「アイドルだってアイドルに憧れる」





――ラジオの収録現場――
高森藍子「はいっ、またよろしくお願いします♪」ペコリ
藍子「……あ、加蓮ちゃん、柚ちゃん!」
北条加蓮「やほ、藍子。お疲れ。今日も絶好調じゃん」
喜多見柚「藍子サンっお疲れ様♪」
藍子「ありがとうございます。おふたりは今日は、収録ですか?」
加蓮「残念、学校帰りにそういえば今日って藍子が収録行ってるよねーって話になって」
柚「やることないし、寄ってみちゃったっ」
藍子「それでおふたりとも制服なんですね。私も今から帰るところなんです。よかったらご一緒に……あっ、でもPさんが」
加蓮「Pさんは……挨拶回りでもしてるのかな。そういえば藍子、もう収録は終わったの?」
藍子「はい。今、終わったところなんですよ」
加蓮「そっか。ってことは学校は午前だけ?」
藍子「いえ。午前は、別のお仕事が……宣材の撮り直しと、あと事務所でのインタビューがあって」
柚「藍子サン、売れっ子アイドルって感じですな〜」
藍子「あはっ、柚ちゃんだってそうじゃないですか♪」
加蓮「でも最近、なんか妙に忙しくなったよね藍子。学校とか大丈夫なの?」
藍子「なんとか配慮してもらっています。学校の先生にも、Pさんが説明してくださってて……」
加蓮「ならいいんだけど」
藍子「勉強とかで困ったら、加蓮ちゃん、助けてくださいね」
加蓮「えー。じゃあ今度、んー、あそこのマロンケーキ奢ってよ。ほら、駅前のカフェの新作」
藍子「はいっ。それなら、一緒に行きましょう!」
加蓮「うん。どうせだからテスト勉強もそこでしちゃおう」
藍子「いいですね。静かなお店ですし、きっと捗ります」
加蓮「うんうん」
柚「…………」プクー
加蓮「ん? ……膨れちゃってどしたの? 柚」
柚「なんかアタシ、おいてけぼりっ」
加蓮「あはは、ごめんごめん。別に空気なんて読まないで割り込んできていいのに。でもホント、最近の藍子は忙しそうだねー」
柚「アタシもそれくらいのアイドルになりたいなっ。たまにしか学校に行かなくなってー、ミステリアスっぽくなるカモ!」
加蓮「ミステリアス(笑)」
柚「なにおう!」
藍子「ふふっ」
柚「藍子サンまでー!」
藍子「あっ、違います違います! 加蓮ちゃんと柚ちゃんのやり取りが、ちょっと面白くてっ」
加蓮「だってさ、柚」
柚「へへっ♪」
加蓮「あそうだ。藍子、これ飲み物の差し入れ……って、収録が終わったなら遅かったかな?」
藍子「いえっ。ありがとうございます加蓮ちゃん! わぁ……ココア、暖かい♪」
柚「アタシからはこれ! 学校の友達に貰った飴、藍子サンにあげるっ」
藍子「柚ちゃんもありがとうございますっ。これで、喉もバッチリですね」
柚「バッチリだ!」

<高森さーん、ちょっといいですか?

藍子「あ、はーいっ! あの、ごめんなさいっ、私ちょっと……」
加蓮「行ってらっしゃい」
藍子「はい。あの、遅くなりそうならお先に帰ってていいですから!」タタッ

<すみませんっ、お待たせしました!
<いやいや。ええとですね、曲の告知の部分なんですが――

柚「藍子サンのラジオかー。アタシ聞いたことないや」
加蓮「確か……うん、明後日の午後9時からだね。パソコンでも聞けるから聞いてみる?」
柚「聞く聞く! じゃあ、お風呂早めに済ませちゃおうっ」
加蓮「だね。さて、どうしよっかな。Pさんがいれば何かできるんだけど……」
柚「おっ、加蓮サンもアイドルモードですかな?」
加蓮「せっかく現場に来たんだし、顔見せくらいはしとかないとね。あっ、Pさんいたっ。ほら柚、行くよっ」
柚「え、アタシも?」
加蓮「当たり前でしょ? アンタだってアイドルなんだから、仕事現場に来て挨拶だけしてはいさよならじゃ示しがつかないわよ」
柚「うーん」
加蓮「ほらほら、急がないとPさん次のお話始めちゃうっ」グイグイ
柚「わ、きゃっ、引っ張らないでー」


