「じーっと見られると、ねぇ?」





――事務所――
<ガチャ
アホP(以下「P」)「おっしゃあ! 今日こそ一番乗――」
岡崎泰葉「あ、おはようございますPさん」ペコッ
P「……………………」
泰葉「今日は打ち合わせと撮影ですよね。今日も、よろしくお願いします」
P「……ちっくしょー! 今日も泰葉に先越された!」
泰葉「?」
P「いや、俺な? 俺さ、泰葉より先に来てやってきた泰葉に『おはよう! さあ今日も頑張ろう!』って声かけてえんだよぅ」
P「今日も泰葉は可愛いなあって頭ぐしぐししてナデナデした――」
泰葉「…………?」ジー
P「……ごめんなさいなんでもありません」
泰葉「それは……頑張ってください、ね……?」
P「泰葉っていつ来てるん? 早くない?」
泰葉「そうでもないですよ。それに、アイドルとしてプロデューサーを待たせる訳にはいきませんから」
P「ぐ、ぐぬぬぅ。夕美からもっと柔らかくと言われたんじゃなかったのか!」
泰葉「柔らかく……あ、はい、言われました。でも私にはどうすればいいのか分からなくて……難しいですね」
P「真面目! もっとはっちゃけていいんだよ俺みたいに! 今日だってほら、セーターでモコモコにやってる泰葉ばんざー……」
泰葉「…………」ジー
P「い…………」ストン
P「…………」
P「さあ、今日も頑張ろうか」
泰葉「は、はあ……」

