「高森藍子という理解者」
――事務所の仕事部屋――
喜多見柚「たっだい――」 工藤忍「戻りましたー……柚ちゃん? いきなり止まると危な」 高森藍子「……あ」 忍「あ」 柚「……………………」 藍子「お、おふたりとも……あの、……、…………お疲れ様ですっ♪」 忍「藍子ちゃん」 柚「…………」 藍子「もしよかったら、お茶にしませんか? 今、ちょうど一息つこうと思っていたところなんです」 柚「…………」 藍子「……持ってきますね。あっ、柚ちゃんはジュースの方がいいのかな……」 柚「…………」 藍子「……」スタスタ 忍「…………」 忍「(小声で)ちょ、ちょっと柚ちゃん。その……さすがに謝った方がいいんじゃない? 一言くらい……」 忍「いや、そりゃ藍子ちゃんだから怒ってはいないかもしれないけど……でもさすがに……」 柚「…………分かってる」 忍「!」 柚「忍チャン。これ、アタシのケータイ。……何かあったら加蓮サンに連絡して」 忍「え、うん。でも、」 柚「だいじょーぶ」 柚「逃げても許してくれる人がいるから、アタシはだいじょーぶ!」スタスタ 忍「柚ちゃん……」 藍子「お待たせしまし――」 柚「藍子サンっ!!」 藍子「ひゃっ。び、びっくりした……ええと、柚、ちゃん……」 柚「……〜〜〜〜っ」マッサオ 藍子「…………」 柚「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ」ガクガク 藍子「……あの、……私は、大丈夫ですから。あんまり……ええと…………」オロオロ 柚「だいじょうぶ……だいじょうぶ……! 藍子サンっ!」 藍子「は、はいっ」 柚「……ごめんなさい!」 柚「あの時、叩いちゃって、ひどいこと言っちゃって、ごめんなさい!」ガバッ 藍子「柚ちゃん…………」 柚「…………」ガクガク 藍子「…………ふふっ。私は大丈夫ですから。ほら、お茶とジュース。一緒に飲みましょう?」 柚「う、うんっ…………うんっ! 一緒に飲も! 藍子サン!」 藍子「はいっ♪」 忍「ほっ……」 ――30分後―― 柚「それでそれで、加蓮サンいっつも落ち込んだ柚をぎゅってしてくれるんだ! あったかくて、ほっとする!」 藍子「あはっ、分かります。私がアイドルを上手くできない時も、よく励ましてくれて……」 忍「…………」 忍(い、いいのかなぁ、これ……?) 柚「だよね! あっ……あの、アタシ、なんだか藍子サンから加蓮サンを取っちゃってるみたい……いいの、カナ」 藍子「うーん……」 藍子「私、加蓮ちゃんとはずっとお話してないから……ちょっぴり、寂しいな、とか、柚ちゃんが羨ましいな、って思うこともありますけれど」 藍子「あの時……待ってる間、泣いちゃった時に」 藍子「もっと加蓮ちゃんのことを信じればよかったって、思って……だから、今度こそ加蓮ちゃんが戻ってくるまで頑張って待つんです、私」 藍子「ええと……だから……と、取っちゃても大丈夫、です、なんて……あはは、加蓮ちゃんは私のものじゃありませんけれど……」 柚「そっかー……えと、その、ゴメンね?」 忍(ま、こーなるよね……) 柚「って、わーっ! もう35分も経ってる!?」 忍「え? ……わ、ホントだいつの間に!?」 藍子「もしかして、何か次のご予定がありましたか?」 柚「ないけど!」 藍子「そ、そうですか」アハハ 柚「あ、そーいえば!」 忍「何か思い出したの?」 柚「藍子サンと一緒にいると時間がすごい勢いで経つってみんな言ってた!」 藍子「よ、よく言われちゃいます。私がのんびりしすぎるのがいけないんでしょうか……」 柚「? でもアタシ、藍子サンとおしゃべりするの楽しーよ?」 藍子「そ、そうですか? ならよかった」ホッ 柚「ねね、それより加蓮サンのお話しよーよ! 加蓮サンって相談に乗ってくれるの上手いよね! アタシなんでも話せちゃうっ」 忍(あ、そこに戻るんだね。