「ほかほかの肉じゃが」





――事務所の仕事部屋――
安部菜々「お待たせしましたっ! 肉じゃが、会心の出来ですよ!」
菜々「ナナとしてはあと1時間くらいじっくり味付けしたかったんですけどこういうのはスピード勝負ですからね! さ、加蓮ちゃん、藍子ちゃん、どうぞ!」
北条加蓮「いい匂い……いただきまーす!」ハムッ
高森藍子「私も、いただきますっ♪」ハムッ
藍子「……美味しい……! お肉が柔らかくて、甘くて……」
加蓮「じゃがいもも味が染みこんでるし、ホントにプロの味って感じ……!」
菜々「キャハッ☆ ほらほら、そこでお仕事中のPさんもっ♪ 少し手を止めて、一緒にお昼にしませんか?」
P「……え? 俺もいいの?」
菜々「もちろんですとも! Pさんの分もきっちりよそっていますからね。そうだっ、今、お茶を用意します!」タタッ
P「あ、ちょ……はは、さすが現役メイドアイドル」
加蓮「今でもたまに、お世話になったメイドカフェのヘルプに入ってるんだよね。前に手伝ってるの見たことあるけど、すごいなぁ……」モグモグ
藍子「メイドモードの菜々さんって、すっごくてきぱきしてて、まるでお昼のカフェの店員さんみたいです」モグモグ
P「菜々も菜々なりに、修羅場を乗り越えてるってことなんだろうな。……あ、ヤバイなこれ、うまい」
藍子「はいっ。私、おかわりしちゃおっかな……♪」
加蓮「太れ」ブニッ
藍子「ひゃうっ。ふ、太りませんよこれくらいじゃあ! ……たぶん」
加蓮「ふーん」ブニブニッ
藍子「わ、わき腹をつままないでくださいっ、こらーっ」
P「…………」フイッ
加蓮「ねーPさーん。藍子のお腹、こう見えてけっこうやわらか――」
藍子「やめてーっ!!」
菜々「お待たせしましたご主人様っ、じゃなくてみなさん! お茶をお持ち――あーはいはいまた加蓮ちゃんですか」
加蓮「ありがと菜々さん。そしてやっぱりってどういう意味」
藍子「ほっ……」
加蓮「はー、おいし♪ なんだか白ご飯が食べたくなってくるね」
菜々「おっ、加蓮ちゃんも分かりますか! こういう物を食べるとついご飯が進みますよね! ……でも残念ながらお米がなくなっちゃってたんですよ」
P「マジで? 確認してなかったな」
菜々「今日のお仕事の帰りにでも買ってきますよ。なんなら、実家から送ってもらってもいいですし」
加蓮「へー。ウサミン星のお米かー。どんな味がするんだろーねー?」ニヤニヤ
菜々「あっ……そ、それはもう美味しいご飯ですよ! ええ! 美味しいです!」
加蓮「ふふっ」
藍子「……」ハムハム
藍子「……」ゴクゴク
藍子「…………♪」ハムハム
P「食べるのに夢中、って感じだな」
菜々「作ったナナも冥利に尽きますね♪ ではナナも、いっただきまーす!」ハムッ
菜々「……!? あ、熱ううううううううう! お茶、お茶ーっ!」
加蓮「あーあ」
P「じゃがいも一気に入れたらああなるよな、分かる分かる」

