「色違いのボタンを掛け違える」





――レッスンスタジオ――
ベテラントレーナー「ワンツースリーフォー、ワンツースリーフォー!」
ベテ「……よし! いったん休憩!」

安部菜々「…………」バタッ
北条加蓮「ぜー、ぜー……」
高森藍子「ふぅ……お疲れ様ですっ」
ベテ「ふむ…………」
加蓮「ど、どう? 私達の……ゲホッ。うまくできてる?」
ベテ「うむ……上手くはできているとは思うんだが……」
ベテ「……工藤はどう思うかな?」チラッ
工藤忍「えっ、あ、アタシ!?」
藍子「どうでしたか? そのっ……し、正直な感想で!」
忍「そんなこと言われても……でも、アタシが思ったことっていったら」
忍「なんか……え? こんなもの? って思っちゃったな」
加蓮「えー、そう? ミスなくやれてたと思うんだけどなー」ゼーゼー
ベテ「いや、私も同意見だ。完成はしているが完成していない、そんな感じだな」
菜々「そんなぁ……ナナもうヘトヘトですよー……」
ベテ「だいたいミスの有無を気にするタイプじゃないだろう、北条は」
加蓮「あはは」
藍子「でもそう言われても……どうしますか? もっと練習するしかないんじゃ……でも、菜々さんが」ツンツン
菜々「ウサミン星人は地球で1時間しか活動できません〜〜〜っ」
加蓮「初めて聞いたよ、それ」
菜々「ハァ……でもま! ベテトレさんが言うなら! ナナ、も〜っとやっちゃいますよぉ!」スクッ
加蓮「あ、急に動くと」
菜々「……!?」フラ
藍子「わ、菜々さん大丈夫ですか?」ダキカカエ
菜々「え、ええ! ちょっと立ちくらみがしただけなので!」
加蓮「……急に動くと危ないから、ゆっくり起き上がらなくちゃ。そうでなくても相当無理してるでしょ」
菜々「お、お恥ずかしい限りっ。しかし2人の保護者として負ける訳には〜〜〜!」
忍「……保護者?」
加蓮「や、ほら1人だけ17歳だし」
菜々「ベテトレさん! 休憩は、ナナが倒れてからでもできますよぉ!」
菜々「せっかくのレッスンの時間、無駄にする訳には!」
ベテ「そ、そうか。それならもう1度――」
加蓮「ちょっと待ってよ。私も少し休んでたいんだけど……」
菜々「なら加蓮ちゃんはそこで見学しててくださいっ! ナナはやってみせます!」
加蓮「(カチン)へー、ふーん。なら私も負ける訳にはいかないなぁ……!」タチアガリ
藍子「え、あの、加蓮ちゃん? 菜々さん?」
菜々「上等です! ナナ、人生の後輩に負けるほど落ちぶれちゃいませんからね!」
加蓮「ふふっ、私だって体力つけてきてるんだからね。ウサミン星人になんて負けないっ」
忍「……人生の先輩?」

――20分後――
加蓮&菜々「「」」バタッ
ベテ「……はい、今度こそ休憩。高森も適当にクールダウンしておけ」
藍子「あはは、そうしますね……」
忍「おーい、生きてるー?」ツンツン
加蓮「いきてるー……」
ベテ「まあ、身内で競い合えることはいいことなんだろうが、当人がこれでは示しもつかないな」
菜々「めんぼくない」
加蓮「そのとおりです」
ベテ「ハァ。……工藤。せっかくいるなら何かやるか?」
忍「アタシ? ……そうだね。加蓮や菜々さんが復活するまでダンスの見直しでもしよっかな?」
忍「ベテトレさん、お願いしてもいいですか?」
ベテ「ああ」
藍子「それなら私もご一緒に――」
ベテ「高森。クールダウンしておけと私は言ったぞ? それより、そこで倒れてるのでも介抱しれくれると助かるんだが」
藍子「あ、はいっ、ごめんなさいっ」