――5分後――
P「はい打ち合わせ終わりー」
泰葉「お疲れ様でした」ペコリ
P「泰葉と話してるとなんかプロデューサーやってるって気になるなぁ」
泰葉「どういう意味ですか?」
P「うーん、分かんね! あ、そうだあれだ泰葉。眼鏡かけて眼鏡!」
泰葉「また急ですね」
P「知的泰葉!」
P「ガチでアリだと思うんだ。理路整然とした分かりやすい説明。小学生のみんなもわかったー! って声を揃えられる解説!」
P「俺にも教えてくださいイロイロと!」
泰葉「……?? 私に教えられることがあるのでしたら……」ジー
P「……………………ハイ」
P「今日はフリルドさんとこのプロデューサーさんが車出すんだっけ? ごめんな泰葉、一緒に行けなくて」
泰葉「いえ。私に任せてください、Pさん。プロとして、期待には応えてみせますから」フフッ
P「泰葉はやっぱり頼りになるな!」
泰葉「それほどでも……」テレ
P「でもやっぱもっと柔らかくやっていいんだぞ? こう、やっほー! とか、いえーい! みたいに!」
泰葉「いえーい、は、その……お、お恥ずかしくて」
P「何を言うんだプロアイドル! ファンはそれを求めてるってバレンタインの時に分かったじゃないか!」
泰葉「それは分かりますけれど、でもあの……」
P「よし分かった! 車を出すまで練習してみよう! さあ泰葉、俺が泰葉ちゃーんって言うから泰葉はいえーい! って言うんだ!」
泰葉「え? え?」
P「せーのっ」
<ガチャ
夕美「おはようございまーすっ♪」
泰葉「い……いえいっ!」
P「泰葉ちゃーん!」
夕美「…………」
泰葉「…………」
P「…………」
夕美「…………」
泰葉「…………」
P「…………」
夕美「…………い、いえいっ?」
泰葉「…………!!」カァァ...
泰葉「Pさん……っ! やっぱりその、私はこういうのは……!」
P「……い、いやぁ可愛い! 可愛い泰葉でみんな幸せ! 少なくとも俺は幸せ!」
夕美「あ、うん、やっぱりPさんの差金だったんだね。泰葉ちゃんが可愛いっていうのは分かるけど……」
P「よし泰葉、今日も1日一緒に頑張るか! ……あ、夕美、おはよう」
夕美「なんか私の扱い軽くないかなぁ!?」
P「い、いやそんなことナイヨ? えっとぉ……き、今日も夕美とえっと、なんかしたいナァ」
夕美「無理して言わなくていいけどね!」
P「そんなことより泰葉がさー」
夕美「ほんっとPさん私の扱いひどいよね! もうっ……泰葉ちゃんが?」
P「堅い」
夕美「うん?」
P「もっとむにむにした泰葉が見たい」
泰葉「むにむに……??」
夕美「Pさんの表現は分かんないけど、つまり柔らかい泰葉ちゃんが見たいってこと?」
P「さすが夕美、以心伝心! 俺の嫁!」
夕美「お断りします。うーんっ、でも私、お仕事の時に真面目になってる泰葉ちゃん見るの楽しいけどなっ♪」ギュー
泰葉「ありがとうございます?」ダキシメラレ
P「そりゃあ俺だって好きだよ! でもさぁ、男はステーキとスイーツ両方食いてえ生き物なんだよ!」
夕美「女の子に向かって食べたいとか例えがサイアクだよPさん」
P「つまり世の野郎どもはキリッとした泰葉と可愛い泰葉の両方が見たい」
泰葉「可愛い私、ですか……」ウーン
P「くっそ、そうやって悩むのが既に可愛くて真面目だなぁ! ……あれ? ってことは泰葉って最強のアイドルなんじゃね?」
夕美「泰葉ちゃん泰葉ちゃん」
泰葉「はい、夕美さん」
夕美「にこっ♪」
泰葉「…………にこっ」
夕美「うーん、もっと柔らかくてもいいかなっ? 美味しい物を食べた時を思い出してみてっ♪」
泰葉「うーん…………」
泰葉「……にこっ♪」
夕美「そうそうそんな感じ! ってことでしょ、Pさんっ♪」
P「なにこの子すごい」
泰葉「じゃあ……今日の現場は、この笑顔で行ってみますね」
泰葉「あ……でも、美味しい物を食べた時の顔なんて、崩れすぎててアイドルとしてよくないのかも……」
夕美「そんなことないよっ」P「そんなことある筈がない!」
夕美「ちょっとPさん静かにしてて」P「夕美こそ俺の扱いヒドくない!?」
夕美「今は私がアドバイスしてるのー」P「俺はプロデューサーだ! 俺が指導する!」
泰葉「……くすっ」
夕美「あっ、泰葉ちゃん! 今のすごくいい笑顔だよっ♪」
泰葉「え?」
P「今のでファンが1万人増えるな。歩くアイドル野郎は倒れる・岡崎泰葉。よし、次のフレーズはこれで行こう」
泰葉「いい……笑顔、していましたか、私……?」
夕美「うんうんっ」
P「もし泰葉がサキュバスだったらあらゆる精を出し尽くしてもいい、そんな笑顔だ」キリッ
夕美「もうちょっと言い方ないかなぁ!?」
P「本能に忠実になりすぎた結果だ」キリッ
夕美「かっこ良く言っても無駄だからね!?」
泰葉「……ふふっ。じゃあ、困った時にはPさんと夕美さんのやり取りを思い出すことにしますね」
P「聞いたか夕美! 俺、泰葉の役に立ててる!」
夕美「よ、よかったね……?」アハハ
泰葉「あっ、そろそろ時間です。私は撮影に行ってきますので……」
P「よし夕美、見送りするぞ!」
夕美「大げさだよPさん。行ってらっしゃい、泰葉ちゃんっ♪」
泰葉「はい。またお昼に報告します。それでは、失礼しますね」ペコッ
<ガチャ
P「…………うーん、やっぱまだちょい堅いんだよなぁ。俺的にはこうもっと、えへへでへへってしててもいいと思うんだけどなぁ……」
夕美「泰葉ちゃん、ホントに真面目だよねっ♪ イタズラしようって思っても泰葉ちゃんを見ると無理だって思っちゃうよ」
P「まあ無理矢理もよくないな……。今んところはファンも順調に増えてるし。無理強いはよくねえな、よくねえ」
夕美「……普段から私にいろいろ教えてくる人が言うことかな、それ」ジトー
P「いやあほらそれだけ夕美のことを信頼してるってことだよもちろん泰葉のことも信頼してるけどなー」
夕美「はいはい。……うーん、レッスンまでまだ時間あるなぁ。花の世話でもしてよっと♪」
P「俺の世話(意味深)もしてく――」スタッ
夕美「ん?」ギロッ
P「ごめんなさいなんでもないです調子乗りました」スクッ
夕美「はぁーっ。もういいけどね? 泰葉ちゃんにはそういうことしちゃダメだよ?」
P「分かっておりますとも」
夕美「ホントかなぁ……」


掲載日:2015年11月2日

 

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