「心篭と  の関係」





- SIDE Karen -
給湯室で忍とすれ違った。
私は何も言わなかったし、忍も何も言わなかった。


――事務所の談話室――

テレビ<ミミミンミミミンウッサミーン!

安部菜々「うーん……こうして見るともうちょっとって感じですねぇ。もっとこう……派手さが足りない!」
高森藍子「ま、まだ派手にするつもりなんですか!? それだと私、もうついていけなくなっちゃう……!」
菜々「ほら、藍子ちゃんのLIVEの時ってすごくしっとりって感じじゃないですか。だからこそナナのLIVEの時には、どっかーん! ってやっちゃおうって!」
菜々「藍子ちゃんに無理をさせるつもりはありませんからね! 安心してください!」
藍子「それなら大丈夫……なのかな?」
菜々「ええ! 加蓮ちゃんはどうですか? もっとパフォーマンスとか弾けてもいいと思いますけど〜」
北条加蓮「…………ん、そうだね。やるなら極端にやった方がいいのかもね」
菜々「やっぱりですよね! ヨシ! 次の衣装とコールについてPさんに相談してみなきゃ!」
菜々「っと、おおっといけない、ナナとしたことが加蓮ちゃんのことを考えていませんでしたよ。加蓮ちゃんはどうするつもりですか?」
加蓮「私は今のままでいいよ。菜々さんと藍子の中間地点、でサプライズ付き」
菜々「ふむふむ。加蓮ちゃんは現状維持っと! でも加蓮ちゃんのボーカルパワーは無視できませんよねぇ。どうやったら加蓮ちゃんに喰われないでいるか!」
菜々「それに藍子ちゃんだって! ナナ、ピエロ役なんて嫌ですからね。藍子ちゃんの引き立てで終わるつもりもありませんし、バランスを考えなきゃ!」
藍子「菜々さんは、色々なことを考えるんですね」
菜々「もちろんですとも! 苦節ウン十年、ようやく掴み軌道に乗ったアイドル道、半端に終わらせることなんてできませんから!」
藍子「ふふっ。……ええと……17歳、ですよね?」
菜々「ハッ! じ、10年です! ほらナナ7歳の時にアイドルに憧れましたから! ナナだけに!」
藍子「ぷっ……な、ななだけに7歳、ななだけに7歳……あははっ……」
菜々「あれ、なんかウケてます?」
菜々「……ところで加蓮ちゃん、どうしました?」
加蓮「え? 何が?」
菜々「いや何がって言うか、今日は大人しすぎるって言いますか……普段はもっとこう、ナナがウン十年って言ったらまるで弱味を見つけたような顔になって突っ込んでくる筈なのに、今日はやけに大人しいじゃないですか」
加蓮「私と漫才でもやりたいの?」
菜々「そーいう訳ではありませんが! 調子が狂うっていうか、ともかくそんな感じですよ! いつもの加蓮ちゃんの方がナナも落ち着きますしね!」
菜々「もしかして何か悩みとかあったり? キャハッ、加蓮ちゃんは水臭いですね! ほらほらナナに相談してみてくださいよ、なんでも聞きますよ!」グイグイ
加蓮「引っ張らないでよ。悩みなんてないよ。突っ込まなかったのは単に――」
加蓮「うん、菜々さんが哀れすぎたからってことで」
菜々「やっぱりいつもの加蓮ちゃんだったーっ! 哀れってどういうことですか!? ナナやっぱりピエロですか!?」
加蓮「ウサミン星人じゃなかったの?」
菜々「ウサミン星にもサーカスはありますからね! そこでは日々、自らのウサミミをどうすれば輝かせるか日夜研究するウサミン星人たちが――」
藍子「あ、あははっ、あはっ……ふーっ、落ち着きましたっ」
加蓮「お帰り」
藍子「た、ただいま?」
菜々「あーもうグダグダですよぉ! とにかくLIVEの話です! 前回もたくさんのファン――もといウサミン星人が来てくれた訳ですが、」
菜々「……次もこうとは限りませんからね! 気を抜かずにやっていかなければっ」
藍子「はいっ。次も、頑張っていきましょう! 加蓮ちゃんもっ」
加蓮「……あ、うん、そうだね……」
菜々「こらこら加蓮ちゃん! 1人だけ達観してたら締まらないじゃないですか。ここは気合を入れて、ウサミーン、ファイト〜! ってやるところですよ!」
加蓮「もうちょっと別の掛け声ない?」
藍子「それなら、いぇいっ! で」
加蓮「そういうキャラだったっけ私……」
加蓮「……私って、どういう感じだったっけ……」
菜々「加蓮ちゃん?」
藍子「……あの、菜々さんじゃありませんけれど、やっぱり何か……この前にファミレスにお誘いした時も、なんだかキツそうにしてましたから」
菜々「そうなんですか? 藍子ちゃん」
藍子「はいっ。お店に入ろうとしたら、加蓮ちゃんがぼーっとしてて、その日は中止にしちゃったんですけれど……」
菜々「うーん……」
加蓮「…………別に、大丈夫だよ」
菜々「大丈夫じゃない顔ですね」
藍子「大丈夫じゃない顔です」
菜々「ちょっと作戦タイムで!」
加蓮「……?」