――1時間後 夕方の帰り道――
加蓮「よかったね、柚。次の次のラジオのゲストだって」
柚「やった♪ Pサンもいいって言ってくれたし、喋るネタいっぱい用意しなきゃ! えっと、あずきチャンのこととー、穂乃香チャンのこととー」
加蓮「いや、アンタのネタを用意――」
加蓮(……っていきなり言っても、柚には難しいか)
柚「忍チャンの話にアタシのPサンの話! あとは加蓮サンのお話もしちゃおっ」
加蓮「えー、私の話も? いいけど変なこと言うのやめてよ? アンタ、私のこと事務所で言いふらしてるんでしょ。うちのPさんが変なこと知っててちょっと恥ずかしいんだけど」
柚「ごめんなさーいっ。でも加蓮サンの話、みんな楽しそうに聞いてくれるんだ。へへっ♪」
加蓮「そっか」
加蓮(……でも、柚だってアイドルなんだから)
加蓮「私たちの話をするのもいいけど、柚のことも少しは話しなさいよ」
柚「アタシのこと? ……何かあるかな」
加蓮「何だってあるでしょ。レッスンのこととかLIVEのこと、グラビア撮影のこと。プライベートなら料理の練習してることとか。なんだったら昨日見つけた物を話すだけでもいいんじゃないの?」
柚「……そんなのでいいの?」
加蓮「いいって。うん、さっきも言ったけど藍子のラジオを聞いてみるといいよ。そういうなんでもないことっていうか……そういう話ばっかりだから、あの子のラジオ」
加蓮「だけどそれがウケてんの。ファンにね」
柚「そっかー……じゃあ、アタシ練習しなきゃっ。いきなりやったら絶対とちっちゃうっ」
柚「あ! 収録の日は加蓮サン見に来てね! 絶対! そしたらアタシ、ちょっと安心できるかも!」
柚「それでそれで、Pサンにも見てもらうんだっ。Pサンと加蓮サンがいるならカンペキだ!」
柚「それでもミスっちゃったら……藍子サンに助けてもらう!」
加蓮「……そっか。分かった、収録の日は絶対に空けておくね」
柚「うん」
加蓮「ちょっとPさんに電話させてね。……もしもし? Pさん? うん、今帰り。あのさ、柚のラジオ収録の件だけど……うん……うん……いや、違うって。私じゃなくて柚だったことに拗ねてるとかじゃなくて」
柚「……!」
加蓮「ああもう、変なこと言うから側の柚が反応してるじゃん! ……そうじゃなくてねPさん。柚の収録の日に私も見学したいっていうか、できればその日は予定を空けておいて欲しくて」
加蓮「いや別に乱入したい訳じゃなくて……え、なに、藍子が顔を引き攣らせた? 知らないわよっ。Pさんの中で私はどういう子になってんの!?」
加蓮「とにかくお願いね! じゃ! ……ふうっ」
柚「…………あの、加蓮サ」
加蓮「えい」デコピン
柚「ぎゃうっ」
加蓮「変な気を遣うな。あのね、もしホントに拗ねてたら柚なんて押しのけて私がってPさんに詰め寄ってるから」
柚「うー……だって加蓮サン、よくアタシがワガママ言った時にため息ついてるもん」
加蓮「それは私が面倒くさい人間ってだけだから。もう……変なことに悩むくらいならネタの1つでも見つけておきなさい。ラジオに出た時に恥かいちゃわないようにね」
柚「あ、あいあいさーっ」
加蓮「うんっ。……お、あっちのコンビニ、新メニュー追加だって。行ってみない?」
柚「行く行く! 暖かい部屋でアイス食べると美味しいよ〜って前にあずきチャンが言ってたんだ。アタシやってみたい!」
加蓮「何それ面白そうっ」
柚「だよねっ! ささっ、行こ行こ!」



掲載日:2015年10月18日

 

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