「先生2人に生徒1人が混じった雰囲気」





――事務所の仕事部屋――
北条加蓮「ただいまー……」
男性P(クリスマスメモリーズ+歌鈴担当)「お帰り加蓮。だいぶお疲れみたいだな。ほら、ソファに座ってゆっくり休め」
加蓮「もー、Pさんいっつもうざーい……よいしよ」ゴロン
女性P(フリルドスクエア担当)「お疲れ、加蓮ちゃん」
加蓮「ああ、柚のプロデューサーさんもいたんだ」
女性P「そうよ柚ちゃんよ。ねえ加蓮ちゃん。あの子のこと何か知らない?」
加蓮「柚って子のことなら知ってるけど」
男性P「……悪い加蓮、こいつこれでも真剣に聞いてるんだ、真面目に答えてやってくれ」
女性P「これでもって何よ、私はいつでも真剣よ。ましてや担当アイドルのことならなおさら!」バン!
男性P「お、おう」
加蓮「柚、いないの? レッスンをサボっちゃったとか」
女性P「そういうんじゃなくて、何かおねーさんに隠してるっていうか、落ち込んでるっていうか……でも私を見るなり逃げちゃうのよねーあの子」
加蓮「追いかけっこがしたいんでしょ。私だって何度付き合わされたことか」
女性P「そうじゃない時の区別くらいつきますー。ってことで、何か知らないかしら?」
加蓮「ん……ごめん、心当たりゼロ。Pさんは?」
男性P「いや俺が知ってる訳がないだろ。最後にまともに話したのもいつになることか」
女性P「それでも仕事部屋が同じなんだからしょっちゅう見てるでしょ? 何か気付いたこととかないの?」
男性P「…………さすがに無理があるぞ」
加蓮「ねえ、連絡してみたら? ミーティングとか何とかでっちあげて」
女性P「最初にやってみたけどぜんぜんダメ。なのにあの子、仕事やレッスンにはちゃんと行ってるみたいでね……今日もレッスンには出てたってトレーナーさんから。でも報告もしてくれなくて、もう困っちゃって」
男性P「お前が何かしたんじゃないか?」
女性P「でも柚、こういう長引かせることってまずしないのよ」
加蓮「……プロデューサーさんに隠してるって言ったよね。それっていつ頃から?」
女性P「え? そうね……ホントにここ最近。ほら、男性Pさ、前に歌鈴ちゃんのお仕事を探してたでしょ? なんだっけ、巫女さん体験ツアー?」
男性P「ああ。歌鈴が巫女の良さを伝えたいって言う物でな」
女性P「あの頃から。で、逃げられてばっかりでーす」オテアゲ
加蓮「2日前だっけ?」
男性P「だな。ほら、歌鈴に歌鈴らしくやってほしいって言った日だから……」
女性P「はぁ……。やっぱり難しいなー、10代の子って」
加蓮「む。そうやって偏見を持たれるのはヤダな――うんごめんPさん今のは自分でも白々しかった」
男性P「ったく。ほら女性P。あれだ、加蓮よりはよっぽどマシだと思えば」
女性P「そういう問題じゃないでしょ!」バンッ
男性P「お、おう、すまん」
加蓮「…………んー」
女性P「ああ見えて繊細な子なんだから! ……おっと、ごめんなさい、ちょっと気が立ってて……」
加蓮「ね、プロデューサーさん。忍とか、あと穂乃香ちゃんやあずきちゃんからは聞いてないの?」
女性P「それがね、最近は誰も柚と話してないって……ほら、柚、ドラマの仕事があるでしょ? ユニットのLIVEとかないし、ここのところスケジュールがギチギチだから遊びにも行ってないって」
男性P「となると、手がかりなしか……なあ、やっぱり直接聞いた方が」
女性P「できたらとっくにやってるわよ!」
男性P「す、すまん」
加蓮「使われてあげよっか? 私なら警戒心も解くかもしれないし」
女性P「ホント? じゃあ、加蓮ちゃんにお願いしちゃおっかな」
加蓮「任されましたー。駅前の新作バーガーでいいよ」スタッ
女性P「あ、お金は取るのね」トホホ
男性P「おい加蓮、身体の方は――」
加蓮「今の話を聞いて横になってるだけの方が悪化するから」スタスタ