菜々「Pさんに相談してみますか? 加蓮ちゃんの様子がおかしいって」ヒソヒソ
藍子「でも、私たちのお話やPさんのミーティングもいつも通りに聞いているんです……」ヒソヒソ
菜々「そうなんですよねー。あ、でもナナもそういうことってありますよ! 普通に順調でうまくいってるのになぜか気分が乗らない時とか!」ヒソヒソ
藍子「あっ、私もあります。じゃあ今の加蓮ちゃんは……」ヒソヒソ
菜々「あくまで可能性の1つですけどね」ヒソヒソ

菜々「おまたせしました!」
加蓮「うん……もういいの?」
菜々「ええ! なんとなくもや〜っとしてる時は……やっぱりストレス発散ですね! そうだっ、せっかくですからこれからカラオケでも行きませんか? 思いっきり歌っちゃいましょー!」
藍子「いいですね♪ 今日は、みんなで菜々さんの歌を歌いましょうっ♪」
加蓮「…………」
菜々「そうと決まれば! ついでにコールも試せますし、せっかくですから藍子ちゃんの歌をどう歌うかとかもやってみましょっ♪」
藍子「加蓮ちゃんの歌もっ。私、実は今でもまだ上手く歌えなくて……加蓮ちゃん、どうやったら上手く歌えるか教えてください!」
菜々「大丈夫ですか、加蓮ちゃん?」
加蓮「うん、いいよ……あ、菜々さん。カラオケの後なんだけどさ、今日、菜々さんの家に泊まっていい?」
菜々「ミンっ? はぁ、まあナナはへっちゃらですけれどまた急ですねえ。さては家に帰りたくないとか? キャハッ、加蓮ちゃんもそういうお年頃なんですね☆」
加蓮「うん」
菜々「……アレ?」
藍子「加蓮ちゃん……?」
加蓮「……何? カラオケ行くんでしょ。行くなら早く行こうよ。歌える時間、減っちゃうよ?」
菜々「そ、そうですね! じゃあ早速行っちゃいましょう!」
藍子「はいっ」


――事務所――
相葉夕美「あっ、藍子ちゃん♪ 菜々ちゃんに加蓮ちゃんもっ」
藍子「夕美さん!」
加蓮「…………」
藍子「ふふっ、私たち、これからカラオケなんです。夕美さんもよければ一緒、に――」
加蓮「…………」グイ
藍子(加蓮ちゃん……?)
夕美「あははっ、お誘いありがとね♪ でもごめん、私もこれから買い物に行くんだ。ちょっと長くなりそうだし荷物も多くなるから、カラオケはまた今度にするよ!」
藍子「残念っ。じゃあまた今度、一緒に行きましょうっ」
夕美「うん! また誘ってね。じゃあまた明日♪」

<ほたるちゃーん! 準備できたー?

菜々「ほたるちゃん……? そんな名前の子、うちの事務所にいましたっけ?」
藍子「そういえば夕美さんの方の部署に1人、新人さんが来たみたいですよ」
菜々「へーっ、そうなんですか! また賑やかになっちゃいますね♪」
菜々「さ、行きましょ、藍子ちゃん加蓮ちゃん!」
藍子「はいっ」

<テクテク

藍子「……加蓮ちゃん? 夕美さん、もう行きましたよ」
加蓮「うん……」ギュ
藍子「…………大丈夫ですか?」
加蓮「別に、……なんでもない」



掲載日:2015年11月18日

 

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