」ジトー
男性P「うっせえ」
女性P「……加蓮ちゃんって言えばさ。最近どうしてる? なーんかここんところばったり見なくなったけど」
男性P「え? いや、アイツ普通に事務所に来てるぞ? そりゃ撮影やら何やらで1日空けてることもあるけど……」
女性P「あれ、そう? あー、もしかして何か抱えてたり? 前にすれ違った時にすごい全力で走ってったっていうか逃げられたっぽいのよー」
男性P「そうだな……。何か抱えてるのは抱えてると思うんだが、俺が聞いても何も答えてくれないんだよ」
女性P「あらま」
男性P「大丈夫、いつも通り、って一点張りで。藍子や菜々、柚ちゃんにも話してないみたいだし」
女性P「あー、柚ちゃんって言えば、加蓮ちゃん最近ずっと家に帰ってないみたいよ?」
男性P「…………は?」
女性P「1人で寝るの寂しいって言ってたわ。おねーさんが誘ってもヤダって言うんだけどねーあっはっは、加蓮ちゃんを待つんだって毎日言ってるんだけどねあっはっは、うん、やっぱ加蓮ちゃんは敵だわ。私の柚を返せ〜」
男性P「…………」
女性P「…………もしかして知らなかったの?」
男性P「……前に菜々の家に泊まる的な会話をしてたのは聞いたんだが、ずっと家に帰ってないのか……」
女性P「あちゃぁ」
男性P「この前の西日本ツアーからこっち、泊まりがけのロケもツアーもないから――…………西日本ツアー? まさかアイツ……」
女性P「ネットでぶっ叩かれてたヤツ? 忍は気にしてないって言ってたけど見られたのは失敗だったわー。やっぱあんなのアイドルに見せないに越したことないわよねぇ」
女性P「もしかして加蓮ちゃん、そういうとこ繊細? そうは見えないけど人は見かけによらないって言うもんねー、あるいはデリケートだったりするのかも」
男性P「いや……アイツ自身は大丈夫な筈だけど……」
女性P「けど?」
男性P「悪い、明日ちょっとまた加蓮に聞いてみるわ。もしかしたら今の時点では避けられてるのかもしれない。すまん」
女性P「ちょ、それはっきり言う……って、はっきり言うわよねぇアンタは」
女性P「はいはい、おねーさんちょっとやそっとじゃ傷1つ入らないから。しっかり大切な担当アイドルと向かいあってきなさいな」
男性P「ああ」
女性P「はー。おねーさんも柚と向かい合わなきゃ。このまま放っとくと柚の担当プロデューサーが加蓮ちゃんになったりするのかしら」
女性P「ゆ、許さんぞ、おねーさんの柚を! やっぱりあの時に加蓮ちゃんに任せたのがすべての間違い……でもだからこそ今の柚がいるわけで……もおおおおお!」
男性P「……? 何喚いてんのお前」
女性P「悩み多き乙女なの!」


掲載日:2015年11月19日

 

第187話「心篭と  の関係」へ 第189話「今日をもってうちの子に」へ

二次創作ページトップへ戻る

サイトトップに戻る

inserted by FC2 system