……戻っていいのかなぁこれ) 藍子「加蓮ちゃんって、そういうとこ上手ですよね」 柚「どういうとこ?」 藍子「なんというか……相手の為を思って、っていうか……。そういえば、前に加蓮ちゃんが言っていたんです」 柚「うんうんっ」 藍子「相手の為だって言いながら自分のやりたいようにやってる人が、大っ嫌いって……ほら、加蓮ちゃんってどうしても、色々な方から気遣われないといけないから、きっとそういうことに過敏なんだと思います」 忍「加蓮らしいね。そりゃ相談に乗るのも得意になるよ」 藍子「そうですね。……そういえば、忍ちゃんって、なんだか」 忍「?」 藍子「加蓮ちゃんと、ちょっと似てるような……? ええと、雰囲気というか、そんな感じが少しだけ――」 忍「やめて!?」 柚「今の『やめて』って言い方もちょっと加蓮サンに似てる!」 忍「ええっ!?」 柚「でもね、忍チャンと加蓮サン、ちょっぴり仲が悪いんだ。変なケンカばっかりしてる感じ」 藍子「そうなんですか? 前に見た時はすっごく仲良さそうでしたけれど……?」 忍「う、うんまあ、レッスンとかアイドルの話の時は息が合うかもしれないけど……それ以外は、その…………あ、ごめん藍子ちゃん」 藍子「いえいえ。加蓮ちゃん、気難しい方ですから……でも、いつかは好きになってあげてください。加蓮ちゃんも、その方がいいでしょうから」 柚「アタシも! あんまりギスギスしたのは柚の好みじゃないよっ」 忍「そ、そっか。分かった。頑張ってみるね」 藍子「はいっ」 柚「加蓮サン大好き同盟、増えるといいなっ♪」 忍「なにそれ?」 柚「アタシが作った! 会員サンは〜、今のところアタシだけ!」 藍子「ふふっ、じゃあ私も混ぜてくださいっ♪」 柚「やったー! これで2人っ。ささ、忍チャン。今がチャンスですぞ?」 忍「はいはい、そのうちね」 柚「へへっ♪ ってもうこんな時間だ! アタシ帰ってご飯作らなきゃ!」 忍「え? 柚ちゃん、料理とかできたっけ」 柚「ママに教えてもらってる! あっ、ママっていうのは加蓮サンのお、おかー……ママのこと!」 藍子「…………??」 忍「……いつの間にか加蓮とこの子になったんだよね、柚ちゃん」 藍子「じゃあ、加蓮ちゃんの家に行ったら、柚ちゃんとも一緒にご飯が食べられますねっ」 柚「うんうん、いつでも来て! ママの特製ハンバーグでお出迎えっ」 忍「アンタが作るんじゃないんかい」 柚「…………修行中です……っ!」 忍「でも藍子ちゃん……加蓮の家って、今は……」 藍子「……ぜんぶが解決したら、みんなでパーティー、やりたいですからっ」 忍「そっか……」 藍子「忍ちゃんもご一緒に、どうですか?」 忍「いや、アタシこの件に何にも関わってないし……」 藍子「忍ちゃんがいてくれたら、加蓮ちゃんもきっと喜びますよ♪」 忍「あっちもアタシのこと割と嫌ってると思うけどな」 柚「……? そんなことないよ? 加蓮サン前に忍チャンのこと褒めてた!」 忍「え……どんな風に?」 柚「ふっふっふー。気になる? 気になる?」 忍「…………」ジトー 柚「えっとね。いっつも頑張ってすごい、見習いたいな……だったカナ?」 忍「…………そっか」 柚「それよりアタシもパーティー参加したい! いいよパーティー。アタシもみんなにやってもらった!」 忍「柚ちゃん、アタシ達が用意したお菓子1時間で完食するんだよ。で『お腹が変な感じ〜!』とか言っちゃって。あの時の柚、見てて面白かったな♪」 柚「ぐ、ぐぬぬ。みんなアタシのそーいうとこばっかり覚えてるっ」 藍子「いろいろな柚ちゃん、覚えていきたいですね」 柚「ううっ、は、ハズいところはあんまり……で、でもっ、誰かに見られてたら安心するってゆーか……でもあんまり見ないでー!」 忍「あちゃー」 藍子「ふふっ♪」 |
掲載日:2015年10月8日