加蓮「…………」モグモグ
P「…………」モグモグ
加蓮「…………」ジー
P「……? どうかしたか? 加蓮」
加蓮「あ、ううん。こうしてみんなでご飯を食べるなんて、久しぶりだなぁって思って」
P「そうか? そういえばそうかもな。忙しくなって、たいてい1人2人残ってるくらいだったもんな」
加蓮「うん。初めの頃、思い出しちゃった」
P「今じゃ売れっ子アイドルだもんなー。午後からのレコーディングもしっかり頼むぞ、加蓮」
加蓮「はーいっ。その為にも、しっかりと食べないとね」
菜々「おかわりもどうですか? って、あれっ、藍子ちゃんは?」
加蓮「藍子なら今まさに給湯室の方いったよ。皿を空っぽにして」
菜々「そ、そこまでとは。メイドカフェ時代の経験も、こうして活きるものですねぇ……」シミジミ
加蓮「…………(突っ込まないであげていよ)」
菜々「同じ(ピーッ)年の経験でも、加蓮ちゃんに怒鳴ったりするんじゃなくてこうして笑顔になっ――」
加蓮「菜々さん。気ぃ遣って何も言わなかったんだから自爆芸を重ねるのやめてよ……」
菜々「ハッ! え、ええと、ええと――」
加蓮「はいはい。じゃあ、菜々さんにいっぱい教えてもらおっかな? 私の知らない世界のこと」
菜々「うーん……それはナナ的にちょっと微妙ですねぇ」
加蓮「えー、なんで」
菜々「そりゃナナもたいがい普通じゃない人生ですよ? でもね、加蓮ちゃんだってこの先、1年2年、いえ10年20年と生きていく中で色々なことがある訳じゃないですか」
菜々「それを自分の目で見て欲しいと言いますか……この先は自分の目で確かめてみてくれ! ってヤツですよ」
加蓮「……そっか。そうだよね。ぜんぶ分かってる人生なんて面白くないもんね」
菜々「ええっ!」
加蓮「ふふっ。ところで菜々さん、自分の目で確かめてみてくれってヤツ……って、何? 例え話みたいに言ったけど、私そんなの聞いたことないよ?」
P「あー、それは昔のゲームの攻略本の常套句だな。終盤のネタバレを避ける為によく使われてたもんだ」
加蓮「ふーん……」モグモグ
菜々「え、ええっとぉ……その、ナナのおうちにはレトログッズがいっぱいあってですね……」
加蓮「ふーん……」モグモグ
菜々「せめて何かリアクションをー!」
加蓮「…………」モグモグ
加蓮(……まあ、菜々さんの自爆芸なんて今に始まった話じゃないけど)
加蓮(やっぱ気になるなぁ。なんで永遠の17歳なんて言ってるんだろ)

藍子「戻りましたっ」
菜々「おかえりなさいませー♪」
加蓮「おかえりー」
藍子「菜々さんの肉じゃが、美味しくて……つい、いっぱい入れちゃいましたっ」
P「おいおい、食べきれるのかそれ?」
加蓮「そういえば藍子にしてはやたら早く食べてたよね。珍しい」
藍子「あはは、つい……」イタダキマス
加蓮「じゃー私もおかわりもらってくるね」スタスタ

<ポイントはみりんとお砂糖の量なんですよ! それと、具材によって煮込む時間を――
<ふんふん、参考になりますっ
<俺も久々に自炊してみっかなぁ

加蓮「…………」(鍋を覗きこむ)
加蓮「……!?」

<それならナナが手伝いに行っちゃいましょうか!
<えっ
<な、菜々さんがPさんの家にですか? ……そ、それはだめーっ

加蓮「藍子オオオオオオオ!!」ドタドタ
藍子「ひゃあっ! な、なんですか加蓮ちゃんっ、今大切なお話をしようとしてたとこ――」
加蓮「鍋! 空っぽ! 私の分のお代わりは!? ねえ!?」
藍子「え、あ、その……あ、あはは」
加蓮「お皿に乗っけてるのちょっとよこしなさいよ!」
藍子「い、いやですっ」
加蓮「なにおう!?」
藍子「早いもの勝ちです!」
加蓮「よこしなさい〜〜〜!」

P「…………」ポカーン
菜々「…………」ポカーン
P「……何してんのあいつら?」
菜々「さ、さあ……」キャハッ

<ぐ、ぐぬぬ。今日の藍子のお菓子を没収しちゃるっ
<やめてください〜〜〜っ! 今日のおやつ、とっても楽しみにしていたプリンなんですっ!
<プリン。へー、プリン。よし、持って帰って柚へのお土産にしよ
<ダメ〜〜〜!

菜々「……加蓮ちゃんも藍子ちゃんも、16歳って感じですよねぇ。こうして見ると」
P「お、何だ? ジェネレーションギャップか安部菜々さんじゅうななさい」
菜々「違いますよ!? ただその、ほらっ、色々あったじゃないですか! だからよかったなってだけですよ!」
P「まあ、そうだな……」
P「……っと、ごちそうさまでした。ありがとな、菜々」
菜々「いえいえっ。またいつでも言ってください! メイドアイドル安部菜々、いつでもご主人様の為にご奉仕しちゃいますよ♪」
P「ははっ。さて、昼からも頑張るか!」
菜々「えいえいおー!」

<加蓮ちゃんいつも少食で済ませてるじゃないですか〜!
<私だって美味しい物はいっぱい食べたいのー!


掲載日:2015年10月28日

 

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