――10分後――
加蓮「オッケー、復活っ! まだまだやるよ……ってなんで忍がダンスしてんの? 合同レッスンだっけこれ?」
ベテ「――スリーフォー、ワンツー! そこまで! ……北条。……いや、いい」
加蓮「うん??」
忍「ふーっ……加蓮と菜々さんが休憩してる間にやらせてもらってたんだ。アタシ、今日は加蓮達の見学のつもりで来たんだけど、見てたらついやりたくなっちゃってさ」
加蓮「そっか」
藍子「それで、菜々さんは……」
菜々「…………も、もぉ少しだけいいですか?」ウツブセ
加蓮「駄目みたいだね」
藍子「ふふっ。ゆっくりやっていきましょう。ねっ?」
加蓮「んー」
ベテ「……合意したいところだが、遅れを取り戻す意味もあるからな。まあ安部さんの場合は無理にできない部分はあるが」
菜々「なーんでナナだけ"さん"なんですかねぇー……」
加蓮「駄目だ、言い返すのにも元気がない」
ベテ「まあ、私としてもまたキミたちのレッスンができて嬉しいよ」
藍子「あ……ご、ご迷惑をおかけしましたっ」
ベテ「いやいや、長くトレーナーをやっていればこんなことは日常茶飯事だよ。むしろキミ達に今までこういうことがなかったのが不思議なくらいだ……おそらくプロデューサーも言っているだろう、程よくケンカできるくらいがいいとな」
加蓮「ふふっ。ま、私達だもんね」
藍子「はいっ!」
ベテ「頼もしいな。ただし! レッスンの出来はまた別の話だ。これくらいのレベルで満足してもらっても困る! 特に北条!」
加蓮「え、私?」
ベテ「以前のキミはもっと貪欲にやっていただろう。例えミスなく踊れてもまだまだできる、自分なりの表現を見つけてみせると。その意欲はどこへ行った!」
加蓮「は、はいっ」
ベテ「高森も! というかキミはいつまで2人の引き立て役をやっているんだ! 同じアイドルなら押しのけて前に出てみるくらいしてみろ!」
藍子「えええっ。そ、そんなの無理ですっ!」
ベテ「アイドルに無理という言葉はない!」
藍子「ひゃ〜〜っ」
ベテ「安部さん……はまあいいか」
菜々「ええっ、なんでナナだけ……ぜぇ、ぜぇ」
ベテ「いや、安部さんに何か言おうと思うとまず根本的な体力の話になるし……」
菜々「ぐぬぬ……ナナはこれでも17歳なんですからねぇ…………!」
加蓮「……言い張れるのってスゴイ」
忍「加蓮、藍子ちゃん。レッスン交代する?」
藍子「私は、菜々さんが復活するまで待とうかと……。加蓮ちゃんはどうしますか?」
加蓮「どうしよっかな……。いや、むしろ忍、一緒にやってくれない?」
忍「アタシ?」
加蓮「曲は忍の方に合わせるよ。ちょっと息抜きって感じで。ベテトレさん、いい? 体力はセーブするから!」
ベテ「……よくはないんだが、まあ、たまにはレクリエーション気分でいいか」
藍子「じゃあ、私は見守ることにしますね」
菜々「な、ナナも〜……」

――10分後――
加蓮「…………もおむり」バタン
ベテ「うん、やっぱりこうなるな」
忍「あ……ご、ごめん加蓮、ついヒートアップしちゃって」
加蓮「いい……もう慣れた……」
藍子「加蓮ちゃんっ。もうっ……ええと、はいっ、スポドリです。飲めますか?」
加蓮「ありがと〜……」ゴクゴク
ベテ「……グダグダだ」
菜々「みんなでレッスン、久々ですからねぇ」
ベテ「安部さんはもう大丈夫なのか?」
菜々「ウサミンふっか〜つ! そしてナナだけ"さん"付けなのやめてくださいよ!」
ベテ「いや、さすがに恐れ多いというか……」
菜々「んなっ! 17歳相手に何を恐れ多いと!? ほらほら、17歳ですよ、17歳!」
ベテ「わ、分かった分かった」
忍「……??」
加蓮「はーっ……なんか、ペースがおかしい感じがするー」
藍子「菜々さんも言っていましたけれど、久しぶりですから……またゆっくり、慣れていきましょう」
加蓮「だねー……」



掲載日:2015年10月12日

 

第149話「人間関係百朝百夕」へ 第151話「ちょっとだけ、上手くいかないから」へ

二次創作ページトップへ戻る

サイトトップに戻る

inserted by FC2 system