――事務所の廊下――
加蓮「さて、と……」(スマフォを取り出す)
加蓮(どうしたもんかなぁ……できるだけ、嘘はつきたくないから)ポチポチ

ロケ先からお土産買ってきたけど食べる? チョコスティックだよ 加蓮

加蓮(嘘じゃないし)ソウシン
加蓮(さて……)
加蓮(……)
加蓮(…………)トントン
加蓮(………………)イライラ
加蓮(……)ピッ

とぅるるるる とぅるるるる

加蓮(……これもスルー、か)
加蓮(今日もレッスンに出てて、報告なし。ってことは、まだ事務所内にいる可能性も)
加蓮(……こーいうの、私らしくないなぁ。藍子か菜々さんでもいれば頼れたのに)スタスタ

――1時間後 事務所の仕事部屋――
加蓮「ただいまー」ガチャ
女性P「加蓮ちゃん! 柚には――」
加蓮「収穫なーし。ごめん、もー無理」バタン
男性P「加蓮!?」
加蓮「歩きまわって探したらこのザマだよ……もう、ホントにイライラするなぁ、この身体は……」
男性P「……悪い女性P。これ以上、加蓮に頼るのは看過できんぞ」
女性P「分かってるわ……事務所、探してくれたの?」
加蓮「うん。ひと通りは、っていうか3周くらいは。ここそんなに広くないからね……あと、連絡も総スルーだった。お菓子で釣ってもダメ」
女性P「っ……あの子、いったいどこに……ああ、ううん。ありがとね。加蓮ちゃん」
男性P「加蓮、これタオルだ。あとスポドリも」
加蓮「ありがとー」ゴクゴク
男性P「……ゆっくり休んで欲しいんだが、悪い、これだけは答えてくれ。本当に何か心当たりはないのか?」
男性P「柚ちゃんが急に女性Pから逃げるってことはないだろうし、やっぱ何かあったって結論になってな」
加蓮「うん……ごめんね。ちょっと思い付かないや。思いついたらまた話すよ。今は休憩、させて……」
加蓮「すぅ……」zzz
男性P「…………お疲れ様、加蓮」ナデナデ
男性P「すまない女性P。こっちでは難しそうだ」
女性P「加蓮ちゃんが何か思い出してくれれば……ううんっ、私はプロデューサーだ! 簡単に諦めたら忍に笑われるし!」
男性P「おい、ちょっと声――」チラッ
加蓮「むにゃ……」
女性P「あ……ゴメン。とにかくこっちでもう1回探してみる。書類仕事、少し押し付けていいかしら?」
男性P「俺でできることなら。見つかったら連絡してくれ。誰か動けるのがいたら、できるだけ協力する」
女性P「ありがとう。ちょっと探してくるわ」スタスタ
男性P「ああ」
<バタン
男性P「…………」チラッ
加蓮「ぅん……にゅ……」
男性P「…………」ハー
男性P「いったい、何があったんだかな……」
ピピピ
男性P「ん?」

加蓮のスマホ <ツウチガキテルヨ

男性P「……………………」
男性P「……スマン、加蓮っ」ガサゴソ
加蓮「ぃゅ……」
男性P「…………」ポチ

いらない 柚

男性P「……!」
男性P「これ……あ、そうだ!」ポチポチ
男性P「もしもし、女性Pか!? ……加蓮のスマホからってのは気にするな! それより、柚ちゃんから通知が――」
加蓮「ぐぅ……」


――数日後 事務所の仕事部屋――
加蓮「おはよ――」
喜多見柚「あっ、おはよう加蓮サンっ! 今日もクールって感じっ」
加蓮「…………う?」ポカーン
柚「ねねっ、今から演技力レッスンなんだ。加蓮サンも手伝ってよ! 加蓮サンがいたら、ば、万人力? ってトレーナーサンも褒めてたっ」グイグイ
加蓮「それを言うなら百人力――ってか、柚、アンタ」
柚「いいから、ね、ね、だめ?」
加蓮「別にいいけど、あの――」
柚「ね! ほら、柚は大丈夫だから! もたもたしてると置いてくぞっ」ダッ
加蓮「あ……」
加蓮「…………えええ??」

――事務所の廊下――
柚「…………」タタッ
柚「うん、アタシは、大丈夫」
柚「大丈夫」


掲載日:2015年8月28日

 

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